第33話 説明回は大人数でやれば割と飽きない
「それでは、必勝法を説明します。あのですね、えーと、まずは刺客の皆さんを適当に痛めつけまして……あのー。まあ、そうですね。良い感じになります」
「平野レミの料理番組よりも説明がひでぇ!!」
そんな事言ったって仕方がないじゃないですか。
頭の中で思ったことが相手に伝わる秘密道具がまだ販売されていないんですから。
もし作られたら、俺は100万までなら即金で出します。
「よっしゃ、おっちゃんが説明役を変わっちゃろうかい!」
「優しいおじさん……っ!!」
「新汰はもう黙ってて。お前にツッコミ入れてると、オレまで訳分かんなくなるから」
俺が説明したかったことを、阿久津さんが代わりに説明してくれます。
こういう時に頼りになるから、年長者ってすごいですよね。
すごいを越えてロックだなぁ。
「まずは、刺客役の全員を一か所に纏める事が肝要なんじゃが、あちらさんは1千万が
「ウチ分かった! だから適当にボコるんだ!」
「莉果ちゃん! 女子高生がそんな血生臭い事言っちゃダメだぜ!? なんかデスゲームに慣れて来てる!?」
「おお、莉果の嬢ちゃん、正解! まあ、これ考えたのは新汰じゃけどのぉ」
「やったー! くふふ、凪紗さんに一歩リードしたしー!!」
「えええっ!? これってそういうアレなんですか!? むむ、じゃあ、次は私が頑張ります!!」
「女子チームは頑張んなくて良いんだよ? マジでさ」
「ほいで、一か所に集めた刺客どもに、おどれらの命なんかは勘定に入っちょらんし、そもそも1千万なんぞも払われんっちゅうことを説明する。するとどうなる?」
「あ、はい! はい!! 分かりました!!」
「ほい、凪紗の嬢ちゃん」
「戦意喪失です!! だって、お金が貰えないのに頑張る意味ないですもん!!」
「んー。半分正解じゃのぉ」
「あとは、さっきから新汰くんたちがお仕置きしてる荒くれ者を味方につける、とかかなぁ?」
「あっ、そうですよね……。うぅ、凛々子さんにまでポイントを奪われてしまいましたぁ」
「ううん? それで良いんだよ? ヤクザポイント獲得しても、何も起きないよ?」
「まあ、そう言う事じゃ。ただし、鍵を探し出さんことにゃあ、結局時間が来たらドカンで、ワシらもろとも消し炭になる。これがリスク有りの第一案じゃ」
すごい。俺が言葉をまったく発していないのに、俺の計画が展開されて行く。
阿久津さんにもピクルスあげないといけませんね。
「ところがじゃ、刺客ん中に佐々木のが
「あーね! ドッジの時の
「ほうじゃ! 矢原は見せかけじゃったけど、今回はガチのヤツらがおる! 莉果の嬢ちゃん、冴えちょるでー!」
「くぅぅぅっ!! 私もデスドッジボールに参加していればぁぁぁっ!!」
「そういう事言うのヤメよう? 凪紗ちゃん、命は粗末にしちゃあいけねぇよ?」
「あっははー! ペタくんさっきから孤軍奮闘だねぇー!」
「女子の最年長者なんだから、凛々子ちゃんも頑張ってくれよぉ……」
「そのリピーター連中は、話が通じる上に、この運営のやり口を知っちょるからのぉ。そこに話術に長けた佐々木のと協力体制が取れた!
