暗闇
コロシアムから瞬間的に転移して状況の確認も出来ていないユリアとティア。
『『ここどこ?』』
視界を遮る物がない地面と空が永遠と続く空間。
ティアとユリアの姉妹の戸惑いを他所にして、この空間に飛ばされたもう一人の人物ヒカリが口を開く。
『まさか転移の魔法じゃなく召喚魔法で引き釣り出されるとは想定外だった』
姉妹は言葉を発した人物を目で捉えるとユウカからメッセージとして飛ばされてきた情報を整理する。
姉妹も実の姉のように接しているフランが重症を負わされた事に怒りを覚えていた。
ユリアは剣を引き抜いて剣をヒカリに向ける。
「貴方がフランさんを!」
「フランと言う奴がどんな人物かは知らないが」
ヒカリは悪びれもせずに銃を持ちクルリと回す。
『お前らの自業自得だ』
カチャリと鳴らし銃を姉妹に向けると引き金を弾いた。
連続して乾いた音が鳴り響く。
濃密な魔力を纏った弾。
姉妹はオーラルを瞬時に纏い、向かって来た弾を斬る。
「結構な魔力は込めてた筈なんだけどな」
初撃を斬られたことに驚きを見せたヒカリは再度引き金を引く。
魔力の弾は先程と比べても段違いに大きくなり姉妹に向かって飛んで行く。
ティアとユリアの目の色が変わる
『『
ヒカリが放った魔力の弾丸を姉妹は難なく斬る。
姉妹は試練を超えて実力が付いている事を実感しながら剣を握り直した。
「昨日の女以上の使い手か、俺を呼んだだけはあるって事だな」
ヒカリは懐からスっと一本のカートリッジを取り出すと銃にカートリッジを差し込む。
『星天魔法・ハマル』
ヒカリが呟くと、銃に灰色と銀の装飾が施されていく。
ヒカリの頭上に小さな魔力を持った玉が現れる。
身構えた姉妹にヒカリは答える。
「そう怯えるな。ただの召喚魔法だ」
異様な存在感を放つ魔力の玉は星の様に煌めいていた。
「俺が星天魔法を使う度に一つの星が現れる。昨日の女は二つまでは粘ってたけどな」
銃を姉妹に向けると引き金を弾いた。
『星天アルデバラントリガー』
星が頭上に召喚される。
星の魔力とは違い、こちらに迫る濃密な魔力を感じた姉妹は受ける事をやめて、左右に別れて避ける。
その瞬間に姉妹の耳元にシュッとした風切り音が鳴る。
反応すら出来なかった弾丸に驚き、姉妹はヒカリに視線を飛ばす。
「コレを避けるのか。驚いた」
ヒカリは銃をクルリと回し、カチャリと鳴らすと再度姉妹に銃口を向けて、放つ。
姉妹は反応すら出来ない速度の弾丸を感覚を頼りに避ける。
いつでも当てられる筈なのにわざと弾丸を外している事に気付き、遊ばれてるのを自覚して姉妹は歯を食いしばった。
休むことも無く感覚だけで避けていく姉妹はギアを何段階も引き上げる。
『『魔力全開放』』
姉妹は先程まで避けていただけの弾丸を剣で捉えて始めていた。
『星天ロード・アクベンス』
三つ目の星が召喚されると今まで打ち返していた魔力の弾が空中で静止した。
それでもヒカリは引き金を引く指を止めず、連続して打ち出す弾すべてが空中で静止する。
「久しぶりに面白い物を見せて貰えたからお前らに教えといてやる。今見えてる弾丸すべてが直線軌道を無視してお前達を狙いながら追尾する。これやると一時魔法が使えなくなるのが難点だが」
まだ絶望してくれるなよとヒカリは話を続けながら銃を鳴らす。
『星天カストルトリガー』
星が頭上に現れると空中に浮いている弾すべて連鎖的に分裂していく。
ティアは分裂していく弾を見てユリアに声をかける。
『お姉ちゃん行ける?』
『分からない、ティアは?』
『頑張る!』
ユリアはティアの返答に笑みを零して姉妹の魔力が絡み合う。
魔力の共鳴。
「異世界人は面白い芸当をするな」
魔力が共鳴して混じり合う光景を見てヒカリは言葉を漏らす。
姉妹の見ている光景すべてを魔力の弾丸が埋めつくした所でヒカリは姉妹に銃口を向ける。
引き金を弾いた瞬間に全ての弾丸が姉妹を襲う。
一つの弾丸を剣で弾き飛ばしてもその弾は姉妹に再度向かって飛んでくる。
終わりの見えない弾丸の嵐に突破口がないか考えながら姉妹は必死で迎え撃つ。
逃げる事も出来ない無限にも思える程の時間、姉妹はお互いを高めながら加速していく。
段々と姉妹の加速する剣が追いつかなくなり弾丸が姉妹の身体をかすり始める。
一方的になっていく戦闘だか姉妹は諦めずに剣を振り続ける。
姉妹はヒカリに近づくことも無数の弾丸に対しても突破口が見えない。
このまま受け身でいても体力が無くなるだけだと姉妹は思った。
ユリアは一つだけティアが思いつかなそうな案を思い付く。
姉妹で戦い、勝つ事を諦めないティアなら絶対にしない方法を。
『ティア……私を信じて目を瞑って、合図をしたら私に構わず一直線にあの人を全力で攻撃して』
ティアはユリアを信じて目を閉じる。
ユリアは剣を投げると襲い来る全ての弾を自分の身体で受ける。
当たらなければ消えない条件の弾なら全てを受ければ消滅する。
ティアの剣がブレないようにユリアは声を押し殺す。
一つの弾丸だけで感覚が麻痺するような威力が通り過ぎる。
無数に続く痛みをボロボロになりながら手を広げティアを庇うように受ける。
血が口の中から逆流して溢れる。
弾丸を受け続けて微かな魔力を纏う力も無くなったユリア。
無慈悲にも最後の弾がユリアの胸を貫くと、ユリアは役目が終わったと呟く。
『今よ』
ユリアは命を掛けてティアに攻めの一手を託す。
ティアが目を開けると。
『お姉ちゃん』
倒れていくユリアを見て目の前が真っ暗に染まった。
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