【完結しました!】そのデスゲーム作ったの、俺です。 ~会社をクビになったのでスローライフを始めたのに、やたらと命を狙われるため全て返り討ちにします~
第28話 次にデスゲームに巻き込まれたら? 会社を潰します
デス探索バトルロイヤル編
第28話 次にデスゲームに巻き込まれたら? 会社を潰します
秋晴れの爽やかな10月。
その日は男のみで農作業をしていました。
凪紗さんは道の駅でお仕事。
莉果さんは学校。
凛々子さんも
まあ、このスタイルがうちの農場では基本形となります。
今までは賑やかだったのに、ですか?
男だらけの農作業シーン、そんなにご覧になりたかったのですか?
それならそうと言って頂けたら、すぐにご要望に応えましたのに!!
では、今日からずっと楽しい奈良原農場のシーンをたっぷりと!!
やっぱりいい? あの、あなた、コミュ障って人から言われません?
「新汰ー。こっちの列、マルチング終わったぜーい」
「さすがペタジーニさん。一等賞ですね」
マルチングとは、その名の通りマルチで作物の地表面、つまり株の元を
以前にもお話ししましたが、農業従事者の相棒、マルチ。
ビニールが主流で、作物の掛け布団的な役割を果たしてくれます。
今回使用するのは、マルチの中でもオールラウンダーの黒マルチ。
保温効果と防草効果の両方を持ち、水やりの回数を減らすことができ、病気の予防から、フカフカの土の維持までやってくれるスーパーアイテム。
先にマルチシートを張ってから定植を行う場合もあるのですが、今回うちは、植わっているイチゴの苗ちゃんの上からマルチングをしていきます。
もちろん、手作業で。
これが結構大変で、地味に腰とか膝に負担がかかります。
とは言え、この苦痛が美味しい作物の元になると思うと、ふふふ、興奮してきますよね。ふふふ。
「ぐぁー! ダメじゃ! 腰が、腰が
阿久津さん、物騒でしょうもない事と
「へへっ! でも、おじき! 自分はこっち方がなんか楽しいっす!」
「自分もっす! こう、自分のかけた手間の分報われるのって、嬉しいっす!」
赤岩さんと佐藤さんは、もう立派な農業戦士。
俺の教えることは何もありません。
その心意気だけ持って下されば、あとは頑張り次第でボーナスですよ。
「お、おじき……。そこで座られると、邪魔、っす……」
「おどれ、森島! えろう口がデカくなったのぉ!?」
「す、すいやせん。でも、自分、イチゴには嘘、つきたくないので……!!」
はい、森島さん100点。
今日の奈良原賞はあなたに決定です。
「森島さん、今日はピクルス持って帰ってください」
「うわぁ! あざっす! やったぁ!」
奈良原賞とは、俺が作物への愛を強く感じた時に出すボーナスです。
商品は色々とありますが、基本的に取れた作物の加工品です。
現金?
それって、野菜より価値のあるものですか?
「阿久津さん、仕事ができないなら、帰ってもらって結構ですよ」
俺の愛ある叱咤激励。
するとペタジーニさんが全力で駆けよって来ます。
余力があるなら他の人を手伝って下さい。
「お前ぇぇぇ!! よくもその筋の人に向かって、そんな部活の顧問みてぇな口が利けるなぁ!? オレはお前が怖いよ、ホントに!! 鼻の輪っかが取れそう!!」
「くぅぅ、すんません! 新汰に
「阿久津さん、良いですよその感じ! 頑張って! 頑張ったらピクルスあげます!」
「ほんまでっか!? しゃあ、ワシの本気、見さらせやぁあぁぁぁぁっ!!」
「新汰さ、農業してる時はもうコミュ障じゃないよ? ヤクザの若頭をピクルスで釣って働かせるとか、コミュ強だよ? そこ飛び越えて、コミュ神まである」
こうして、今日も楽しく農作業に汗を流した男たちは、全員で近くの銭湯へ。
今日の汗は全員で流して下さい。
え? 俺は普通に家で風呂に入りますよ?
