第5話 モンスターが現れた!
「つきあってほしい」
そう告白してきたのは彼の方からだった。
幼い頃、両親を亡くして孤児院で育った私は大人に頼る事が出来ず何でも一人でやってしまい、年頃になった頃には、好きな人には「お前といると男といるみたいで気兼ねがなくていい」と言われてしまうタイプで、告白してもらえたのも、付き合ったのも彼がはじめてだった。
職場が一緒で、なんとなく仲良くなって、告白してもらえて、付き合って二年目に、彼の両親にも挨拶に行って結納もすませた。
彼も彼の両親も優しくて、私も家族が手に入るのかなぁーなんて、幸せに浸っていたのに。
なんでこんな事になったのだろう。
婚約者が可愛がってた後輩と浮気をしていて、振られた上に異世界に来て見捨てられた。
考えただけで普通にきつい。
――憧れてたんだけどなぁ。普通の家庭。
結婚して子供を産んで、お母さんになって。
自分が子供の頃に寂しかったから子供をいっぱい可愛がってあげて。
一緒に夫婦そろって手をつなぎながら子供を連れて公園に行く風景。
公園で家族一緒に遊んであげて、子供と手をつないで家に帰る。
普通の家庭を、幸せをやっと手に入れられると思ったのに。
なんだか夢みたいで信じられない。
目をあけたら――全部夢だったらいいのに―――。
□■□
夢じゃなかった。
もしかして夢かもしれないと現実逃避に、目をつぶりおそるおそる目をあけたら、やっぱり森の中だった。
空一面に木々の葉が生い茂り、さらに森全体が黒い霧に覆われているため森の中はすごく暗い。
私は男の人の横に座ったまま、所在なさげにあたりを見渡す事くらいしかできなかった。
一緒に転移してきたクーラーボックスに少しだけどバーベキュー用のお肉とか焼きおにぎりとがあるから今日と明日のご飯はなんとかなる。 お水も保冷用にキンキンに凍らせていれておいたのが2本ある。
でも私が持っていたのはほとんど調味料だからなぁ。
お肉とかは他の子がもっていた。この食料だけでは心もとない。
森を出るために食料とか確保していかないといけないのだけれど、セルヴァさんはいまだ目を覚まさない。
まだ治ってないのかな?と指定のスキルを使ってみたけれど、表示されるのはセルヴァさんのステータス
▽▽▽
セルヴァ・ランバイン
LV47 (神官)
HP:235 MP:322 SP :120
力:53 体力:60 器用さ:55 素早さ:54
知力:80 精神力:100 幸運:40
△△△
と出る。
さっきは治療しますか?って出たのに、今度はなんでステータスだけなんだろう。
この指定スキルまったく意味がわからない。
わりとゲームは詳しいほうだと思う。
でもスキルで指定ってあまり聞いた事ないからなぁ、法則性が不明、スキルを使うと何か消費されるのかな?
今の所私のMPは減ってないみたいだけど、SPが4も減っている。
たぶん一回目セルヴァさんを治すときに使ったのでSPを2消費して、セルヴァさんのステータスを見て2減ったのだと思う。
色々試したいけれど、下手にSPを減らしていざという時使えないのじゃ困るし、他に何か使えそうなスキルや魔法をもっていないかな?
私が自分のステータス画面をポチポチしていれば、
ぐるるるる。
何かの声で私は振りかえった。
そこに居たのは――黒いもやもやのかかった銀色の狼。
ゲームとかでよく見るやつ。モンスターだ。
真っ赤な目で牙をむきながらこちらを見ている。
今にも襲い掛かってきそうな表情で私に牙をむいていたりする。
まさかのモンスターと遭遇とか勘弁してよもぅ。
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