オペレーション
トレファスの右手が動く。
『まず何にしようか』
何も無い場所を撫でているように見えるが、ただそれだけで魔力が爆発的に上がっていく。
「あとはコレとコレか」
トレファスの目の前に紫色が際立つ剣が一本だけ現れ地面に突き刺さる。
その武器も魔力を纏っている。
フランさんが持っている魔剣に似た雰囲気を感じる。
「じゃ、やるか」
その剣を右手に取るとトレファスの瞳に紫色の膜がかかる。
『オペレーション・ソード』
トレファスの左手が空を切る。
その瞬間に姿が消えた。
「ユリアちゃん! 前!」
リリアママの声。
何かが弾ける音と共に私の目の前を影が通り過ぎる。
至る所で氷が弾け、剣が混じり合う音が聴こえる。
リリアママの姿も見えず私は近くに居るティアに声をかける。
『ティア……』
『お姉ちゃんも皆んなもリリアママの足を引っ張ってるよ! 早く精霊化して!』
私はティアに言われて初めて自分が魔力を纏ってないことを自覚する。
これが本当の戦闘。
私は目をつぶりオーラルを纏いながら魔力を高める。
『
目を開けると金色の膜が世界を覆う。
音は過去の物でそれはもう意味が無いと切り捨てる。
気配を頼りにトレファスを探す。
大きな魔力の渦が空中にある事に驚きながら空を見上げる。
そこには氷の粒が撒き散る世界でリリアママとトレファスが剣を交えていた。
透き通る程の剣を振るリリアママと紫の線を残してるだけで姿が見えないトレファス。
『チィッ! オペレーション・マスター! 戦闘固有スキルフルオープン! アップデート、アップデート、アップデート!』
トレファスの魔力は最初に感じた魔力よりも桁が違うように感じる。
何よりも凄いのがその圧倒的に感じる相手に対して私達を守りながら戦ってるリリアママだ。
トレファスが出す魔法が私達に逸れると全てを氷の盾で防いでいる。
ティアは飛んでくる魔法を私達が反応する前から避けていると思う。
精霊化は莫大な魔力を消費する。
それを持続的にやるにも限界は存在する。
どんどん魔力が増加していくトレファス。
精霊化していても魔力の気配で追いきれるかどうかまで二人の速度が加速度的に上がっていく。
『アップデート、アップデート、アップデート!』
クソが! なんで俺の攻撃が通用しないんだ!
俺はチート持ちなんだぞ!
オペレーション・マスターで俺の魔法と剣技について来れる奴はいない。
戦闘に使用できる固有スキルも全部使っている。
随時アップデートで俺は経験を力にしてる。
こんなに綺麗な人がまさかここまでやるなんて聞いてねぇ!
落ち着け、俺は追い詰めている筈だ。
攻撃してこないのがその証拠じゃないか、防御の一点張りだ。
俺達の戦闘で巻き添えになっている下のヤツらを思うと残念としか言えないが……あっ! 婚約者姉妹! どっちか生き残ってるかな?
俺の動きが止まる。
あっ、時間切れだ。
目の前のリリアさんの剣が俺の頬に触れるか触れないかでピタリと止まる。
「ん? なんで止めるんだ?」
下を見るとまだ最初に見た時と変わらないぐらいの人数がいる。
姉妹も健在だった。
まさかオペレーションを発動してる俺から下のヤツらを守りながら戦ってたのかよ!?
「もしかしてだけどリリアさんって何かやってた人?」
「はい、元剣聖ですよ」
俺の問いに素直に答えてくれるリリアさん。
声もキレイだ。
剣聖ってこんなに強い人いんのかよ!
俺の国が弱いだけなのか?
「なんで剣を止めたんだ?」
「倒すのは簡単ですが」
ビコンとオンにしていた固有スキルが反応する。
「そうですね、この下の固有スキルですかね? それを解いてください。それで見逃して上げますよ」
【嘘を検知しました】
ここまで来たら簡単だな。
「嘘をついてるでしょ、リリアさんは俺を倒せない」
リリアさんは俺の頬から剣を離す。
「何かの能力? 固有スキルで分かったんですかね? 他の国は知っていますが私は相手に対して攻撃する事は禁止されています」
待て待て、そしたら今の状態では倒す事は出来ないけど……その条件がなかったら簡単に倒されてたんじゃないのか。
この俺が!? 惨めなニート人生だった俺が転生して神とか名乗るオッサンにチートを貰って……努力なんかしてないけど最強になったと思っていた。
現代知識を使って小さい頃からチヤホヤされてきて国王にまで俺の名が知れ渡っている。
国の模擬戦でだって俺の国の剣聖をボコボコにしたし、幼馴染や姫様にだって一目置かれている。
俺TUEEEEハーレムも夢じゃないと思ってたのにこんなの聞いてない!
どうやってリリアさんに勝てるんだ? それだけを考えろ。
俺の全てを出しても無理だった相手。
『教えてあげましょうか? 攻略法を』
俺の頭の中に響く男の声。
この声は……俺を転生させた神のオッサン。
『貴方をずっと見守ってきましたが、少し手を貸しましょう』
『勝てるなら教えてくれ』
目の前の相手を超えることが出来るなら何だってしてやる。
『神の力を貴方に与えます』
オッサンの声と共にメニュー画面にNEWの文字が現れる。
メニュー画面を開くと見たことない新たなスキルが表示されていた。
『良かったですね、これで貴方は最強を倒せる力を得ましたよ』
オッサンの声は頭に響かなくなり手助けは終了したということだろう。
俺は紫の煌めきが覆う世界でリリアさんだけを見つめる。
『リリアさん覚悟してくださいね』
ここからは俺も予想が出来ない。
目を瞑り大きく息を吸って吐く。
『オペレーション・エクストラ』
俺は神から貰ったスキルを口に出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます