礼装
『これだからチート持ちは嫌いなんだよ』
ユリアが精霊神に認められて良かった。
こんな不様な姿は見せれないからな。
最強を言い張るのは本当に疲れる。
ヒカリを見ると頭上の星から膨大な魔力を吸っている。
……そんなんありかよ。
カチャリと音がした。
まぁ、サクッと超えるか。
『星天レグルスバースト』
心が痛い、身体が痛い。痛みの中で暖かな声が聞こえる。
『立ちなさいユリア、失う前に』
目を開けると銃を弾くカチャリとした音が耳に響く。
ティアの額に突き付けられた銃。
間に合わないと手を伸ばす。
『
その瞬間に目の前が赤く広がる。
赤く燃えるように。
『私が授けましょう、守りの奇跡を』
一瞬でティアに手が届く。
驚く間もなく私は守るようにティアを強く抱きしめ目を閉じる。
いつまで経っても弾の衝撃が襲ってこない。
『貴方は誰?』
目を開けるとティアが疑問顔で私を見上げていた。
ティアから感じる違和感と身体を包む真っ黒な濃密な魔力に目が止まる。
「ティア、この力は」
私が託したから……逃げた選択の答えがこれなんだ。
「ティアごめん」
貴方はどれだけの代償を払ったの?
ティアを立たせて後ろに居るはずのヒカリを見る。
驚きと共に固まったように動かなくなっていた。
「何をした」
動きを取り戻したヒカリは私に向かって声を出す。
何をした?
私はやっと異変に気づく。
「何これ!?」
何時の間にか赤が彩る着物を着ていた。
「あれだけの星の力を授けた星天魔法を消し去るなんて……どうやったんだよ!」
あぁ、そういう事か。
リリアママが言ってた精霊神達の奇跡を纏う力。
守りの奇跡。
『精霊神様、ティアを助ける事は出来ますか?』
私は心の中に感じる精霊神に問いかける。
『大丈夫です。愛の奇跡を授けましょう』
目の前が白金の世界に変わる。
『
着物が赤の色を落とし、白金の装飾が施される。
『この力はユリアの想いと等価で対象の傷を癒します。失った物を取り戻すにはそれなりのっと、言うまでもありませんね』
私はティアの手に触れながら思い想う。
白金の光がティアを包む。
ティアの笑顔は私の希望で、言葉はいつも背中を押してくれる。
支えて貰ってばっかりだけど私にはティアが居ないとダメなの。
私達って今更言えないけど。
好き、好き。
ティアがもしお姉ちゃん嫌いって言ったら私は……これは考えるのやめようかな。
ティアの事を考えるだけでこんな状況なのに幸せに満たされる。
私はティアが大好き。
真っ暗な魔力がスっと消えるとティアの瞳に色が戻る。
『お、ねぇちゃん、また間違えてる。私達は、だよ』
「ティア」
ティアのブレスレットがパリンと音を立てて砕け散る。
「私は試練不合格になったみたい」
シュンとなるティアの頭を撫でてヒカリに向かい合う。
「ティア、私達二人で超えるよ」
「私は最初からそのつもりだったよ」
やっと私はティアと肩を並べられる、いや。
「今は私の方が強いよね」
ムッと頬を膨らますティアは本当に可愛い。
『いい加減にしろよ。俺を除け者にすんじゃねぇ』
ヒカリの真上の星が粒子になって消えると全ての魔法がヒカリの中に入っていく。
『ゾディアックコール』
ヒカリの漏れでる魔力が一切無くなるが濃密な魔力が核のように存在することがわかる。
「いつも私はお姉ちゃんの背中を追いかけてるんだよ」
「え?」
ティアの身体から黒の魔力が溢れ出る。
『
白と黒が彩るドレスを魔力で創り出すティア。
「お姉ちゃんの真似」
あの力を真似というだけで私に笑顔を見せながら使いこなすティアに戦慄する。
『これで一緒に戦えるよね』
ヒカリは私達に両手の銃を向ける。
私は何も無い空間に手を入れて黄金のオーラを纏う黒剣を取り出す。
『血統解放リミテッド・アビリティー』
私が精霊神の力を使いこなすには癇に障るけど今はこの人の力を少し借りるしかない。
少し口が悪くなるのが嫌だけど。
『お前ら全員なんなんだよ! 俺の方が強いに決まってる! 今すぐ消えろ!』
カチャリと銃の引き金を弾いた。
空間が弾け飛ぶような膨大な魔力の篭った弾。
『その魔力……貰いますよ』
僕は自分の剣にヒカリの魔力を乗せ加速させる。
『
ヒカリの驚く顔はこれで何度目か。
「粘ったかいがありますね。やっと貴方の全部の力を把握出来ました」
僕はアクア様に視線を飛ばすと遠くに居たヒカリが瞬時にアクア様と入れ替わる。
ここは僕の能力の範囲内。
『
ドームのような膜が僕を中心に広がる。
ヒカリが空間の中へ入ると今までの力が全て消え失せた事に困惑を隠しきれないようだ。
『これで貴方も魔力無しの仲間入りですね』
ヒカリは僕の声に反応して大声を出す。
『『なんなんだよ!』』
もう限界なんですが。
三十人も相手に戦ってたら普通そうなるよな!
うん、俺は頑張った方だ。
なに? ゾディアックコールって、魔力量自体も規格外なんだが。
俺の心に直接誰かが語りかけてくる。
『あら、諦めるのですか? いつものユウ様じゃありませんね』
「クロか……お前ユリアの所に浮気したんじゃなかったのか?」
『ジャンケンという物で今日は私がユウ様の隣を独占する権利を貰っているので他の精霊に譲る気はないですね』
そうかよ。
『私の能力は戦闘向きでは無いので他の精霊が良かったですか? それなら変わって貰いに行きますが』
明らかに声が暗くなるクロ。
「俺の本当の力を使いたい。少し付き合ってくれ」
『はい、ユウ様』
白銀のオーラが俺を包む。
『
仮面を外すと俺の姿が変わる。
瞳は黒く、銀髪の髪は黒色に染まる。
そして限定精霊化をしてるのに一切の魔力も感じない身体。
『ユウ様の邪魔にならないように魔力は与えません』
流石クロだ、分かってるな。
「お前は誰だ!」
三十人ものヒカリの声が重なる。
いきなり目の前の奴が魔力纏って姿が変われば驚きもするだろ。
懐かしく馴染む身体だ。
『俺か? 俺は剣の勇者ユウ・オキタ』
これは最強の名を欲しいままにした時代の姿。
あぁ、負ける気がしねぇな。
黄金に輝くオーラを纏う黒剣をヒカリに向け呟く。
「この状況で僕が貴方に言う言葉は決まってますね」
「貴方が私達より強い? 冗談でしょ」
剣をヒカリに向け、呟く。
『『『手加減してやるからかかってこいよ』』』
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