第9話 あれ?私なにかやっちゃいました?……ってやつかも?

 「すみません、取り乱してしまいました」

 

 しばらく呆然と起源の宝珠を見ていたセルヴァさんが、はっとして私に謝った。

 ワンちゃん達は本当に嬉しそうにきゃんきゃんと私の周りをまわっている。


「それにしても…フェンリル様までペットとして従えてしてしまわれるとは……何と言っていいのか」


「この子達がペットになりたいって、なってくれたんです」


「フェンリル様が自ら……ですか?」


「はい。勝手にステータスウインドウがでてきました」


 私の言葉にセルヴァさんは、いまだ信じられないといった表情をしたあと


「……フェンリル様を人間がテイムしたなど初めて聞きます」


 と、頭をかかえた。


「え!?そうなんですか!?」


 私がワンちゃん達を見ると物凄く褒めてと言わんばかりに尻尾を振っている。


 くぅ、可愛いなもぅ。

 わかったペットは最後まで責任をもてるかわからないから飼わない主義だったけど、私が面倒みてあげようじゃない!

 彼氏にも振られたばっかだしね!


 もう恋なんていらない!私はペット愛に生きてやる! 私が3匹をよしよしと頭を撫でてあげれば


 ぐごごごごごごごごご!!!!!


 いきなり地面が揺れる。


「な、何っ!???」


 私が怖くなってワンちゃんに抱き着けば

 何か強大な真っ黒なものが地面から出て来る。

 見かけはどこからどう見てもRPGとかにでてくる悪魔、巨体なデーモンだ。


「な、なに!?」


「まさか魔族!? 起源の宝珠を闇に染めていたのはこの魔族だったのか!?」


 セルヴァさんが驚きの声をあげ私を引き寄せ、抱きしめた。


 ええええ!?


 とたん


「ぐおおぉぉぉぉぉぉぉ」


 デーモンの雄たけびとともに無数の岩がこちらに飛んでくる。

 けれどセルヴァさんがモーニングスターのようなものを振り回して全部叩き落していった。

 セルヴァさん魔法系かと思いきや意外と力業!?


 私があわわわと慌ていれば、わんちゃん達三匹も私を守るように、私たちの前に立つ。

 途端、ワンちゃん達もバシバシと飛んできた岩を破壊していってる。


 それでも――


 怖い怖い怖い。

 デーモンめちゃこっち見てる!!

 口から変な黒いの霧を出しながらこっち見てる!!


「フェンリル様、私が補助魔法をかけます!クミ様を安全な場所に避難を!!」

「わんっ!!」

「きゃん!!」

「わんわんっ!!」

 

 と、セルヴァさんとワンちゃん達が戦闘について相談しているけれど、とりあえず私もなんとかしなきゃ。


 私は慌ててステータス画面をだして、指定を使用。


【デーモン】を倒しますか?と出るので迷わず「はい」を押せば……


 ばぁぁぁぁぁん!!!


 デーモンはそのまま砕け散った。

 そりゃもう一瞬で。


「……は?」


 セルヴァさんと、ワンちゃんたちが信じられないといった表情で私をみた。

 その間にもレベルが上がりましたとステータス画面にピコピコ表示されている。

 よほどデーモンのレベルが高かったのかピコンピコンレベル上がりの音がうるさい。


 あれ?もしかしてこれ私何かやっちゃいましたってやつ?


 にっこり微笑んでみるけれど、しばらくみんなの無言が続く。

 いや、何これ無言怖い。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る