第9話 情景描写をがんばってみる

 ジョークって、説明すると、とたんにおもしろくなくなりますよね。


 私にとって、情景描写ってジョークを説明するような不毛さを感じる作業なんですよ……。その場所にいないとわからない感覚ってあるではないですか。それを言葉にして伝えたくなるのは、表現の原点なのかもしれませんが、聞いてるほうは「すっげーおもしろくないのでは」といつも思います。


 もちろん、すばらしい情景描写はジョークを説明するのと、まるで違いますけど。あれって、読者の経験とか感覚と上手にリンクさせて、「あー、こういうこと!」と思わせる作業なのかなと思います。


 だれでも雨で足が濡れたことがあるし、月の光を眺めたことがあります。一瞬で別世界にワープするような情景描写は、読者のそういう過去の感覚をよみがえらせることができる表現なのかな、などと思います。


 今、オーストラリアの大自然がいっぱいの田舎でクリスマス休暇を過ごしています。どこも圧倒されるような景色ばかりです。ということで、今回は情景描写、がんばってみます。



 ビクトリア州のとある林の中を探索してきました。

 巨大なシダが木々の間をぬうように生えていて、絵本の「怪獣たちのいるところ」の中に入りこんだみたいでした。(「もののけ姫」を南の島っぽくアレンジした感じです。)


 身長の何倍もある木々の下に小川が流れていて、川沿いの歩道を滝まで歩いて行きました。豊かに茂った植物が放つ独特のいい匂いがして、薄暗いのに色鮮やかな景色が広がります。外気が化粧水がわりになりそうなくらい潤っていて、体にいい脳内物質が全開で出てました。


 私は森林浴するときに、1回立ち止まって、1分間くらい目を閉じます。数種類の鳥の声や、川のせせらぎ、他の人が歩いてる音など、けっこういろんな音がします。音だけで、自分のいる場所を想像すると、パラレルワールドにいる感じがしてきます。しっかりイメージができたら、目を開けます。すると、あら不思議! 視覚から入ってくる壮大な景色に圧倒されます。これ、子どもたちも「わあ。」と毎回言うので、おすすめです。

 

 空を見上げると、頭上にある植物の葉が透かしたレースみたいに見えます。それぞれの葉が目いっぱい光を乗せていて、揺れるたびにキラキラこぼれます。光に、まるで手でつかめそうなしっかりとした質感があります。「光がこぼれる」って、よく言ったものだなといつも思います。


 滝を見ると、人間はなぜあんなにテンションが上がるんでしょうね。かなり高いところから流れている滝で、あれに打たれたら間違いなく首を折るなと思うくらい勢いよく水が落下していました。海岸の波だとかキャンプファイヤーの火も、観入ってしまいますが、繰り返しなようで、二度と同じ形をしていないものに、人間は惹かれるんでしょうかね。


 今回はこの辺で。年末でお忙しいことろ思いますが、ご自愛ください♪

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