第5話 レベル上げ
俺は急いで自分が生まれた場所へ向かう。
地図なんかがあるわけでは無いけれど、どこに向かっていけば良いかなんとなく分かる。
人間の時はあまり気にも止めていなかった、水流の流れや岩の配置。
その1つ1つに違いが有り、自分の中で今まで通った場所の地図を形成していく。
そうやって順に辿っていくことで、元の居た場所には無事に着くことができた。
だが、その場所を見て少しだけ歯ぎしりをする。
卵の数が俺が出て行ってから相当減っている。
まだ生まれていないやつもいるにいるが、その大半はすでに孵化をしたようだった。
俺が孵化してから、まだ1日も経っていないのに。
別に孵化のタイミングが被ることは珍しくは無い。
問題は、そんな短期間で一斉に生まれたことで、既に同種争いによって大きく数を減らしている場合か。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
【ステータス】
種族:リトルインフェリアタッドポール(卵)
性別:♂
レベル:-
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
■【インフェリアタッドポールの卵】
カエル系統の魔物の中でも最低級種の幼体が入った卵。
最低級のカエル種か、もしくは上位種の中の繁殖に特化した者から生まれてくる。
その殻や中の水には微量の毒が含まれており、大量に摂取すると命の危険もあり得る。
どうやらレベルの表記が自分以外でも見れるようになっているらしい。
ステータスはまだのようだが。
『鑑定』のレベルアップ機能にはそんなことは書いていなかったはずだが・・・。
まぁいい、ある分には相手との力量差を測る指針になるし、ありがたく活用させて貰うとしよう。
卵にはレベルがついていない。
もしかしたら経験値の対象では無いからなのかもしれないな。
検証するしかないだろう。
大量に摂取しすぎると死ぬと書いてあるが、『毒耐性』スキルを所持しているし、1個ならば大丈夫だと思われる。
ぴくぴくと震えるオタマジャクシのビジュアルと、動けやしない卵を無慈悲に食べることに少しためらいはある。
しかし、先ほど心の中であれほどの啖呵を切ったのだ。
今更この程度で狼狽えるわけにはいかない。
元の世界でも無精卵とはいえ、鳥や魚なんかの卵は食べていたんだから。
ビジュアルについてはお前も同じ姿だろ。
そうやって自分に言い聞かせながら、恐る恐る1匹?喰らってみる。
うん経験値が入った感覚は無いな。
動けない卵を倒したところで、レベル上げはできないらしい。
それはそうか。
ただ、腹ごなしはできるわけで、狙うやつもいるにはいるといった所だ。
しっかし、生まれた幼体達はどこに行ったか分からないし、これから生まれるやつも全部を監視できるわけでも無い。
はてさて、どうやってレベル上げをしていこうか。
うん?ちょっと待てよ・・・。
こいつらを卵の状態で食べても、戦闘したときのように経験値が入ってこないことは分かった。
でも、『毒耐性』スキルのレベルを上げることはできるんじゃないか?
自分が生まれた後の卵の殻を食べたとき、上がったことは確認出来ている。
勿論、卵の殻とは戦闘は発生していない。
だから、同様にこいつらを食べることでスキルレベルは上げられると考えられる。
『毒耐性』スキルのレベルを上げておくことは、今後兄弟達で争う場合では、非常に重要になってくるだろう。
『鑑定』スキルはどうかは知らないが、基本俺のスキル構成と兄弟達のスキル構成は一致していると思われる。
そして俺の現在の主な攻撃手段は、『体当たり』『噛み付く』『毒攻撃』である。
そう『毒攻撃』だ。
つまりスキル構成が同じだと思われる兄弟同士での戦いでは、『毒耐性』スキルのレベルを上げておくことで、有利に働く可能性が非常に高い。
というわけでいただきます。
むしゃむしゃ。
なんかこの世界に来てからの食事内容兄弟だけってやばくないか?
これも俺が強くなれれば、他に選択肢が増えるだろうし、それまでの辛抱だ。
卵を十個ほど食ったところでレベルアップ音声が聞こえる。
【『毒耐性』のレベルが5になりました】
よし、狙い通りではあるな。
しかしそろそろ止めておいた方が良いか。
いくら『毒耐性』スキルのレベルが上がったとはいえ、『鑑定』の説明でも大量摂取は危険って書いてあるからな。
なんて考えていると視界の横から黒い物体が急速に迫ってきた。
いや、なんかデジャブだぞっ、これ!
