第3話平和の魅力

 想像平和研究所でバスを降りた僕・吉ノ丸は、建物の大きさのスケールに驚いた。マークとテグー教授と一緒に施設の中へ入ると、大勢の研究員が出迎えた。

「お帰りなさいませ、マーク理事長。」

「ああ、みんな留守をありがとう。」

「ところで、この少年は?」

「ああ、吉ノ丸君だ。ここでしばらく生活していくそうだ。」

 研究員たちは、僕の方を見てくる。

「理事長が子供を連れてくるなんて珍しい。」

「吉ノ丸君はどうしてここに来たの?」

 僕は研究員達の質問に答えた、すると研究員の何人かが泣き出して、僕に言った。

「大変だったな・・・。実は私も向こうの世界の出身なんだ、でも向こうの世界では生きていくことがしんどくてたまらなかった。それでここへやってきたんだ。」

「ここはいい所だ、絶対に住みたくなる。」

 するとマークは、研究員達に言った。

「一時間したら、レンカレン君を呼んでくれ。テグー教授と一緒に、吉野丸にこの想像平和研究所の町を案内してもらおう。」

「了解しました。」

 そして僕はしばらくの間、休憩室で一息ついた。





 それから一時間程して、テグー教授が僕を呼び出しに来た。僕はテグー教授に連れられ一台の車の所に向かうと、陽気な一人の男がいた。

「やあ!君が吉野丸君だね。僕はヘンカレン、よろしくね。」

「はい、よろしくお願いします。」

「じゃあ早速、サッカーの試合を見に行こう。」

「え、案内するんじゃないの?」

「これは案内の一環さ、早く行こう。」

 こうして僕はテグー教授と一緒に、試合会場へ向かった。





 サッカーの観戦は初めてだったが、僕が見たのは僕が知っているサッカーとは違っていた。体当たりなどが無く、皆が足を使って一つのボールを巡って駆け引きをしている。僕はヘンカレンに「みんな、あまり相手にぶつかったりしないけど、どうして?」と尋ねた。ヘンカレンは答えた。

「このサッカーは、純粋のルールで行われているんだ。みんな、正々堂々と試合をしているんだ。」

 正々堂々・・・、それはぬるくて危険な言葉だと孤児院で教わっていた。でも試合を見ている内に、清々しくて楽しい言葉に聞こえた。




 観戦が終わった後、僕達は「白鳩ランド」という遊園地に向かった。パンフレットを見て僕は遊ぶ場所を選んでいた。

「どうしたの?」

「あの、Dランクでも遊べるところってありますか?」

 僕の出身地の遊園地では、子供のランクごとに遊べるエリアが限られていて、高いランクじゃないと全てのエリアでは遊べないのだ。そしてランクの上下を決めるのは

学校や孤児院での成績である。

「ああ、君は向こうの世界の出身だったね。この遊園地では誰でも自由に遊べる、ランクなんて関係ない、ていうかランク自体が無いんだ。」

 僕は驚いた、どのエリアでも遊んでいい遊園地がある事に。僕はせっかくだからという事で、ジェットコースターとフリーフォールといったアクションの高いエリアで遊んだ。それはあっという間に終わったけど、とても楽しかった。







 想像平和研究所に帰ってきた僕達を、マークが出迎えてくれた。

「ヘンカレン、テグー教授。今日はありがとう。」

「いいですよ、一人の時よりも楽しかったし。」

「吉ノ丸君、かなり楽しんでいましたから。」

「本当かい、吉ノ丸くん?」

 僕はずいぶんとしていなかった笑顔を見せて、「はい!」と返事をした。






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