第4話サイボーグ化手術

 誰もが明るく自由な想像平和研究所の町に魅せられた僕・吉ノ丸は、それからマークの家で暮らし始めた。ここの学校は楽しかった、孤児院では小休止の時間もお喋りは無く、成績主義の教育故に誰も遊ぼうとせず勉強の手を止める事も無い。でもここでも放課の時間は、みんなそれぞれの遊びを楽しんでいた。校庭や図書館で個人の時間を過ごしていた。授業は更に驚いた、例えば孤児院では先生に「この問題を解いて」と当てられて、解けなければ先生に罵られるのが当たり前だが、この学校ではそういう事は全く無かった。先生は厳しかったが、同じくらいに優しかった。クラスメイトはみんな仲良しだった、けんかもあったが直ぐに仲直りした。とにかくこの学校にあって前の孤児院に無いのは、互いに対する優しさだと思った。




 学校が休みのある日、マークの家で読書をしていたら、突然鋭いサイレンの音が響き渡った。僕がきょろきょろしていると、マーク理事長が血相を変えて僕のところに来た。

「避難するぞ!ついて来るんだ!」

 僕はマークについて行き、避難シェルターという部屋に入った。そこには多くの町の住人がいて、その中にテグー教授の姿もあった。

「教授、一体どうしたの?」

「ああ、ダーク・サイエンスが攻めて来たんだ。」

 僕はここがダーク・サイエンスの敵地だというのをすっかり忘れていた。

「テグー教授、吉ノ丸を頼んだ。私は前線に行ってくる!」

 そう言うとマークは何処かへと走っていった。僕はテグー教授と一緒に、攻撃が止むまでその場に座った。





 それから一時間後に攻撃は終わり、みんな元の生活を取り戻した。だがその後も同じことが三回続いた。そしてある日、僕はマークに呼び出され、理事長室に入った。

「話というのは何でしょうか?」

「君も経験してる通り、この想像平和研究所はダーク・サイエンスの驚異に侵されている。」

 マークは単刀直入に言った、僕は自然と頷いた。

「その度に我々は防衛を固め、攻撃を退けてきた。しかし・・・、私の実の気持ちを言うと、こんなことはもうしたくないのだ。」

「それはどうして?」

「防衛のために我々は兵器を使う・・・、当然の事だがそれでは真の平和は来ない。兵器を作り続け互いに力を見せ合い攻撃を抑制する・・・、それは見せかけの平和に過ぎない。そこで我々の戦力をたった一つに絞り、後の兵器を全て処分し、今後は兵器の開発を一切しない事を決めた。」

「たった一つの戦力・・・。」

「それは、パワー・ストームの力を最大限に活用したサイボーグだ!!」

 その力強い一言に、僕の心は動かされた。それが完成すれば、ここに完全な平和が訪れると信じた。

「しかしサイボーグ化したいという志願者がまだいない、まあ体を変える事だから凄く躊躇する気持ちは解る。」

「それ・・・、僕が志願してもいいですか?」

 マークは僕を見て凄く驚いた、そして真剣な顔で僕に言った。

「失敗する可能性もある、覚悟はあるのか?」

「うん、僕は本気だよ。」

 マークは僕の肩に手を置いて、「ありがとう」と言った。




 それから二日後に僕はサイボーグ化手術を受けた。そして生まれ変わった僕は、人と機械とノコギリクワガタの三つの姿を合わせた姿になった。



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