今回は前と違い常に周囲にも気を配りながら食事していたため、その体当たりは余裕を持って躱すことができた。
常に周りを気にしなきゃいけないのは、ゲームのジャンルによってはよくやることだったし。
さすがに先ほどの負傷から学習しているさ。
相手の姿は、やはり俺と同じ姿をしていた。
まずは相手の情報を見よう。
『鑑定』。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
【ステータス】
種族:リトルインフェリアタッドポール
性別:♀
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
レベル:1
レベル1か。
ということはまだ一度も戦闘経験がない、もしくは負けそうになって逃げたかのどちらかだな。
こいつも周りに食べるものが無くて戻ってきたタイプだろう。
余裕をもって勝ちたいのは前回での戦闘と同じだな。
それどころか、今回はまだ孵化していない卵達の前で戦闘することになる。
余力が無ければそのままやられてしまう可能性は、むしろ前回よりも高いと言えよう。
とはいえ、前ほど戦略を立てる必要性は無い。
一応前の時よりも、こちらはレベルが上がっているのだ。
それと同時にステータスも。
相手がレベル1ならば、こちらの方が優位に立てる。
だから、スキルのレベル上げとかを考えながら戦闘していきたいと思う。
卵のおかげで『毒耐性』スキルのレベルを上げることができた。
今度は『毒攻撃』スキルのレベルを上げていきたい。
『毒攻撃』は自分より少し格上の相手でも通用しそうなスキルだ。
こちらも早めにレベル上げをするに超したことは無い。
そんなとき、相手が待ちきれずに再び体当たりを仕掛けてきた。
攻撃手段が少ないとはいえ、さすがに前回と合わせて結構くらってるから慣れてきたぞ。
相手が体当たりしてくるのに対して、今度はあえて正面から『体当たり』スキルを行使して弾き飛ばす。
体格もレベルなのか雌雄の差かこちらの方が大きく、ステータスもこちらの方が上なのでパワー負けはまず無い。
あとスキルはスキルを使うと意識しながら使用するとより効果が高まる気がした。
今までの体当たりとは勢いが違った。
そうして俺は弾き飛ばされたことで少しフラフラしている兄弟(♀だけど)に、『毒攻撃』スキルを『噛み付く』に乗せて攻撃してみる。
『噛み付く』スキルは属性攻撃が付与できるということで、毒属性の攻撃を行う『即攻撃』スキルと合わせて使ってみたのだが、やはりできるようだ。
『毒攻撃』スキルは付与できる部位が限られるような書き方がされていたが、口には問題無く行えるみたいだな。
そして攻撃が決まった後、すかさず『鑑定』を実施。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
【ステータス】
種族:リトルインフェリアタッドポール《状態異常:毒》
性別:♀
レベル:1
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
良し!
一発の攻撃で毒を入れることに成功したみたいだ。
継続ダメージを与えるみたいだし、隙を見て適度にいなし、適度に攻撃しながら今回も無事に倒す。
【リトルインフェリアタッドポール:♂のレベルが上がりました】
【スキル『早熟』が適用されます】
【種族レベルが7になりました】
【『毒耐性』のレベルが6になりました】
【『噛み付き』のレベルが5になりました】
【『体当たり』のレベル4がになりました】
【『毒攻撃』のレベルが4になりました】
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
【ステータス】
種族:リトルインフェリアタッドポール
性別:♂
HP:11/11(+2)
MP:8/8(+2)
SP:4/9(+2)
レベル:7(+2)
ATK:7(+2)
DEF:7(+2)
INT:16(+2)
MND:7(+2)
SPE:9(+2)
スキル:
『鑑定 :レベル7』
『毒耐性:レベル6(+2)』
『噛み付き:レベル5(+2)』
『体当たり:レベル4(+1)』
『毒攻撃:レベル4(+2)』
『早熟 :レベル-』
『水棲 :レベル-』
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
よし今回も『早熟』スキル発動によって、大幅にレベルをアップさせることに成功した。
今回は『鑑定』スキルのレベルが上がっていないな。
卵に居たときの『鑑定』スキルレベルの上がり方から想像はしていたが、どうやらレベルが上がれば上がるほど必要な経験値も多くなる感じのようだ。
一気見での『鑑定』こそしていないけれど、ちょこちょこはやっていたと思うんだけれどな。
これからも引き続き頑張っていくしかない。
『鑑定』スキルは非常に有用なスキルっぽいからな。
今回の戦闘では無事に完封することができて良かった。
しかしながら、戦闘中『体当たり』スキルや『毒攻撃』スキルを使用した際に体感的にも明らかに体力が減ったのが分かった。
使用するという意志を持って使用するスキルをアクチィブ系スキル、常に発動しているようなスキルをパッシブスキルというのだが、アクティブ系のスキルを使用する時はSPを使うのかもしれない。
今後そういったスキルが増えていくであろうことを考えると、戦闘中におけるスキル発動タイミングやそれ以外でもどの程度SPを常に確保しておくのかといった、SPの管理も今後重要になってくるだろう。
だがまあ、順調にスキルのレベルを上げること自体は成功することができたしとりあえずは良かったとしよう。
自身のステータスを少し確認した後は、水底に横たわった死骸を他のやつらに食べられないように早く頂いてこうとゆっくりと降下する。
兄弟を殺すこと自体は割り切ったとはいえ、殺したのに食わないのはさすがに申し訳ない。
と思うと背後から噛み付かれた。
うおっ、痛い痛い!
必死に身を捩って抜け出す。
慌てて後ろを振り返ると、そこには・・・。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
【ステータス】
種族:リトルインフェリアタッドポール
性別:♂
レベル:5
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
くそっ、もう一匹いたのか。
尾びれが傷つけられなくて良かった。
こんなのばっかかよと心の中で愚痴った物の、油断したところを死角から攻撃してくるのは正攻法だよな・・・。
しかし、こいつ賢いな。
俺が戦闘を終えてある程度油断している所を背後から襲いかかってきた。
戦闘直後ならば、ある程度警戒していたが、それが途切れた瞬間に狙われた。
レベルが5ということは、既に戦闘を経験しているタイプだろう。
やるじゃないか、今までのやつらよりも手強そうだ。
さて今度はどうやって倒そうか。
食事をする前に横やりを入れられたことで、本能的な部分がぶち切れそうになっているのを感じる。
こんなことをやってくれたやつめがけて思い切り体当たりをぶちかましに行く。
相手はそれを避けようとしない。
そして当たる寸前になって、身体を捻って避けた。
するとなんとそこには、見えにくいが岩があったのだった。
ヤバいっ!・・・なんてなると思ったか?
スキルの『体当たり』を使っていれば途中で止まれなかったかもしれないが、スタミナを温存したかったから今回のは普通の体当たりだ。
それに全く避けようとしなかったから、明らかに誘いぽかったし・・・。
本能的な部分では怒りにまかせて攻撃をしそうだったが、元人間だしそれを抑えるくらいの理性はまだ残っている。
くるっと体を反転させて、今度こそスキルによる『体当たり』を行う。
ギリギリまで引き付けていたせいで、距離が近く無理な体勢になってしまっていたそいつは避けることもできずに思い切り当たってしまい、簡単に吹っ飛んだ。
そこからも何度か俺に攻撃を仕掛けようとするも、その出鼻をことごとく挫く。
格闘ゲームジャンルとかでいう動き始めを潰すイメージだな。
兄弟達と3回目の戦いだったが、こいつが今までで1番手強かった。
俺を奇襲をかけたり、わざと怒らせることをして誘ったりとにかく頭が良かった。
ただし最初の奇襲とその後の戦術は良かったが、それ以外がかなりお粗末だったな。
俺と全く同じ戦法を取っていたから、もしかしたら俺の最初の戦闘を見ていたのかも知れない。
その戦術をパクって、レベル上げをしていたとしたら、それ以外が育っていなかったのにも納得だ。
背後からの強襲も今後の戒めにしよう。
致命的な失敗にならないように戦いの中からも少しづつ学んでいかなければならないよな・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます