第3話 もしかして……神スキル?
自分の叫びで気が付けば……どんよりとした黒い霧の立ち込める森の中だった。
空一面に覆う黒い霧と、生い茂る葉っぱ。
どこをどう見てもキャンピング場ではなく、異世界ファンタジーっぽい森の中だ。
……夢かと思っていたのに、異世界転移なんて……
それも職なしの役立たずだからって捨てるってある?
しかもカズヤもキリカも見ていたのに止めないとか!?
Web小説や漫画の異世界転移系じゃあるまいし。
大体、抗議してくれたのが知り合いでもない無関係の赤の他人!
身内は止めてもくれないし!
止めてくれてた人がいきなり切られるって設定がヘビーすぎ……そこまで考えて私ははっとする。
そうだ!人が切られてた!!
私が慌てて起き上がれば、私の少し遠くに血だらけで、横たわっている神官服の男の人。
夢じゃなかった!?本当に切られたんだ!!
「だ、大丈夫ですか?」
私が慌てて駆け寄るけれど、男の人から返事はなく、真っ青な顔で倒れてる。
どうしよう!? とりあえず止血……。
身体を動かして傷口を見ようとして……私は思わず口を押えた。
助からない。
何か特別な刃物で切られたのか…素人の私が見てももう助かる傷じゃない。
中身が見えていて、吐きそうになるのをぐっと抑える。
ゾンビ映画好きでグロの強い私でもこれは普通にきつい。
もう止血して包帯とかいうレベルじゃないのだ。
どうしよう!?私を助けようとしたせいで死んじゃうなんて不条理すぎる!!
こういう時Web小説ならきっとすごいスキルをもっていて治せるはず!!!!
ステータスオープン!!!!
よくあるそれを唱えてみれば、うぃぃぃん!!と変な音をたててステータス画面が開かれる。よかった!できた!
何かチート能力があったりしない?でないとこの人死んじゃう!
私が自分のステータスを見れば……数値的に雑魚だ。
ここの世界の平均値なんて知らないけれどたぶん数値的に雑魚だ。全部10未満とかこれは流石に雑魚すぎる。
こ、こうなったら魔法と職業に賭けるしかない!
なんとか回復魔法がありますようにと、ポチポチおしてステータスをみるけれど、残念ながら魔法も職業も真っ白だった。
くっ。無能と捨てられるだけある。
そしてスキル画面を見てみれば、書いてあったスキルは一つ。
『指定』 指定することができる。
とだけ記入してあった。
指定!?指定ってご指名ですの指定!?や、違うそれは指名だ!落ち着け自分。
でももう時間がない。まだかろうじて息はある。何とかしないと。
もうダメもとでやってみるしかない。
私は目の前にでてきたステータス画面を選択してスキル【指定】を使用する。
そして指定のターゲットを男性に合わせると。
スキル指定を使用しました。
▽▽▽
●セルヴァ・ランバイン を治療しますか?
▶はい いいえ
△△△
と表示される。
治せる!?まさかの治せるの!?
私が慌てて「はい」のボタンを押せば
ぱぁぁぁぁぁぁぁ。
男性の身体が光輝く。
そして、光が収まりおそるおそる男性を覗きこめば……
血塗られていてびりびりだった服も元通りになり、傷はすっかりなおった男性の姿が。
服に血の跡ものこっていない。
私があわてて胸に耳をつければ、胸が上下に動いてる。
よかった!? 生きてる!!
ちょっとだけ洋服をめくってみれば、傷はもうそこにはない。
やった!スキルが効いたんだ!
よかった、私を守ってくれたのに死んじゃったら悔やんでも悔やみきれない。
そして思う。
もしかしてこの指定のスキルって――
よくわからないけど、もしかしたら神スキルじゃない?……と。
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