借 物
ところが。
わたしが切望するその四文字を口にしてくれる男はいない。
小。虹。彩。輪。
そんなに難易度の高い四文字じゃないじゃん。
「ん?四文字?」
「そ、言ってみて」
「えっ?」
「だ、か、ら、たった今、話してあげたでしょ!」
「ん?ええと、あっ、瞳孔、だね・・・・ど、う、こ、う」
男は一人で悦になっている。うーん、どうかな?
確かに。
わたしは、男の瞳孔に弱いかも。
そして、瞳孔。
まるで惑星がそこに
「ねえ、どうした?急に黙ってしまって・・・・瞳孔、じゃないのかい?」
男はわたしの内なる
〈どうこう〉
だけで済まそうとする。
これがほとんどといっていい男どもの動向なのだ。
「半分正解、としか言えないわね」
そうわたしは応じてあげる。
でもね、半分では物足りないよ。
この男は、せっかくその顔の一部に宇宙の神秘を内含していながら、まるでその価値に気づこうともしない。
情けない。・・・・この男は、着眼大局の四文字を学んではこなかったのだろうか。
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