グランゼルの持ち主
コロシアムに残った生徒はざっと……。
『クロ』
『86です』
定員はたしか……。
パンフレットを確認。
A、B、Cクラスが二十人、特待生のSクラスが十五人だ。
パンフレットをしまう。
『ユウ様はその紙をまったく読んでないんですね』
……。
合計七十五人か。
ここから十一人が落とされる訳か。
リリアはずっと俺を見ていて動かない。
俺の後ろにいるフランを見ているのかも知れない。
様子見が終わったのか周りが動き出す。
リリアの後ろ側に居た男がリリアに向かって剣を振りかぶる。
それじゃダメだな。
「B」
リリアは一言呟くと、振り返り様に男の剣を避けて男の腹に拳を当てる。
ただ当てただけなのにドスッと鈍い音がして男はそのまま気を失う。
リリア強くね!
『リリアはメディアルの剣聖ですからね』
男の行動を見てか他の奴等もリリアに向かって走り出す。
だが突っ込んで行った奴等が誰一人としてリリアに剣を当てれない。
全てを優雅に避けながら魔力を込めた拳を的確に当てて無力化していく。
「CCBCASA……」
倒した後に口にしているAとかCとかはクラスを現してるんじゃないだろうか。
言われてない奴は落ちたってことなのかな。
『なんで皆んな我先にみたいな感じでリリアに向かっていってるんだ?』
『他の人は評価される為に向かっていってるんですよ、何もしなかったら脱落者の枠に入ってしまいますから』
なるほど、評価をされなかったら脱落者の枠に強制的に入るのか。
「フランはいかないのか?」
「お兄様から一対一が基本だと教わったので」
「そうか」
俺とフランはリリアが圧倒してる様を見ていた。
最後の一人が片付いたのか、リリアは最初の位置に戻る。
戦っている最中ずっと俺の方に意識を半分以上置いていたみたいだけど。
「ほら、フラン行ってこいよ」
「はい、頑張りますね」
フランは俺の前に出るとグランゼルを引き抜く。
「それは!」
リリアがグランゼルを見て驚いている。
「なんでフランちゃんがグランゼルを持っているのかな」
めっちゃ怪しまれてる。
「これはお兄様から頂いた物です」
「フランちゃんのお兄ちゃんに話を聞く必要が出てきたみたいだね」
「お兄様もこんなに綺麗な人が会いに来てくれたら喜ぶと思います」
「それじゃあ今度紹介して貰おうかな」
「はい!」
「今は試験の事だけ考えてね、いつでもいいよ」
リリアは両手の拳に魔力を溜める。
武器は使わないのか?
フランが突っ込む。
フランが身に纏うオーラルはリリアの拳に纏われている魔力より多く注ぎ込んでるみたいだ。
それを見たリリアは呟く。
「そこまで出来たら見込みがあるね」
フランはユウカが教えた通りに剣を振るう。
だけど正直すぎるんだよな。
少しの間リリアを押しているように見えたフラン。
リリアはすでに見切っていた。
フランの剣をギリギリで避けながら懐に入るリリア。
そして右手に纏っている魔力を爆発的に上げる。
貫くように放たれた拳はフランを吹き飛ばす。
「よっと」
俺は飛んできたフランを両手でキャッチする。
フランは全身の力が抜けてるのか、グランゼルが地面に落ちた。
「私は、不合格、ですかね」
「どうなんだ?」
俺はフランの問いをリリアに求める。
「Sだよ」
フランは特待生らしい。
「よかった、です……」
フランの身体の周りに光が現れる。
ふっと俺の手からフランが離れると空中に浮かんで、そのまま出口に飛んでいった。
それを見届けて俺はリリアと向かい合う。
「強制権ってどういう事に使えるのか知りたいんだが」
「学園で出来る事は一応なんでも出来るよ」
なんでもか。
「じゃあリリア先生の恋人になるとかも出来るの?」
「えっ? それは……」
リリアの頬が朱に染まる。
こんなことで照れられたらお兄ちゃん心配です!
「まさか自分が負けるのが怖いとか?」
「クレス君はそれで私を挑発してるつもりですか? 剣聖の私にそんなこと言う人は初めてです」
「リリア先生の初めてを貰っちゃった」
「変な言い方はやめて!」
顔を赤くしながら否定するリリア。
やっぱりリリアは可愛いな。
「いいよ、私が負けたら恋人でも何でもなってあげる」
いやいや、リリア! お兄ちゃんは本当に心配です。
そんなんじゃ悪い男につかまるぞ。
「でも、私は既に好きな人がいるので負ける訳にはいきません」
リリアは今までのが嘘のように魔力が爆発的に膨れ上がる。
『手加減はできないよ』
まだ上がるのかよ。
『天空の光よ、私に力を貸して』
白銀のオーラルを纏ったリリアの右手に透明な剣が現れる。
マジな奴だ。
俺もそれに応えないとな。
ただの剣じゃすぐ壊れる。
俺はフランが落としていったグランゼルを拾う。
「クレス君が持つとグランゼルは嬉しそうに輝くね、実は前にも見たことがあるんだよね」
「そんなことは今は関係ないだろ」
「そうだね、本気でいくよ」
じゃあ俺は。
『手加減してやるからかかってこいよ』
「ッ!」
リリアの驚く顔を楽しみながら俺はグランゼルをリリアに向けるのだった。
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