第23話 凪紗さんと莉果さんがなんか怖い
「ちょっとぉー! どういうことですか、新汰さん!!」
凪紗さんがご立腹です。
事情は分かりません。
と言うか、この手の事情が分かった試しがございません。
「今日はですね、新しく作る野菜について、ぜひ凪紗さんの意見を取り入れたいと思いまして。またお知恵を拝借できると嬉しいのですが」
「えっ!? お知恵だなんて! わ、私、新太さんのお役に立ってますか?」
「はい。もちろん。あ、ちょっと失礼」
目の前を莉果さんが通過。
あの顔は、まだ課題を済ませていない顔。
「ウチは大学も推薦だから平気っしょ!」とか言っていた時と同じ顔。
捨て置けません。
「莉果さん! 課題までやってないでしょう? ダメですよ」
「はぁー? 奈良原さん、そーゆうとこウザッ!」
「お小遣いあげませんよ?」
「げぇー。またそれー? はいはい、やります! でも暑いから、ここでやるかんね? なんでこの家エアコン付いてる部屋が極端に少ないの!?」
「まあ、古い家ですからね。俺の寝室にはエアコンつけてありますよ」
「なんすかー? もしかして、JKをベッドに誘ってんすかー?」
「いいえ。俺、プライベートな空間に人をいれたくないです」
「ぐぬぬっ! そうやってマジで興味ない反応はマジ腹立つ! ちょっとは興味持てー! ほれほれ、スカート短いよー? 太もも出てんよー?」
「良い脚ですね! どうですか、一緒に農業しませんか!!」
「あー。ダメだー。JKの脚より大根の足が好きな23歳とか、マジヤバい。そんな態度だと、もう妹やったげないよ?」
「それは困りますね。実に良い脚です。頬ずりしたいくらいです」
「全然感情がこもってない! 0点!!」
「やれやれ。ちゃんと課題をして下さいね。分からないところがあったら聞いて下さい」
体を元の角度に戻すと、そこにはパンパンに頬を膨らませた凪紗さん。
昔会社で作った、風船爆破デスゲームを思い出しました。
「あの、どうしましたか、凪紗さん?」
「分からない事だらけですよぉ!! 新太さん!! だからどういうことですかぁ!!」
「凪紗さん、大学受験するんですか?」
「しませんよ!! 新太さんこそ、駅前留学で社交性を身に付けて下さい!!」
「はっはっは! 上手いこと言いますね!」
「笑い事じゃないんですよ! どうしてここにJKが!? ジェーケェーがっ!?」
「ああ、それはですね……」
ここで俺は考えた。
事情を全て、特に625万の
無理ですね。
短いシンキングタイムは終わり、俺は端的に質問に答えた。
「莉果さんには、俺の妹をやってもらっています」
「……えっ? あ、あの、ごめんなさい! ちょっと私には意味が……!!」
「奈良原さーん。ここ意味わかんないんだけどー。あ、凪紗さんでしたよね。ちーっす!」
「軽い! 名前覚えててもらえたのは嬉しいですけど! あの、莉果ちゃん? 新太さんとは、どういうアレですか!? 良くないアレですか!?」
「くふふ」とほくそ笑む莉果さん。
なるほど、凪紗さんにいたずらを仕掛けるのですね。
仲が良いなぁ。
「新汰お
「お、おか、お金!? 新太さん!? ちょっと私がいない間に、何がどうなって!?」
二人でじゃれているうちは全然関係なかったんですが、俺にまで火の粉が降りかかってくると面倒ですね。
俺はスマホを持って、一番上に登録してある番号にすぐ電話。
すると、彼は2分でやって来る。
スーパーマンでしょうか?
「おーう。どしたん、新太? お、凪紗ちゃん、いらっしゃい! 莉果ちゃんもいるのか! なんだ2人仲が良いんだぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「ペタジーニさんっ!! あなたが居ながら、どうしてここまで風紀が乱れたんですかぁ!! 断固説明を求めます!!」
「わ、分かった、分かったから、凪紗ちゃん!! 鼻のピアス引っ張んなってぇ!! ちょ、マジで! 鼻の穴が一つになっちまうから!!」
「えっ!? ペタジーニさん、鼻の穴を一つに出来るんですか!?」
「お前は本当にどこまで行ってもブレねぇな!! 出来ねぇよ! でも、このままだと物理でそうなりそう!! だから助けて!!」
「つまり、しばらく見ていたらペタジーニさんの鼻の穴が一つに?」
「一つに? じゃねぇよ!! このサイコ野郎!! 従業員のピンチだよ!!」
従業員と言う名の
ペタジーニさんもやるようになりましたね。
「あのですね、莉果さんはデスゲームで大金を、ええと、アレしまして。まあ、未成年にナニすることもできないだろうと思って、あのですね。そうそう、病院に行くときに妹になってもらって、一緒にご飯食べてます」
「お前に期待したオレがバカだったよ!! もう頼むから黙っててくれ!!」
「あ、それなら俺、得意ですよ!」
「だろうな!! 得意技を披露しといてくれや!!」
黙っている間に、ペタジーニさんは時系列を上手く整頓させ、かつデスゲームの賞金についても包み隠さず、誠意をもって凪紗さんに説明をした。
その様子を見ていて、俺は思った。
ペタジーニさんの鼻の輪っか、ずっと凪紗さんが握っているなぁ、と。
今度俺も握らせてもらおうと思ったところで、説明が終わった。
やれやれ。黙っているのも結構難しいんですよ?
