第8話 指定のスキルは聖女より凄いらしい?

 ふよふよふよ


 ワンちゃんたちについて行ってしばらく歩いていれば、ワンちゃんたちの力なのかセルヴァさんの身体が勝手に宙に浮き、私たちの後をついてきている。私の持っていた重い荷物も一緒にふよふよ浮いている。運んでくれるみたい。

 先頭には一番大きいワンちゃんデル。

 私とセルヴァさんの両隣はアルとベガがボディーガードのように並走して歩いていた。


「ねぇ、どこに行くの?」


 ワンちゃん達が案内してくれようとしている場所は、気のせいか先ほどより黒い霧が多くなっている気がする。

 まさかワンちゃん達に騙されていないよね?


 いやぁ、ここにきてワンちゃん達にまで裏切られたらもう立ち直れない気もする。


 私がチラリとワンちゃんを見れば「はっはっは」と期待のまなざしでこちらを見ていた。


 うーん、また治して欲しい子がいるとか?


 先頭のわんちゃんが足を止め、私もそこで足をとめた。

 そこには神殿のような場所にまがまがしい色の宝石が黒いオーラを纏いながら置いてある。


 ……やっぱり呪いを解いてほしいのか。

 

 私が指定をしようとステータス画面をだしてスキルを使う準備をする



 ▽▽▽


 ●【起源の宝珠】の呪いを解きますか?


 ▶はい いいえ


 △△△


 と出るので「はい」を押そうとすれば


「……ここは?」


 気を失っていたセルヴァさんが目を覚ました。


「気が付いた!?」


 私が何か話しかけようとする前に、セルヴァさんは宝石を見て驚いた表情になる。


「起源の宝珠っ!?まさかここまで闇に飲み込まれているとはっ!?」


 と、声をあげ、私の姿を確認するや否や、


「離れてください!!そこにいればあなたも闇に呑まれますっ!!

 すぐ逃げっ!!!!」


 と、慌てて立ち上がった。


 え?え?ちょっと闇に呑まれるとか怖いんだけど!?

 セルヴァさんが私の肩をドンッとつかみ、その反動で「はい」ボタンを押してしまう。



 ぱぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!



 ボタンを押すと同時に……宝石の黒い霧は霧散し、森全体を覆っていた闇のような黒い霧も晴れていく。


「え、何……?」


 私が慌てて周りを見渡せば、セルヴァさんが物凄く驚いた顔をして


「もしかして……これを貴方が?」


 と、呆然と私に聞いた。

 セルヴァさんの視線の先には先ほどまで真っ黒だった宝石が綺麗な赤い巨大なルビーのような形になって宙をふよふよ浮いている。

 たぶん呪いが解けたのだと思う。


「あ、はい。何かまずかったですか?」


 私が言えばセルヴァさんは首を横にふり


「い、いえ、このような事が出来るとは、思いませんでした。

 聖女の職を持つものでさえも、一度闇に呑みこまれた宝珠は闇の力を抑え一時的に力を弱める事しかできません。

 このように闇を振り払うなど……」


 と、真っ赤な綺麗なルビーの塊のようになった宝石をまじまじと見ながらが「前代未聞です……」と、言う。


 うーん。凄い事って思ってもいいのかな?

 って、聖女より凄いってことはキリカより凄いって事?

 それは純粋に嬉しいかもしれない。あんなにあっさり人を見放して。

 絶対後で、見返してやるんだから。そして慰謝料請求してやる。


 頭に浮かんだキリカとカズヤの顔を私は思い切り振り払うのだった。

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