蘇生
「リリア応えてくれよ! 俺はリリアが好きなんだよ」
ベッドに横たわるリリアの横で涙を流すトウマ。
「ほぅ、これが下僕の好きな娘か」
邪神は興味深く見つめる。
リリアの手や顔が微かに黒くなっている事を邪神は見逃さなかった。
リリアはトウマの告白には応えず眠っている。
「好きなんだよ……」
何度も何度も告白するがリリアは応えてはくれない。
「あと何人だ……」
血にまみれた道、血がしたたる剣、その場所は最初にリリアと会った道だ。
トウマは吐き気と共に運命に感謝した日を思い出す。
「そうだな、そうだ!」
邪神は今思い付いたように明るい声を出す。
『下僕が好きな娘の両親を殺せ』
「なんだと!?」
下僕に成り下がったトウマは邪神の声に絶望を叩きつけられる。
「我にはどうでもいいことじゃ、その娘の時間も後わずかだしな」
トウマはリリアに嫌われても救いたい。
「……わかった」
トウマはリリアの家の扉を叩く。
「トウマ様ですか、上がってください」
リリアの母親がトウマを招き入れる。
「この姿を見れば何をしにやって来たかわかるよな」
「はい、私達を殺すのでしょう」
トウマは剣も服も血塗れの姿だ。
「リリアは喜ばないだろうが、これしか方法が……」
トウマは顔を伏せる。
「私達はリリアの為なら死ねます、どうか顔を上げて下さい、私達もダメな両親です……リリアの為なら他の方の命よりも娘の命の方が大切と思ってしまうんですから」
父親も母親の隣に来ると。
「やってくれトウマ君。トウマ君は将来俺の息子だ、その手で死ぬなら本望」
トウマは剣を振りかぶり、一瞬で殺せるように力を込める。
『リリアを頼んだぞ』
『リリアを頼みましたよ』
トウマはその場で膝をつき、剣を落とす。
「これでいいんだな」
「……そうじゃな」
トウマはリリアの傍に行く。
邪神がトウマの中から出ると。
『契約に従い代価を捧げる』
邪神が両手を広げ呟くと横たわるリリアの真上で血の球が出来上がる。
トウマについている返り血も、トウマの手で流した血も、全てがそこに集まっていく。
血の球から血が溢れ、リリアに流されると黒くなっていた部分が段々と無くなっていく。
「これでフィオスの魔法は解けた」
邪神の声に安堵の表情を見せるトウマ。
「リリア! リリア!」
トウマはリリアを呼ぶがピクリともしない。
「呼んでも無駄じゃ」
「なに?」
「その娘はもう死んでおる」
「……なんだと」
「もう触れれば塵になるほどフィオスの魔法が浸透しておったのじゃ」
信じられない言葉を聞いてトウマは固まる。
「死者の蘇生も出来るぞ、契約したらじゃがな」
邪神の声と共にリリアの家が弾け飛ぶ。
リリアとトウマと邪神が闇に包まれる。
「貸しじゃぞ」
邪神がトウマに向けて言うと。
「あれで死んだと思ったんだけど」
「誰だ!」
トウマが家を破壊した人物に叫ぶ。
「俺は光の勇者だ」
「下僕を排除するために勇者を呼んだようじゃな」
トウマは立ち上がる。
「邪神、今の力では勇者に勝てないだろ」
「ほぅ、我を脅すか」
邪神はニヤリと笑う。
「代価は死者蘇生の力をくれ」
「いいじゃろ」
『契約だ、代価は俺以外の勇者を殺す』
『契約じゃ、代価はデスキャンセルを授ける』
「死ね」
トウマは光の勇者を斬ろうとするが盾で弾かれる。
『ジャストガード』
『グラビティホール』
重力魔法がトウマにかかる。
「俺よりも強いのか? お前」
重力魔法をかけた人物がトウマに剣を向ける。
「反発の勇者じゃな」
「そうだ、俺が反発の勇者だ」
光の勇者の隣に現れた反発の勇者。
「僕は闇の勇者だよ!」
黒のフードを被った闇の勇者。
「俺は精霊の勇者」
金髪のチャラい勇者。
「歴代の勇者勢揃いじゃないか」
トウマは呟くと魔力を感じ邪神とリリアを巻き込み魔法を使う。
『テレポート』
トウマ達は離れた場所にワープすると、トウマ達がいた場所には塵すら残っていなかった。
『あれを避けるだと~』
無属性のオーラルを纏った歴代最強と呼ばれた勇者。
『剣の勇者だよ~』
剣の勇者がいた。
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