義弟の怒り
ヒカリの頭上に輝く四つの星。
『凄いなお前ら。俺が分身体だとしてもここまで力を見せてまだ死んでないとはな』
目の前のヒカリを睨みつけるアクア。
紅のオーラを纏い静かに闘志を燃やすジーク。
無限に思える程の空中に静止した弾丸がヒカリの引き金と共に二人へ向かう。
アクアは目の色を変え、弾丸の雨に突っ込む。
『お前は絶対に許さない』
最初の弾丸がアクアに触れる瞬間にアクアの姿がブレる。
『チェンジ』
衝撃と共に無数の弾丸がピタリと静止する。
アクアはヒカリと自分の場所を入れ替えた。
「チッ! 異世界の奴等はこんな芸当までするのかよ」
自分の攻撃をそのまま受けたヒカリは舌打ちと共にアクアを睨みつける。
だがヒカリの後ろから影が刺す。
「油断はダメですよ」
紅の剣線を残してジークがヒカリを真後ろから斬り付ける。
ダメージを受けてすぐさま回避行動に移るヒカリ。
そんな異様な光景にジークは分身体の弱点を見抜く。
「貴方たち分身体はオリジナルが魔法を発動しないと星天魔法とやらを使えないようですね」
ヒカリはその答えに正解だと返しジークとアクアから距離を取る。
「少し疑問を聞いてもいいか? この結界は不自然じゃないか?」
ヒカリからしてみれば当然の疑問。
オリジナルに二人。分身体一人に二人。分身体三十人を相手に一人。
「俺がオリジナルに劣っている事は二つ。魔力量と能力の制限だけだ。なのに三十人を相手にしてる奴はなんだ? オリジナルの力と変わら……」
ジークとアクアはヒカリが話している最中に突っ込む。
「話してる最中だろ」
「貴方は時間経過と共に強くなっていきます。それを待ってると思いますか?」
ヒカリはジークの剣を避ける。
「相手は二人だ。ハンデで少しぐらい付き合ってくれてもいいだろ?」
ヒカリは愉快に顔を歪ませる。
フランに重症を負わせた相手と言うだけでもアクアは許せないが。
その顔はアクアの怒りをさらに爆発させる。
ジークの姿がブレるとアクアとジークの位置が入れ替わる。
回避行動を取っていたヒカリはアクアの追撃に反応しきれない。
アクアの剣を受けて空中を舞うヒカリは地面を何度か跳ねると両足で地面を引きずりながら着地する。
アクアは剣を構え直しヒカリに向かって刺々しく言葉を放つ。
『何が楽しいんだ!』
「俺の世界では戦う相手が居なくなってな、退屈してた所なんだよ。しかもお前らを一人残らず殺せば大切な物を取り返せるからな……今からでも楽しみでしょうがない」
ヒカリの頭上に同時に五つ星が出現する。
合計九つの星が輝いた。
『オリジナルが本気を出してるみたいだ。お遊びは終わりだな』
ヒカリは真剣な表情になると構えもせずにカチャリと銃の引き金を弾く。
『星天ズベン・エル・ゲヌビ』
すると左手に持っていた銃が鏡のように右手にも現れる。
ヒカリは両手の銃の引き金を弾く。
『星天スピカ・カートリッジ』
カチャンと音がすると銃自体の魔力量が爆発的に上がって行く。
「攻撃してこないのか?」
明らかに誘ってる雰囲気を出すヒカリ。
ジークとアクアは得体の知れない魔法に警戒せざるを得ない。
そんな二人を見ながらヒカリは再度引き金を弾く。
『星天アンタレスステータス』
アクアとジークは空間に酔う様な違和感を感じる。
「周りの景色が段々とすろぉもぉしょんにぃなぁっってぇいぃくぅぅ」
ヒカリの声がやけに間延びして聴こえるようになっていき、自分の身体も動かない。
動いているが思考と動きが噛み合わない程に遅く感じた。
厄介なのはランダムにその感覚が元の状態に戻り、それを繰り返す。
『じゃあな』
ヒカリは両手の銃をアクアとジークに向ける。
『星天サダルメリクブースト』
淡い青の光がヒカリを包むとジークとアクアから受けたはずの傷が回復する。
その現象にヒカリは舌打ちする。
「攻撃魔法を使うと思ったんだが、回復の星か」
気を取り直して再度、引き金を弾く。
『星天アルレシャブースト』
ヒカリの全身を青い光が包む。
ここでヒカリは違和感を覚えた。
「身体速度向上の星?」
一向にトドメの魔法が発動しない事の違和感。
その隙をつくように。
紅の一線がヒカリの目の前を通り過ぎる。
『何度言えばいいんですか? 油断はダメですよ』
反応速度が上がっていたヒカリは軽く躱す。
「なんで動けるんだ?」
魔力無しの異様な雰囲気を持つジークに初めて関心を寄せるヒカリ。
「魔力コントロールには少し自信がありましてね」
ジークは身体を駆け巡る魔力の速度を調整してスローになる世界を攻略していた。
「そんな魔力の使い方見た事ないが異世界の奴らは見世物でもしてんのかよ」
イラついた声音でヒカリはジークに銃を向け引き金を弾く。
魔力の弾丸を飛ばすとジークの身体がブレてアクアに切り替わる。アクアは剣に魔力を集め、受けの姿勢だけで銃弾を受ける。
「これ、ぐらいなら! 僕も!」
アクアの居た場所に転移したジークはすかさず追撃に出る。
ヒカリは流石に躱すことが出来ないジークの追撃に一撃を貰うと地面を転がるように飛ばされていく。
勢いが収まり深々と傷を残してヒカリは地面から立ち上がるとカチャリと銃の引き金を弾く。
青の光が全身を包むとその傷が綺麗に消えていった。
歯を鳴らし、銃を掴む手に力を込めたヒカリ。
『お前らは絶対に許さねぇ』
そんなヒカリを横目にアクアとジークは肩を並べる。
『『それはこっちのセリフだ』』
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