第4話 キリカ視点
やった♪これで怒られないですむ♪
会社の先輩である篠原クミが魔法陣でどこか遠くに送られたのを見送って、キリカは胸をなでおろした。
キリカは昔から怒られるのが大嫌いだった。
いつも可愛くて、男性をひきつけて、守ってもらえるのがキリカ。
学生の時まではそのキャラで通ったが、会社に勤めるようになってから現実は甘くなかった。
媚をうっても、にっこり笑っても、仕事を真面目にやれと怒られる。
それがストレスで仕事を先輩に押し付けていたのに、母の介護があるという嘘がばれてしまった。
ストレスが溜まってたんだもん!遊ぶくらいいいじゃない!!
今までは笑って引き受けてくれてたのに、あれ以来残業を引き受けてくれないクミが憎たらしかった。
気の弱い婚約者を奪ったのはそのため。私のいう事を聞いてくれないとか信じられない。
変な世界に来てしまったことは嫌だけれど、聖女様とお姫扱いされる今の環境は悪くない。
あの後、神官達にカズヤとは別室に案内されたと思ったら、綺麗なドレスを着せられて、侍女をつけられ優雅にお茶を飲むという、まるで貴族のお姫様になったような接待をうけた。
凄い豪華な衣装をきた神官の人が「貴方は聖女様です」って膝まづく姿にキリカはぞくりとした。
会社だったらガミガミと偉そうに怒鳴りつけてくる中年の男性が自分にひれ伏してる。なんて素晴らしい光景なんだろう。
昔からお姫様のコスプレなどするのが好きだったキリカにとって、今の環境はある意味幸福の時間といえなくもない。
キリカは深く考えていなかった。
魔の森に飛ばされた先輩がどんな悲惨な目に合うかなど。
ただ怒られたのを仕返ししてやったくらいにしか思っていなかったのである。
いつも辛い事から逃げてきてその愛嬌と可愛い容姿だけで逃げて来た彼女にとってこれは日常だったのだ。
恋人をとって嫌がらせするのも、可愛いとチヤホヤされるのも。
目の前にはカズヤなんかより、カッコイイ神官服の男性がずらりと並んでいる。
もうあんなお古はいらない。どうせ、クミに嫌がらせをするためだけに近づいた男だもの。
もう二度と会いたくないって神官の人に伝えておけばいい。
いままでありがとうございました先輩♪
そう思いながらキリカは美味しい紅茶を飲み干すのだった。
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