分岐する運命
クレス君と離れてからお昼ご飯の時間になりました。
全然他の学園の方とは遭遇しません。
私の前の空間が歪みフィーリオンの教員服を着た男の先生が現れました。
『フランさん、お弁当を届けに来ましたよ』
『ありがとうございます』
お弁当を受け取るとすぐに先生は空間の歪みの中に戻って行きました。
私は先生から運ばれてきたお弁当を小さい砂浜の上に置きます。
周りを見渡せば永遠と続くような浅瀬。
私以外は戦闘を続けているのか物凄い振動や風が吹き抜けていきます。
『聖なる光よ、私に安寧を』
白銀のオーラの膜が私を包み込む。
『ホーリーシェル』
お母様から教えて貰った魔法です。
一時的に空間を支配する魔法。
中級魔法なので限度はありますが、衝撃や振動くらいならある程度は防いでくれます。
砂浜に座りお弁当をソーダちゃんと一緒に食べます。
『お兄様、私頑張りますね』
『キュイ!』
お兄様、最初にリリアさんと会った時は男の子と見間違えられましたけど、今はユウカさんに斬られた髪も肩にかかるぐらいに長くなりましたよ。
そんなに男の子っぽいですかね?
お昼が終わるアナウンスを聞いて立ち上がります。
浅瀬だったフィールドは休憩の間に森の様な地形に変わりました。
魔法を解くと先程までの振動や風が嘘のようになくなっていて一旦自陣に帰ろうと歩いてきた道を帰ります。
自陣に帰ろうとしていたら木の合間から男の人が一人出てきました。
『ターゲット発見~、女の子をボコボコに出来るなんて、僕はついてる』
私が男の人の出現に驚いていると急にソフィアさんとマルコフさんが男の人と私の間に割って入りました。
『気味悪い言い方ね、マルコフやりなさい』
『はい、ソフィア様』
男の人は不意をつかれたのかあっさりとマルコフさんに殴り飛ばされて光の粒子を撒き散らして消えて行きました。
ソフィアはフランに振り向いて優しく声をかける。
「貴女も自陣に戻るんでしょ、ついてきなさい」
「早く来い、足でまとい」
フランはマルコフに睨みつけられてビクッと肩を揺らしながらも大人しく二人の後を追う。
「キュイ~」
「ありがと、私は大丈夫だよ」
アリアスもフランを気遣うように声をかける。
「マルコフやりすぎよ、あんな言い方はよしなさい」
「ソフィア様、申し訳ありません」
結構な距離を歩き、フラン達が自陣に戻ると。
フランの知らない女がフィーリオンのフラッグの前に座っていた。
『フィーリオンの方々ですね、待ちくたびれましたよ』
ソフィアは知っている、その人物が毎年優勝しているユリアという人物である事を。
『ユリア……優勝候補の貴方とは当たりたくなかったんですけどね』
ソフィアはユリアを睨みながら剣を引き抜く。
折られてはいないボロボロのフラッグの前にユリアが座って待っていた。
異質な雰囲気を放つユリアに三人と一匹は臨戦態勢に移る。
「クレス君はどこですか」
フランが一歩前に出るとソフィアが手で静止する。
「クレスなら諦めなさい、ユリアは化物よ」
『やっぱりその程度ですかフィーリオンはクレスの様な人が他にも居るんじゃないかと思って待っていた私が馬鹿みたいです』
ユリアは光を反射する綺麗な刀を鞘から引き抜く。
『スタイル【フィリア・アーリエスタ】』
闇がフラン達を飲み込み空間を支配する。
マルコフは瞬時にユリアとの間合いを詰めて殴りかかる……だが華麗にかわされる。
ユリアに睨まれたマルコフは後ろに少し後退する。
再度殴りかかろうとするがマルコフの首元には既に刀の切っ先を置かれていた。
それを見て、マルコフは手を上げる。
『降参する』
光の粒子を撒き散らしながら消えていくマルコフ。
それをソフィアは止めることはしない。
「またですか」
ユリアの口から冷めた言葉が漏れる。
「キュイ!」
ユリアの目には今だ逃げ出さない二人の姿が映る、少し感心したようにフランとソフィアに言葉をかける。
「貴方達は逃げ出さないんですね」
ソフィアは悠然と剣を構える。
「ここで逃げ出しでもしたら学園代表の私はフィーリオンに帰れないじゃない」
フランもユリアの言葉に返答する。
「貴女よりも強い人なら知ってます、逃げるなんて選択したらお兄様に顔向けできません」
二人の言葉を聴き、ふっと笑みを覗かせるユリア。
「世界は広いと知りました、私も先程までは私が最強だと信じて疑わなかったのですがね」
フランは最初から全力でユリアに駆け出す。
『本気で行きます!』
『手加減できませんよ、かかって来なさい』
ユリアとフラン、二人の出会いがこの先の運命を変える。
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