三章 「約束の日なのに」
約束の日。
まさかそんなことが起きるとは思ってもいなかった。
「結花、あなたが小さい頃よく遊んでいた公園あるでしょ? あそこ今日から取り壊すらしいわよ」
その日のお昼休み、母からそうメッセージが届いた。
私は何も考えずその場から走りだした。
学校もまだ終わっていないのはわかっている。でも、走り出さずにはいられなかった。
その公園は毎日裕一と遊んでいたところ。さらに、約束をした場所。
私にとっては決してなくなってはいけないところだった。
廊下を急ぎ足で歩いているとき、不意に裕一を見かけた。
声をかけようと一瞬思ったけど、その隣には知らない女の子がいた。
私は口を手で塞ぎ、そのまま公園へ向かったのだった。
あんな十年前の些細な約束を裕一は覚えていないだろうかといつも不安だった。
不安だったけど、それでも話をして二人でビー玉を見つけたらそれでいいと思っていた。
うまくいくと思っていた。
それなのに、裕一の気持ちが急にわからなくなった。
私たちは結ばれる運命ではないのだろうか。
「私なんて、裕一にはどうでもいいのかな」
感情をひとたび声に出してみると、何だか現実感を帯びてしまい涙がでてきた。
足が重い。なかなか前に進まない。一人で公園に行く意味はない。
そばに裕一がいなければ、あの約束の意味はない。
公園に着くと、工事に使うカラーコーンが公園のまわりに置かれていて、中にはトレーラーなどが動いていた。
突きつけられる現実。
当たり前のようにあることの突然の崩壊。
未来が、暗闇に落ちる。
私は公園近くの駐車場に腰を下ろして、公園を見ていることしかできなかった。
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