第76話 赤いきつねと緑のたぬき

 マルちゃんとカクヨムのコラボコンテスト、盛り上がってますね。私は今回は読み専ですが、いろんな物語が生まれるものだなと感心しきりです。


 実は、赤いきつねも緑のたぬきも、食べたことがないんですよ。今回、コンテスト作品や、それにまつわるエッセイ・コメントなんかを読んでいるうちに、むっっっちゃくちゃ食べたくなりました。


 ということで、さっそく近所のアジア系スーパーへ行ってきましたが、ない……。丸ちゃんの赤いきつねと緑のたぬき、売ってない〜(涙)。アジア系のスーパーにもいろいろありまして、日系が強いところもあれば、そうでないところもあります。近所のお店は、日中韓プラス東南アジアやインドなど、幅広い商品を扱っている大きなお店なのですが、日系の品揃えが「おしい」のです。冷凍のささがきゴボウなど、グッとくるものが売ってあるのに、白玉粉は売ってなかったり。一平ちゃんはあるのに、マルちゃんはない。「もう、どん兵衛でいっか」と裏切ろうとしたのですが、そもそも、うどん・蕎麦系のカップ麺がひとつも置いてない。


 もう、頭と口の中が、赤いきつねと緑のたぬきになってて、それしか食べたくない。いっそ、お出汁からちゃんととった、本格うどんか蕎麦にする? なんて思いましたが、違うんですよね〜。新鮮なマグロとツナ缶が、まったく違う食べ物であるように、カップ麺はもはや本物の代用品じゃないのです。生麺でしか出せない味があるように、即席麺にしか表現できない世界があるんだ! (←大真面目)


 カップのうどん・蕎麦は食べたことないのに、もう「あの味が恋しい」なんて疑似恋愛的な感情まで湧いてきました。マルちゃん、君じゃなくちゃだめなんだ(どん兵衛に浮気しそうになったけど)。


 あ、コレなんかに似てるな。物語の中に出てくる食べ物が、食べたくて食べたくて仕方なかったことないです?


 小さいころ、私は「三びきのくま」に出てくるおかゆが、どうしても食べたかったです。あれ、たぶんオートミールだと思うのですが、私が幼少のころは、「おかゆ」と訳されてました。どれだけあの味を想像したことか……。実際のオートミールは、「好きだけど、別に食べなくてもいい」くらいのラブ度なんですけど。


 それから、「ぐりとぐら」に出てくるカステラ。あれも、想像の中でなんども食べました。あの大きさがいいんですよね。実際のカステラも大好きですが、「ぐりとぐら」のカステラは、もっとフワフワで弾力があるイメージです。


 マンガに出てくる、ワイルドな骨つき肉。両手で骨を持って、真ん中の肉にかぶりつくやつ。見たことないです? アレも、何肉か分からないんですけど、食べたかったです。


 私の実家は田舎にあり、母が健康食志向だったことも手伝って、ジャンクフードをほとんど食べない子ども時代でした。でも、テレビでマックのコマーシャルを見たりするわけです。コマーシャルに出てくるハンバーガー、新鮮なレタスが宙を舞ったりしてるじゃないですか。もう、世界屈指の美食に見えますよね。


 中学生になって初めて、親の同伴なしに、お友だちと、となり街までショッピングに行きました。そのとき、憧れのハンバーガーを食べようと心に決めていました。生まれて初めて、ファーストフード店に行ったときの感動よ……。もちろん、実際のハンバーガーはレタスが宙を舞ったりしないんですけど、がっかりはしなかったです。ルーブル美術館で初めて生モナリザを見たときのような「おお、これがかの有名な!」という感慨がありました。


 赤いきつねと緑のたぬき、食べないでいるほうが、心の中でずっとおいしくいただけるのかもしれない、という境地に達している今日この頃です。


追記:↑なんて書いている今この瞬間も、食べたくて食べたくて悶絶しております。

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