ぼくがぼくたりえるために。


幼い頃からおままごとが大好きだった。

自分の箱庭を作ることが、自分の世界を愛でることが。

いつからか、ぼくの世界には神様がいたのだ。

ぼくの知る美の権化、理想という完成形。

ぼくはそんな継ぎ接ぎに張り合わせられた美しい像に心酔していた。


はじめにそこにあった感情はあまりにも遠い過去で忘れてしまったし、

きっと最初はもっと純粋で透き通っていたものだったのだろうなと思う。

それを濁らせてしまったのも、歪ませてしまったのも他でもない私なのだろうと。


いつからか、目をそらすように神様を見ていた。

神様の元は赴く場所であったはずなのに、逃げるようにと。

だからぼくの世界が壊れたとき、或いは殻を破って遅れた成長を少しずつ重ねたときに思ったの。



ぼくは、神様を殺さないといけないと。



幼い子供が大人になるために必要な手順で、人間未満が人間になるための儀式。

ぼくは神殺しをする。ぼくの、ぼくだけの神様を。

その翼を千切り、その白をぼくの燃ゆる獣の激情で染め上げるのだ。


ぼくがぼくたりえるために。

ただ今は、神の名を捨てるその時を、じっと待っていようと。

学び、そこに届くために階段を重ねあげようと。

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