「なぁーんだ! そういうことだったんですかぁ! もう、新太さんってば、そうならそうと言ってくれたら良いのに!」
「そう」
「いや、新汰!! そういう意味じゃねぇよ!!」
「Soh!!」
「分かった! もう好きにしろ!!」
「凪紗さんってさー、奈良原さんと仲良さげじゃん! 付き合ってんの?」
「莉果ちゃん、ヤメよう? そうやっていらん波風立てんのはさぁ」
「つ、つつ、付き合ってはいませんよ!? ……まだ!! まだ、付き合ってないですよ!! ……ね、奈良原さんじゃなくて、あ・ら・た・さ・ん!!」
「凪紗ちゃん。無言でオレのピアス掴むのヤメて?」
「ふぅーん? つか、奈良原さん! なんか呼ぶのダルいんで、ウチも今日から新太さんって呼んでいいっすか?」
「どうぞ、ご自由になさって下さい」
「じゃあ、よろでーす! あ・ら・た……お兄ちゃーん!」
「ぐぅぅぅぅぅっ!! JKの距離の詰め方!! なんて恐ろしい!!」
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁっ!! ほら、こうなった! ちくしょう、オレが何したよ!?」
「おーい、新太ぁ! ワシら、ピーマン取り終えたけぇ、倉庫に持ってくでぇ」
「ああ、お疲れ様です、阿久津さん」
「おお? そっちの嬢ちゃんは見掛けん顔じゃのぉ! 新太の2号か?」
「何言ってるんですか! 1号ですよ!! 完全に私が1号です!! バカな事言わないでください、おじさん!!」
「お、おおお……。何と言うか、アレじゃのぉ。ここの連中はヤクザもんより覇気のあるヤツが多くないか? のぉ、おどれら」
「慣れて下さいや、おじき。自分はもう慣れましたよ」
後ろで大きなコンテナを抱えるのは、赤岩さん。
阿久津さんの連れて来た若い衆その1。
時間にとてもキッチリしていて好感の持てるチンピラ。
「奈良原さん、来客があるとの事でしたので、車庫の掃除、終わらせときました!」
「ああ、すみません、佐藤さん。気が利いて助かります」
こっちの髪をツーブロックにして星の形の剃り込みを入れているのが佐藤さん。
何でもメモをとる几帳面で実直なチンピラ。
あと多分、ジョースターの血統。若い衆その2。
「奈良原さん! 車庫の掃除してきました!」
「いや、森島さん。それ自分がやるって言ったじゃないっすか」
「うわぁ、そうだった。ごめん!」
森島さんはやる気と結果がミスマッチなチンピラ。
なんだか俺に通じるものを持っている気配は大いに加点対象。。
ちなみに、赤岩さんは22歳、佐藤さんは21歳と若者であるが、森島さんは今年で35歳だと言う。
なにゆえ彼が阿久津さんの集めた若い衆に加えられているのかは不明。
若い衆(?)その3。
「良い感じにみんな集まったので、お昼にしましょうか。多分、お客さんもそろそろ来ると思いますので。用意して待っておきましょう」
「んじゃ、オレ、注文しといたピザ受け取って来るわ! 車貸して!」
「ヤメて下さい。今月だけで3回カーコンビニ俱楽部に行ってるんですよ?」
「自分が行ってきます。ピザ屋の場所も分かります」
「お願いします、赤岩さん。あ、ポイントカードをお忘れなく」
「押忍!」
まだ背中の傷が癒えない俺は、申し訳ないけど座ったまま。
そして、何故か俺の隣が凪紗さんと莉果さんでガッチリホールドされていた。
「新太さん、怪我で大変でしょうから、食べさせてあげますね!」
「新太お兄にはウチが食べさせてやんよー! JKのが良いっしょ!」
「狭いので少し離れて下さい」
俺のエビマヨネーズはまだでしょうか。
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