誰かと一緒にお風呂とか、嫌じゃないですか。ゆっくりできないし。
ちなみに、阿久津さんたち
理由を聞いたら「だって、ワシらかておっきいお風呂入りたいんじゃ」と、阿久津さんが怖い顔で可愛い事を言っていました。
ああ、でも彼らは体中傷だらけなので、入れてもらえる銭湯を探すのに苦労しました。
従業員リーダーのペタジーニさんが。
「体に傷があるヤツ4人と、鼻にピアスつけてるヤツ1人なんすけど、そちらのお風呂、入れてもらえます?」と、とんでもないオファーをすること8件。
最後に、昔からある銭湯が「いいですよ」と受け入れてくれたらしい。
やっぱり歴史があるとそれだけ懐も深いですね。
今日のお泊りはペタジーニさん。そして森島さん。
楽しく農業トークに花を咲かせましょうね。
枕抱えて好きな野菜を順番に言っていくのです。
パジャマパーティーの途中、不意に森島さんが言った。
「あの、もし奈良原さんの元の会社、と言うか組織? が、またデスゲームを仕掛けてきたらどうしますんで?」
「んなもん、無視だよ、無視! な、新汰?」
「そうですね。跡形もなく会社を潰しますかね」
「お前、真顔でそう言う事言うなよ。オレの好きなスイカの話する空気じゃなくなったじゃん。マジかよー。スイカの話してぇーよー」
ちなみに、こういうのをフラグが立つと言います。
ゲーム業界ではお馴染みですが、一般的には、何かが起こる前触れだとか。
勘弁してくださいよ、ペタジーニさん。
案の定、夜も深まる午前2時。
畑の警報が鳴りました。
「マジかよ! ほら、寝る前にそういう話なんかすっから! オレ、先行ってるぞ!」
「森島さんはバールと木刀、どっちが好きですか?」
「ええ……。どっちと言われても……」
「バールの方が似合いそうですね!」
「ああ、はい」
なにゆえこんなにのんびりしているかと言うと、最重要施設である、ハウスの守りが完璧だからなのです。
ハウスの横には、プレハブで申し訳ありませんが、御日様組出張所があります。
そして、その中では交代でその筋の人が警備のために泊っています。
ちなみに今日はフルメンバー。
表には『ヤクザ立ち寄り所』と看板も作って貼ってあります。
ハウスの安全が保たれている今、畑の方はペタジーニさん一人で事足りるでしょう。
問題は、お客様の種類です。
野菜泥棒なら良し。野菜の尊さを4時間お説教して警察に突き出します。
問題は、あのくだらない会社の手のものだった時ですね。
殺しちゃいますよ? いい加減、しつこいと。
現場に行くと、ペタジーニさんと赤岩さんがスーツの男たちをボコボコにしていました。
「おうおう。なんじゃあ! ワシが来るまで残しちょらんかい!」
「すいやせん! なんか手応えなさ過ぎて、つい!」
「農家舐めてんのか、てめぇら! おう、新汰! 代表として一言いったれ!!」
「どんな死に方がお望みですか?」
「一言が重い!! 殺すの前提なのはヤメろよ!!」
「あ、ああ、あの、このタブレットを、渡すようにと言われてきました……」
「えー。あー。えー。……おつかいの人ですか?」
そう言えば、このシチュエーション前にもあったなぁと思い出す。
「みなさん、おつかいの人をボコボコにしちゃダメですよ!!」
「す、すいやせん!!」
「オレも悪かったけどよ、ちょっと良いか? お前の
「いや、ええと、まあ、はい。なんかすみません」
「今度は謝罪が軽い! ウルトラライトダウンか!!」
「いいや、新汰ぁ。お前は頭下げる必要ないようじゃぞ? このタブレット、見てみぃ。まぁ、連中、恥知らずもええところじゃが、最悪な作戦立てちょるで」
阿久津さんから受け取ったタブレットには、俺がキレるだけの情報が揃っていました。
「今すぐ、会場に案内して下さい。命が惜しいのならば」
タブレットに表示されていたのは、拉致されたと思われる、凪紗さん、凛々子さん、莉果さんの3人。
元気そうにトランプしているので少し安心はしましたが。
なるほどなるほど、そうですか。
人質取ってまで俺にちょっかいをかけてきますか。
よーく、分かりました。
こちらの準備はいつでも大丈夫ですので。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます