和食
俺は懐かしい夢を見た。
全身が痛いんですが……。
朝起きたら全身が痛い。
「ほら、クレス君。早くしないと遅刻するよ」
ソファーで寝てた俺をリリアがお越しに来てくれた。
揺さぶられた俺の身体が悲鳴を上げて、朝の目覚めはバッチリです。
良い匂いにつれられて、俺は朝食が用意されたテーブルにつく。
すでに俺の横に座っていたユウカがリリアに話しかける。
「リリアちゃん、なんだかご機嫌だね」
キッチンとリビングは繋がっているから、キッチンで作業しているリリアの顔はリビングからでもハッキリと分かる。
「懐かしい夢を見たの」
へぇ~リリアもか。
「お兄ちゃんの夢だよね」
「ユウカちゃん! よくわかったね」
「リリアちゃんはお兄ちゃん大好きだからね」
リリアはユウカの答えに驚きを示す。
全ての料理をリリアがテーブルに置く、俺の大好物な質素な和食料理だ。
いただきますをして、俺は夢中になって頬張る。
「うまい! おかわり!」
俺のテンションは最高潮だ。
ガツガツと食べる俺を尻目に。
「夢の話を聞かせてくれない?」
さっきの話の続きをユウカは気になってるようだ。
「いいよ、少し恥ずかしいんだけど」
リリアは恥ずかしがりながら夢の……昔の話をする。
それは俺が見た夢と一緒だった。
『お兄ちゃん、見てみて~』
リリアは両手に沢山の花を持って俺に見せてくる。
「それをどうするんだ?」
「お母様とお父様に贈るの!」
花がひらくように笑うリリア。
「絶対喜んでくれるぞ!」
「うん!」
その日は俺達が生まれた日。
自分にじゃなくて親にプレゼントするそうだ。
俺が言った通りに花を貰った両親は喜んだ。
二人部屋でリリアと一緒のベットで寝ている俺は思う。
お兄ちゃんには何もないのか……。
でもスヤスヤと満足そうに眠るリリアの寝顔だけで充分だと俺は心から思った。
「う、うん……お兄ちゃん? 眠れないの」
「悪いな、起こしたか?」
「あっ! お兄ちゃんからプレゼント貰うのまだだった~」
「まさか双子なのに俺からリリアはプレゼント貰うのか!?」
確かに俺はリリアの寝顔だけで充分だったが……。
「何が欲しい?」
「う~んとね~、お兄ちゃんが欲しい! リリアもお兄ちゃんにリリアをあげる」
リリアの予想外の発想にフッと少し吹き出してしまった。
「いいぞ、お兄ちゃんをあげよう」
「うん」
ベットに横になりながらリリアは目を閉じる、今度こそちゃんと寝てくれるようだ。
『お兄ちゃんはリリアのだから……絶対一人にしないでね。ずっと一緒に……』
俺は寝息をたてるリリアの頭を撫でる。
『あぁ、ずっと一緒だ』
そこで俺の、リリアの夢は途切れた。
「本当にお兄ちゃんは嘘つきなんだから」
「今は俺がいるだろ」
「たぶんクレス君が変なこと言うからだよ」
リリアは寂しそうにうつむく。
『お兄ちゃん……』
泣きそうで消えそうな声でリリアが呟いた気がした。
それは俺の心を抉る。
今にも真実を喋ってしまいそうになる。
「ダメだよ、クレス君」
「えっ?」
「行儀よく食べないと」
ユウカは俺の頬についたご飯粒を取り、ユウカは自分の口に運ぶ。
そしてユウカの目には言うなと意志が込められているような気がした。
「もしもリリアちゃんのお兄ちゃんが生きていたら大変な事になるんじゃないかな」
ユウカは俺に分かるように喋り出す。
「考えられるのは魔力、能力による洗脳で操り人形にしたりね」
俺の力は誰でも欲しがるってことなのか? でも人形みたいに操るのは、そう簡単な話じゃない。
「昔にそういう事件があったんだよ」
なに?
「剣の勇者を操る実験を魔族がやってたんだよね」
リリアも関係してたのかユウカの言葉を借りて話し出す。
「私達が精霊神達と力を合わせて怪しい魔族の組織あと一歩の所まで追い込んだんだけど逃げられちゃった、あの事件だよね」
「そう、魔力がない大人子供を操って国と戦争を起こしたんだよね」
俺は疑問に思った事を声に出す。
「剣の勇者に使うためにか?」
「それはただの建前だよ」
ん? 建前?
「本当の目的はリリアちゃんのような強い人物を操るのが目的さ、だってそうだろ? いつ現れるか分からない、消えたかもしれない剣の勇者を待つよりも、ずっと現実的だよ」
「だけど剣の勇者が現れたら建前が本当になるってことか?」
「そうだね、だから剣の勇者はもし現れてもリリアちゃんには近づかないだろうね」
でも、ユウカは最初にあった時リリアに会えってうるさかったよな?
「昨日までさっぱり忘れてたのさ、僕は剣の勇者探しに夢中だったから、魔族達の企みを壊滅させようとしたのだってリリアちゃんから頼まれなければやってないよ」
フランの国にいた奴って。
「そういえば魔王ヴェルドは闇女神信者だったね、旅の途中にサクッと倒しといたから」
ヴェルド倒したの俺! 言えないけど。
「ユウカちゃんありがとう、これで闇女神信者の行動を制限できるかも」
「いいよ、早く闇女神信者達を根絶やしにしないといけないしね」
闇女神信者?
「闇女神信者はね、闇女神の教えとか言って悪が正義と思っている連中のことさ」
「不思議と闇女神の信者になった魔族は魔王クラスの力を身に付けちゃうんだよ」
リリアは不思議そうに首を傾ける。
そして時計に目を向けると。
「あっ! クレス君遅刻だよ!」
もうとっくに時間が過ぎていた。
ヤバイ!
俺達は闇女神信者の話を途中で区切り、学園に向かうのだった。
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