手離したくない約束。

かつて、かつて、初めて自分の足場が恐ろしいほど崩れ落ちて、好きなこと、好きなもの、私の芯であっただろうもの全てよりも逃げることを心より願ったあの時。

初めて、本気で死を考えたあの時。

それでも、きっと許されないことなのだから、生きる為にと、私がわたしと交わした約束。


それは、少し遠い場所への到達。

誰でもない私が、私の力で、辿り着いてやるというやけくそな誓い。

決して届くことのない、という程ではないけれど、私には遠く無力に感じるその場所へ、


それでも許されないのであれば、それでも立ち上がらないといけないのであれば、それでも生き続けなければいけないのであれば、いつか、夢見たあの場所に立ってあげるから。

不器用に作った蜘蛛の糸。

そんな、過去の私との約束。


それだけは、私だけのもので。

誰にも荒らさせはしない、私だけの拠り所。

今だって強く強く握りしめている。


幸福であることを求められるのは中々に酷だと思う。

幸福よりも終末を願う方が何倍だって楽なんだから。


それでも、それでもね、手離したくない。手離してはいけない。

私だけは、あの時一人で泣いた私を裏切ってはいけない。

そう、だから。だから。

時間は無情に過ぎていくから、タイムリミットは残酷に近づいていくから。


ねぇ、と、私はわたしに語る。

そろそろ勝負時かな、とわたしは答える。

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