第7話 ゲームマスター

 あの後、なぜかフェンリルのデルは、仲間のフェンリルちゃんを連れて来た。

 でもデルと最初にあった時のようにその二匹もやっぱり黒い靄がかかっていて、目は真っ赤で今にも飛びかかってきそうな雰囲気で怖い。


「治してほしいの?」


 と、私がおそるおそる聞けば『きゃいん!!』って尻尾を振りながらデルが頷いた。


 うーん、可愛い。


 連れて来た二匹もやっぱり黒い靄みたいのが纏わりついている。

 やっぱり魔の森と言うだけあって何かにとりつかれちゃうのかな?


 私が指定で治してあげれば、残りの二匹も嬉しそうに私の周りを「へっへっへ」言いながらくるくると回りだした。


 名前はベガとアル。デルが一番大きくて、アルが一番小さい。

 三匹とも綺麗な銀色の狼だ。

 呪いが解けて嬉しかったのかスリスリしてきてくすぐったい。


 ベガもアルも私のペットになりたいと申請してきたのでペットにしてあげた。


 う、やばい、なんだか可愛すぎて泣きたくなってきた。

 わけもわからずこっちの世界に連れてこられて初めての癒しかもしれない。

 大体おかしいでしょう!?勝手に間違えて、無能だから捨てるとか!!


 あれだけ面倒みてあげたのにニコニコ笑いながら人が捨てられるの見てるキリカと恋人をあっさり捨てて新しい女を選ぶ最低男とか!!

 悔しすぎて少し涙がでてしまい、私が目をごしごしすれば、ワンちゃん3匹がよってきてくれる。


「くぅん?」

「きゃんきゃん」

「わんわん」


 ありがとう。ワンちゃんたち!!

 私がもふっと抱き着けば、銀の毛がホワホワでもっふもふ。

 ああ、犬を飼うと婚期が遅れるっていう意味が今わかった気がする--。

 可愛すぎるし、癒しすぎる。


 私はワンちゃんの毛に顔を埋めてモフモフするのだった。



□■□



「呪いを解いてあげたいけど、残りSPが4しかないからスキルを使える回数は2回なの。

 まだ呪いを解きたい子がいるならSPが回復してからでいい?」


 私が言えばワンちゃん3匹は言葉が通じてるのか「きゃん!!」と元気よく返事をした。

 表示ではフェンリルとでたけれど、どう見てもワンちゃんか狼にしか見えない。

 こうー異世界転移系の漫画とかで見るフェンリルとかってもっと超大きいし。

 ここのワンちゃんたちは大型犬くらいの大きさなのだ。

 とりあえず呼びにくいからワンちゃんでいいよね。

 私はちらりとセルヴァさんを見た。

 傷は治したはずなのに、まだ目を覚まさない。

 生きてるのか心配になって呼吸を確認してみるけれど、呼吸はしてる。

 でも、よかった。助かって。

 あのまま死んじゃったら私のせいだし、見ず知らずの他人の私を命がけで守ってくれようとした人が死ぬのは嫌だ。

 それにまだなんとか、冷静でいられるのは話が通じそうな人が一緒にいてくれるのもあると思う。

 これで一人だったらどうしていいかわからなくて、パニくってた自信がある。

 とにかく安全な場所にいかなきゃ。

 SPってどうやって回復するんだろう?

 あと2回残っているけどいざという時にとっておきたい。

「ねぇ、ワンちゃんたち、どこか安全に休める場所知らないかな?」

 私がそう言えば、ワンちゃんたちがワンワンと三匹で会議をはじめ……


「わんっ!!!」


 と、嬉しそうに私にしっぽを振った。


□■□


~ワンコ達の会話~


『主様はなんとおっしゃっていたのだ!?』


 デルタの弟、ベガが聞けば、デルタはキリッとした表情で


『安全な場所をご所望らしい』


 と、通訳した。デルタも人間の言葉すべてがわかるわけではないが、他の二人よりは知識がある。


『安全?安全?

 この森安全な場所なんてない

 宝珠から闇でてて、人間なんて3日もいれば呪われる』


 と、今度は兄弟の一番下のアルが答える。

 すでに三匹の中では、モンスター化を防ぎ、自らの呪いを解いてくれたこの異世界の少女は自分達が仕える主だと決めていた。

 忠誠を誓い、主従関係を結んだ状態になっている。


『ふむ、そうさな。まずは宝珠の魔素を排除することが先だ。

 主様はスキルがあと2回使える。スキルで呪われた【起源の宝珠】を元に戻してもらう』


『凄い!凄い!森元にもどる?』


『ああ、主様の呪いを解く力は、原初の人と呼ばれたゲームマスターのものと酷似している。

 おそらく出来るだろう。主様が呪いを解いてくだされば、この森は救われる』


『早速案内しようではないか!!」


 ベガが嬉しそうに尻尾を振ると、アルも嬉しそうにぴょんぴょん跳ねた。


「するっ!!する!!森元にもどるー!」


 3匹はパタパタ尻尾をふりながらクミを案内するのだった。

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