第44話 特筆すべきこと

 ただいま、南オーストラリア州を旅行中です。ビクトリア州メルボルンの自宅から、アデレードまで、海沿いを走って約900キロの車の旅を終え、今はアデレードを満喫中。あ、ちなみに南半球はいま真冬なんで、寒いですよ〜。ダウンのジャケットが手放せません。年中暖かいイメージがあるかもしれませんが、オーストラリアでも南のほうは、冬はかなり寒くなります。山のほうではスキー場もあります。


 アデレードまでの道中で、港町だとか鍾乳洞だとか、いろんなところに寄り道しました。そこまで期待してなかったんですけど、すっごくいい! 特筆すべきこと盛りだくさん! 盛りだくさんすぎて、なに書いていいかわからないです。日記はつけてますけど。


 万人にとって特筆に値すること(例えば観光名所とか)って、意外と語りにくくないです? 観光名所に限って言えば「とりあえず写真を見てくれ、写真見るなら、私が撮ったショボいやつじゃなくて、サイトに載ってるプロが撮ったやつのほうが見所がわかりやすいよ。でもって、そのサイトで詳細を読んでくれ」って言いたくなります。これ私だけ?


 ということで、旅行中のくだらない話してもいいですか?


 とある港町の海を見に行きました。その日は雨が降ったり止んだりしてて、真冬だから寒いし、風も強い。普段の私だったら、家でじっとしてたと思います。でも、旅行中ですから! 宿の中で一日中いるのもなぁってことで、無理やり外に出てみたわけです。


 雨が止んでいるすきに、灯台まで散歩することにしました。いつまた雨が降り始めてもおかしくなかったので、とりあえず折り畳み傘を持って、家族全員、撥水効果のあるジャケットを着て、いざ散歩です。


 風が強くて寒いけど、海はどこまでも透明できれいだし、見たこともないような大きな植物なんかもあって、意外と楽しめました。風が強くて寒いけど。(←二回言った)


 名前も知らない不思議な植物だとか、どこまでも続く水平線などを背景に、家族写真をパチリ。子どもたち二人が笑顔で走り回ってる様子もパチリ。とかやってるうちに、めっちゃくちゃ雨が降ってきました。土砂降りです。あわてて傘をさしたら、三分くらいで強風で傘が折れました。


 とりあえず、灯台まで行ったら中に入れるかもって、子どもたち連れて母(←私)は走りましたよ。全力で灯台までダッシュしたら、灯台、鍵かかってる〜。中入れねぇ。雨が横なぐりに降りつけてくる〜。後から走ってくる夫に「灯台の中、入れないよ〜!」て大声で教えてあげたら、「知ってる〜!」と。


 は?


 オーストラリアの灯台って、基本的には一般人は入れないそうなんですよ。あ、日本もかしら? 夫、知ってたんなら最初から教えてよぉぉぉ。


 とりあえず、近くの木の下で雨宿りしたら、雨が止んだので、びしょぬれで来た道を折り返し、車の中まで戻りました。なんかの罰ゲームみたいでしたけど、ちょっとスリリングでウケました。子どもたちも、「さむ〜」とガタガタ震えながら笑ってました。ま、こういうのも旅の思い出でいいですよね。


 そんなことがあった日の夜、自分の携帯の写真を見てたら、写ってるのは、きれいな景色だとか家族の笑顔とかばっかりなんですよ。雨が横なぐりに降ってるときは、写真撮るような余裕なかったから! なんだよ、このツアーのパンフレットみたいなハッピー全開の絵面は!


 私、インスタに写真とか全くあげないんですけど、こうやって「楽しいだけのキラキラ旅行」とか「年がら年中幸せそうな仲良し家族」がバーチャルでできあがっていくんだろうなってちょっと思いました。

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