花火に祈る

越山明佳

花火に祈る

 僕には好きな子がいる。告白する勇気はない。

 高校生活最後の夏休み。クラスの仲良しグループで花火大会に来ていた。

 人が多くはぐれるのは容易だ。5人で来たというのに、すでに3人とはぐれてしまった。

 隣には僕がひそかに想いを寄せる子がいる。

 その子以外、周りには知り合いがいない。

 僕ははぐれてはいけないという一心でその子の手を握った。

 手にほのかなぬくもりを感じる。その子は顔を隠すようにうつむいて恥ずかしそうだ。

 それを見た僕は罪悪感ざいあくかんさいなまれ手を放そうとした。

 その時……


 花火が打ち上げられた。


 観客の歓声が巻き起こる。

 手はつながれたままだ。放れるタイミングを失う。

 夜空に咲く花は流れ星のように感じられた。

 祈れば願いが叶いそうだ。

 祈ることは決まっている。


 と結ばれますように。

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花火に祈る 越山明佳 @koshiyama

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