制限
じゃあ俺は。
「手加減してやるからかかってこいよ」
「ッ!」
リリアの驚く顔を楽しみながら俺はグランゼルをリリアに向ける。
リリアはふっと吹き出して笑う。
「いつぶりだろ、私にそんな事を言う人は……」
「こっちは初めてじゃないみたいだな」
「もうそろそろ時間だからいくよ!」
時間?
リリアは俺との間合いを瞬時に詰める。
リリアが剣を振ると、俺は後出しでグランゼル振るいリリアの剣を受ける。
グランゼルと透明な剣が触れ合うと俺達を中心に衝撃波が周りの地面を抉る。
剣劇の幕が上がり、リリアは舞うように剣を振るう。
段々と速度が上がっていく剣を俺は受ける事に徹する。
「防戦一方って感じだね」
「リリア先生が強すぎて俺じゃこれが精一杯ですよ~」
「でもクレス君は全然余裕そうに見えるけど!」
剣を全て受け止めている俺には分かる、リリアの剣から焦りが見え始めた。
俺は剣劇の最中にポケットからパンフレットを取り出す。
「残りの制限時間までに残ってた生徒は特待生として認め、強制権を使えます」
なるほどな。
「私と打ち合ってる最中にパンフレットを読む人は初めてかも」
焦りから苛立ちも剣に含まれてくる。
パンフレットをポケットにしまう。
「制限時間まで俺が生き残ればいいんだな、残りはどれくらいなんだ?」
「三分だよ」
貰ったな。
「まさかクレス君がここまで出来るなんてね」
「本気でこいよ、まだ隠してるんだろ」
俺の問いにリリアは剣を振るのをやめて、俺から距離を取る。
『
リリアの瞳が蒼から金色に変わる。
『リミットブレイク』
透明な剣が虹色の光を放つ。
「負けるのは嫌だから、この一撃で決めさせてもらうね」
白銀の魔力がリリアを中心に空中を浸食するように広がっていく。
『魔力全開放』
魔力量があがった? これはヤバイな。
「こいよ」
俺は焦っているがそれを悟られてはいけない。
リリアは微笑みながら詠唱を口にする。
『慈悲の心は捨て去り、塵をも残さず邪悪を消す一撃を』
広がっていた魔力が全て透明な剣に集まっていく。
『クロ! 何あれ!』
『リリアが持つ神をも超える魔法の一つですね』
そんなの聞いてないんだけど……。
俺はグランゼルを地面に刺す。
あんなん受けたらグランゼルが壊れる。
『クロ、剣を召喚』
『はい』
俺の手元に黒剣が召喚される。
黒剣は黒銀のオーラを纏い、そのオーラに込められた魔力は膨大な物だ。
リリアは透明な剣を振り下ろす。
『神改殲滅魔法ヘブン・ジャッジメント』
虹色の膨大な魔力が俺を襲う。
リリア……張り切るのもいいけどやり過ぎ。
リリアは張り切ると加減を間違えるからな。
「普通に食らってたら死んでんな」
少し本気出さないとな。
俺の身体から黒銀のオーラが滲み出る。
身体能力がずば抜けて上がっていくのが分かる。
『グランゼル少し力を貸してくれ』
俺は迫り来る、虹色の斬撃を見ながら地面に刺さっているグランゼルに少し触れる。
俺の身体能力がさらに上がる。
これで俺の力は全盛期の剣の勇者だ。
目前まで迫った虹色の斬撃に無音の域を越えた黒剣を振るう。
クロが出してくれた黒剣は粉々になって消える。
それに伴い一瞬で斬り裂かれた神改殲滅魔法。
『私の全力が……それもそうか.....』
静寂が支配した空間でリリアは魔力を出し切って膝をつく。
虹色の斬撃が残していったキラキラ光る魔力の残粒子がリリアを彩る。
『戦闘を中断してください、残った生徒は強制権を行使する権利が与えられます』
時間になったようだ。
『願いを言ってください』
決まってるだろ。
『俺の願いはリリアの恋人になる』
「本当だったの……」
リリアはマジで言いやがったみたいな顔をしている。
俺は気にしない。
『試合中にリリア様が承諾されていた事なので願いは受理されました』
よっしゃぁ! リリアは誰にも渡さないぜ。
『リリア様の案内に従い入学式の会場に向かってください』
そこでアナウンスは途切れた。
「これからよろしくな、リリア」
「心の準備が……ごめんなさい」
リリアは頬を朱に染めて俺を拒絶した。
えっ? 何それ。
「リリアは約束したことをすぐに破る奴だったのか……もし、もしもだけど俺が約束を簡単に破る奴だって言い触らして、リリアの好きな奴にこの事が知れたらソイツはどう思うかな~」
俺はリリアに近寄りながら『もしも』を口にする。
『ユウ様……それは強迫というのですよ?』
『リリアが他の男に取られるよりはマシだ!』
「……わかった、私クレス君の恋人になる」
俺に従うリリア。
なんか物凄く悪いことをしたみたいな感じなんだけど。
「それでいいんだよ、グヘヘ」
『ユウ様どこかの悪役みたいですよ』
『マジか……考えときます』
『やめないんですね』
やめる気はない。
「心の準備が出来てないから……変な事をしたら……ダメだからね」
リリアの頬が朱に染まり、俺を見上げてる形だから上目遣いだ……可愛いな。
突き放すような言葉を言うリリアだが、まんざらでもないようだ。
「リリアが嫌がる事は絶対にしないよ」
俺はリリアに手を差し出す。
「クレス君は不思議な人だね」
リリアは俺の手を取ると立ち上がる。
『なんでかな私のお兄ちゃんと話してるみたい』
「へぇ~リリアってお兄ちゃんイルンダ~」
「うん、全然帰ってこないからクレス君が本当にお兄ちゃんだったらよかったのに……」
俺を見ながら寂しそうな顔をするリリア。
「なんで本当の事を言ってくれないの……」
「本当のこと?」
「ううん、忘れて、待つことにしたから」
リリアは首を振り、無かった事にするようだ。
笑顔を俺に向けて来るリリア。
「可愛いな!」
「ッ!」
リリアの照れた顔に俺は癒されるのだった。
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