四章 「ビー玉」
どれだけそこで泣いていただろう。
空は茜色になり、空気も冷たくなってきていた。
体が冷えてきた。これからどんどん暗くなっていく。
私は一体どうしたいのだろう。
そんな時だった。
急に足音のような音がした。
こんな時間に公園に普通の人は来ない。
しかも撤去中の公園になんて立ち寄らない。
私は震えて、体を動かすことができなかった。
だんだん音がこっちに近づいてくる。
「結花いるかー」
きゃーと叫びそうになった時、聞いたことのある声が聞こえてきた。
「裕一?」
「そうだよ。無事でよかった」
裕一は真剣な顔をしていた。
こんな顔見たことない。
今そんなことを思っちゃダメなのに、つい心はときめいてしまう。
「学校で結花がものすごい剣幕で外に行ったことを聞いて、もしかしたらここじゃないかなと…」
私は言葉を遮って裕一に抱きついた。
自分でもどうしていいかわからなかったからだ。
「公園なくなっちゃうんだよ」
それに私はきっと今かわいくない顔をしている。
そんな顔裕一に見られたくなかった。
「そう、みたいだね」
そう言って、裕一は抱き締めるのをやめて私の手に何かを手渡した。
彼の視線を肌で感じる。
「結花、あのビー玉と同じではないけど、これを受け取ってほしい」
それはあの時のビー玉に似たガラス玉だった。
「どうして?」
「だって、結花あのビー玉大切なものだって言ってたから。だから公園がなくなると聞いて同じのを探しに行ったんだけどこれしかなくてさ」
私は自然と涙を流していた。
だってこんなの私には素敵すぎるから。
「えっ、どうしたの? やっぱりあのビー玉じゃなきゃダメだった?」
裕一はちょっと驚いていた。
この少し抜けているところも私は好きだ。
「違うよ」
ガラス玉を受け取り、じっと見つめた。
おまじない。恋のおまじない。裕一からもらったガラス玉だからきっと叶えてくれるはず。
聞きたいことはたくさんあるけど、それは今はいい。私は涙をふいて息を整える。そしてゆっくり話していった。
「あのね、ビー玉は残念だったけど、あれはいいの。だから私の話聞いてくれる?」
胸はドキドキするけど、きっと大丈夫と思える。
「うん」
「裕一が好きです。付き合ってください」
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