第77話 ついにこの時がやってきた

 注:すみません。カクコンの話ではないです。


 先週、娘が私に言いました。

「ママ、サンタクロースはいないって本当? 親が全部やってることなの?」


 え&%#@!?


 頭の中にドッパーンと津波が押し寄せたかのような衝撃です。「ねえ、あなた浮気してない?」と妻に直球で質問された浮気男は、こんな気持ちじゃないのでしょうか。 


「え〜っと、なんでそんなこと聞くの? っていうか、その話はパパが帰ってきてか……ら、に……ゴニョゴニョ」と動揺しまくって、わけわからんことを言いはじめた私に対して、娘は、ふぅ、と大人びたため息をつきました。


「そう言うってことは、やっぱり本当なんだ」


 W*$^%T#@F!?


私「誰にそんな話聞いたの?」

娘「エイミーちゃんと、オリーブちゃんと、ベラちゃん(仮名)。みんなね、『サンタクロースは本当はいない』て親から聞いたんだって」


 証言者が多いな! 


「あなたが他の女性とラブホから出てきたところ、本田さんと、田中さんと、斎藤さんが見たって言ってた」と妻から聞かされた浮気男は、こんな気持ちでしょうか。


 娘が詳しく説明してくれたところによると、エイミーちゃんがご両親に「貧しい子どもには、どうしてサンタさんが来ないの?」と聞いたのだそうです。クリスマスにプレゼントをもらえない子どものためのチャリティーなどがあるので、この時期、そういう話を耳にしたのでしょう。サンタさんは子どもたちみんなにプレゼントを配るのだから、家が裕福かどうかは関係ないはずなのに、どうして? というわけですね。


 エイミーちゃんは、もうすぐ十歳になるので、ご両親もそろそろ本当のことを言ってもいいと判断されたのだと思います。オリーブちゃんとベラちゃんも、娘と同じ九歳。もう小さな子どもではありません。今はクリスマスプレゼントをみんなが買う時期ですから、そういう話をする機会が、それぞれあったのでしょう。っていうか、世の中の親って、みなさんこんな瞬間を経験するんでしょうか。私が子どものころは、親じゃなくて姉にバラされましたけど。


 ああ〜、津波に飲み込まれるぅぅ。濁流に押し流されて行く私の決心。こりゃもう無理だ、と観念しました。


私「そうなの。サンタクロースはね、本当はいないの。親や周りの大人がプレゼントを買って、サンタさんからってことにするんだよ」

娘「(サンタさんとトナカイにあげた)クッキーとかにんじんって、ママたちが食べてたの?」

私「え? う、うん」

娘「ふ〜ん」


 なんて会話をし、娘のサンタクロースは幻と化したのでした。「サンタさんは、信じる子どもがいる限り、本当にいるんだよ」的な美談にしようかとも思ったんですが、やめときました。


 私は、子どもにウソをつくような風習は、個人的には好きじゃありません。でも、まわりがみんなやってることなので、自分だけやらないわけにはいかない、てのが本音です。保育園や学校で、ウチの子どもたちだけ、サンタさんからプレゼントをもらえないなんてことになったらかわいそうですし、ましてや、三歳児に「サンタさんは本当はいないんだよ」なんて言い聞かせたりしたら、保育園でまわりの子に伝えて大変なことになりそうです。


 こういう事情で、イースターバニー(イースターの日曜日の朝、庭にチョコレートを隠していくウサギ)もトゥースフェアリー(乳歯が抜けたときに、歯とコインを交換してくれる妖精)も、がんばってやらねばいかんのです。


 それから、私が子どものころ、クリスマスプレゼントは、ツリーなんてなかったから、枕元に置いてありました。クリスマスの朝が待ち遠しくて、起きたらプレゼントが置いてあって、心の底からワクワクしてうれしかったのを覚えています。アレは親が仕組んだことだったんだ、とわかってからも、うれしい気持ちに変わりはありませんでした。子どもにウソを付くのは、基本的には嫌なのですが、自分がされてうれしかったことだから、ま、いっか、と思ってます。他のご家庭もだいたい似たようなもんじゃないですかね。


 さて、大人の階段を、また一段上がってしまった長女ですが、寝る前にさらに爆弾発言をしました。


「もしかして、イースターバニーとトゥースフェアリーも本当はいないの?」


 !!!

 

 どう答えたもんかなぁ。この機会に全部バラしちゃおうかなぁ……などと考えあぐねている間に、


「あ、イースターバニーとトゥースフェアリーは本当にいるはず」と自分で納得している様子。


「だって、お手紙もらったもん」と娘。


 娘は、イースターバニーやトゥースフェアリーに、何回かお手紙で質問をしていたのですが、お返事をもらってたのです。もらったお返事は、大事にたたんで、瓶に入れて保管しているようです。その瓶の中から、一枚お手紙を取り出して、中身を読んだあと、「うん、いるいる」と満足してベッドに行きました。


 そのお手紙、パパが自分の筆跡がバレないように、左手でがんばって書いたんだけどね。九歳って、大人びたこと言ってても、まだまだ子どもじゃのう。


追記:緑のたぬき、ついに入手しました。赤いきつねは売ってなかったので、どん兵衛のきつねうどんも買いました。たまたま市内に行く用事があったので、アジア系スーパーに寄ってみたらあったんです♡ 両方、大変おいしくいただきました。どっちかというと、おあげの入ったうどんのほうがグッときました。あのジューシーなおあげ、すごいですね。いつか赤いきつねも食べてみたいですが、どん兵衛とそんなに変わんないなじゃないかなと予想しております。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る