王道
二人の戦闘が止まって数分。
私とティアは警戒を怠らない。
リリアママが剣を下ろし、トレファスが一言何かを呟いた。
その瞬間、世界が変わった。
見渡す全てがトレファスから放たれる魔力に覆い尽くされる。
虹色のオーラが支配する世界。
後ろからパリンと何かが連続で弾ける音が聞こえる。
振り返ると私達とさっきまで戦っていたクラスの人達が全員粒子になり消えていく。
反応すらも出来ずに。
『お姉ちゃん!』
ティアが私を両手で抱きしめるとその場で地面を大きく蹴った。
その瞬間、私が居た場所は弾けた氷と何かが通り過ぎた。
それだけでその空間に穴が空いたように私が立っていた場所は抉れていた。
助かった事実と氷が割れる音が私の耳に届く。
リリアは苦悶の表情を浮かべる。
「リリアさん、すました顔が崩れてるぞっと!」
「貴方まさか!?」
リリアの瞳は既に金色の膜が覆われている。
「今までの俺と一緒にするなよ! 一人だけ残すつもりだったが二人残ったな」
リベルは下を見下ろすとティアとユリアの姉妹が残っている事を確認する。
『動くな……わかってるだろ?』
リリアの動きが止まる。
リベルは下にいるティアとユリアに右手を向けている。
「悔しいが俺はまだアンタを倒せないみたいだ……だが勝つ方法はある。それを神が教えてくれた」
「人質ですか」
「魔力を解け!」
リベルの命令に素直に従うリリアは纏った魔力の全てを解くと金色の瞳は透き通る蒼の瞳に戻る。
オーラルの能力で空中に浮遊する事が出来なくなったリリアは地面に降りる。
リベルもリリアに連れられて地面に降りる。
「エクストラって攻略法教えてくれるのか、すげぇ便利だな」
リリアがティアとユリアを守りに行くよりも、リベルが出す魔法がティアとユリアを貫く方が速い。
リリアは従うしかなかった。
「おい、魔力の予兆が出てるぞ?」
シュッと右手から波動のような虹色の魔法が放たれる。
それはティアとユリアには避ける事も反応すら出来ずに直撃する。
その場から吹き飛ばされるとバトルフィールドの壁に勢い良くぶつかりその場で止まる。
倒れたティアとユリアは呻き声を上げる事しか出来ない。
「リリアさんこれでわかったでしょ? 俺に小細工は通用しない」
「わかりました、貴方の勝ちです」
「は? 何を勝手に終わらせようとしてるんだ?」
リリアはリベルが何を言ってるのか分からなかった。
「リリアさんは今からそこの姉妹を助ける為に生贄になって貰うんだから」
「生贄と言うのは私に何かさせるのですか?」
リベルはリリアの身体を舐め回すように眺める。
「リリアさんって良い身体だよな。金髪のサラサラの長い髪、透き通るような白い肌と蒼の瞳、スタイルだけでも誰もが振り返る程の見惚れる美女だ! しかもそんな美女が俺より強いってありえねぇだろ」
一歩一歩とリベルはリリアに近づく。
「足でまといを連れてるからこうなるんだぜ」
ティアとユリアは先程のダメージで声も上手く出せない。
二人の想いは一致している。
『『私の事は良いから逃げて』』
もしその声がリリアに届いたとしてもリリアはその場を動かない。
それ程までにティアとユリアはリリアにとって他の生徒達よりも傷付いて欲しくないと思っているからだ。
リベルは右手を下ろすと空中に虹色の玉を出現させた。
これでいつでもティア達に攻撃できると言う意思表示だろう。
『やっぱり人生はこうでなくちゃな! チート最高!』
俺が神から貰ったエクストラは全能力上昇と戦闘オペレーションの上方修正。
そして相手の攻略法が手に取るように分かる。
なんか身体に這うように流れてた魔力も俺の見える範囲で全てを覆うように拡大している。
これが俺の世界。
なんでも思い通りだ。
あっちで寝てる姉妹もリリアさんを堪能したら構ってやるか。
王道のハーレムはもう俺の国でやってるし、たまには強制的に従わせるって言うのもいいかもな。
手を伸ばせば届く距離。
【高魔力反応アリ! 急速に接近中】
ピピッと視界の端で警告を鳴らしてくる。
エクストラで何処から来るかの予兆を見る。
……上?
俺の真上に何かが降ってくる。
それを避ける為に俺は距離を取る。
まぁリリアさんの身動きが取れないんだ。
他の奴らが増えても対したことじゃない。
そいつ等を排除してお楽しみを再開するだけ。
『ふぅ、危なかったぁ! 足を踏み出したら空中とか聞いてないよ』
空から降ってきたのは仮面を被った二人組だった。
一人は無傷のようだが、もう一人はぐったりとしている。
ぐったりしてる奴はどうでもいい。
俺のチートが危険だと警報を鳴らしてるのは一人。
『
なんだ? コイツもリリアさんと一緒で俺に攻撃出来ないようだ。
しかも弱点もリリアさんと一緒かよ。
「お前も動くなよ……見れば分かるよな?」
「ん? あぁ成程ね。僕の直感だと……それはやめといた方がいいよ」
「はぁ? 何言っデェッ!?」
鼻に激痛が走り抜けると周りの視界がグルンっと回る。
待て待て、この中で誰も動いた奴なんていない。
リリアさんや仮面の奴だって動いたら人質に魔法が発動されるはずだ。
なんで俺が吹っ飛ばされてるんだ。
鼻を両手で押さえて必死に考える。
何が起こった!
『おい、お前……俺に殺されたいようだな』
初めて俺は得体の知れない存在に恐怖した。
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