「おおー!! 新汰さん、相変わらず皆さんを助けるつもりなんですね! 偉いです! 素晴らしい考えだと思います! あの、胸、触りますか?」
「………………」
「おいぃ!! 新汰ぁ! 女子が恥を忍んでんぞ!! せめてリアクション!!」
「あ、すみません。イチゴの事考えてました」
「うぅ……。今度はイチゴに負けましたぁ……。私、生きて帰ったら、バストアップに励みます!!」
「凪紗ちゃん、変な死亡フラグ立てないで?」
「あははー! じゃあ凪紗ちゃん、一緒にバストアップ体操しよっか! わたしね、良いサークル知ってるよ! あと、イチゴって美容にも良いんだよね!」
「あれ? 今、イチゴの話しました!?」
「うるせぇ! お前はもう黙ってろ!!」
「ちゅうことでの、まとめるで?」
「はーい! とりま大丈夫っす! 理解してまーす!」
「なんか、ワシの話すら聞いてないヤツが多い気がするのぉ」
「ウチがついてるし! 阿久津さん、ガンバ! 負けるなし!!」
「……おし。協力的な刺客がこれから増えるっちゅうことはじゃ、第一案のネックじゃった鍵探し。これに割く時間を大幅に削れる。その間に、ワシらは刺客をボコって一か所に集めるのに注力じゃ! 道中、鍵があれば更に幸運と、のぉ、新汰?」
「あ、すみません。きゅうりのピクルスの事考えてました」
「オレは黙れと言ったが空想に
「新汰くん、ダメだよー」
「そうだ、言ったれ凛々子ちゃん!!」
「きゅうりの植え付け時期って3月とか4月だからねー。来年まで待たないと」
「な、なんてことですか……!! こ、こんな事が……!!」
「ヤメろ! ここ一番でしてやられたみたいなセリフを吐くな! 吐くならせめてクライマックスでやって! なんできゅうりにダメージ喰らってんの!? しかも、お前! 空想上のきゅうりによぉ!!」
「とにかく、刺客を1か所に集める事を頑張ってじゃ、集めた後は新汰が持っちょる秘策とやらが活躍してくれるっちゅうんでええな? これが、必勝法の第二案じゃ。ご静聴、感謝でござんす」
「わー! 良かったよ、阿久津さん! おっつー!!」
「ほうか? 嬉しいのぉ! おつおつー!!」
「オレは新汰の秘策って言うのにそこはかとない不安を覚えてしょうがねぇんだけど。おい、今回は大丈夫なヤツだろうな!?」
「失礼ですね、ペタジーニさん。俺の策が失敗した事あります?」
「ああ、あるね! お前がいっつも怪我してんじゃねぇか!! オレは、新汰が怪我すんのも嫌なんだわ!! おめぇ、ぜってー自分の体犠牲にすんなよ!?」
「えっ? 自慢のサラダ理性にチーパオ?」
「オレが結構良い事言ったのに!! お前は人の作った料理を台無しにする天才だな!!」
「ええ? 俺、基本的に食べ物は残しませんよ?」
「
「あ、すみません。ペタジーニさんから連絡です」
「オレはここだよ!!」
「あ、そうでした。佐々木さんからです」
メールの文面にはこう書いてあった。
『今のところ、ボクを入れて6人ほどが奈良原の口車に乗るってさ。とりあえず、刺客が集中している1階の探索をしながら、味方を増やす事にするよ』
佐々木さんのコミュ力に脱帽。
俺にもコミュ力があれば、刺客の人達に痛い思いをさせずに済んだのに。
言葉が出て来ないばっかりに拳が出るなんて……。
いや、よく考えたら向こうから手を出してきているんですから、拳出しても問題ありませんでしたね。
安い自己嫌悪しちゃうところでしたよ、あはは!
そろそろ移動しましょうかと言うことろで、再びスマホに着信が。
やっぱり相手はペタジーニさんと言う名の佐々木さん。
正確を期すと佐々木さん。ペタジーニさんのせいでややっこしい。
『少し面倒が起きた。覆面の一人が、何人か強そうなの集めて君らを探してるよ。むちゃくちゃ
「ペタジーニさん。誰かの恨み買いました?」
「オレも外見でそう思われるのは仕方ねぇけどさ、絶対に新汰と阿久津さんが買った恨みだと思うんだわ!」
校内放送のスピーカーからザザッと音がして、ゲームマスターの声がする。
『さあ、1時間を過ぎましたよ! なんと全員が存命! 強い刺客のいるエリアを的確に避ける奈良原一党! さあさあ、まだベットタイムは残っております! あの小賢しい小僧が殺される瞬間はもうすぐです!!』
ゲームの実況も兼ねているので性質上仕方がないですが、親切に残り時間を教えてくれるゲームマスターさん。
とりあえず、移動をしましょう。
座っていても尻が冷たくなるだけです。
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