血の契約
「王子はどこだ!」
メディアル王国の城で大声を出すトウマ。
「誰だ貴様!」
兵士達が続々と集まって来た。
「俺を知らないだと? 勇者トウマだ、王子に話があってきた!」
「勇者トウマ様……」
兵士達は片膝をつき頭を下げる。
「王子に会わせろ」
「ハッ!」
兵士達は勇者トウマに返事をすると案内をする。
「何事じゃ」
トウマが案内された部屋には既に王と王子がいた。
「俺はトウマだ、お前の息子に用事があってきた」
「なんじゃと、儂の息子に?」
トウマは王子を指差しながら。
「お前、リリアに何をした?」
「チッ!」
舌打ちをしデップリとした腹を擦りながら王子が玉座に座る王の横からノソノソと出てくる。
「リリア・フィールドの男か」
「何をしたと聞いてるんだ!」
トウマの殺気にたじろぐ王子が懐をまさぐると小瓶を取り出す。
「それは!」
王が王子の持つ小瓶を見ると目を見開く。
「そうだ! これがあるかぎり僕は無敵だ!」
「お、お前、それが何かを分かっているのか!」
王が王子に向かって叫ぶ。
「知ってるさ、闇の勇者が禁忌指定したという不治の病が詰められた瓶だ」
「闇の勇者が禁忌指定した瓶? それが魔王フィオスの闇魔法が封じられた瓶だというのか?」
魔王フィオスは闇の勇者が倒した魔王だ。
「リリアは一生目覚めない、もし目覚めるとしたら闇の勇者が揃えたという神話にしか出てこない蛇王竜の鱗や精霊の泉の水、黄金の洞窟にある金草、まだあるがそれを全て集めるんだな」
「お前を殺してやる」
トウマは王子の前で腰にかけてる鞘から剣を抜く。
『グラビエール』
王子が呟く。
するとトウマに重力の枷がつく。
「それか、それでリリアを」
王子にトウマは剣を振りかぶる。
「なぜ動ける!」
「リリアは言ってたよ」
『国の人達は皆んな家族なの、だから私が精一杯守ってあげなきゃ』
「お前みたいなクズがそんな魔法で本当にリリアを拘束出来ると思っていたのか! 最後までリリアは国の人は酷いことはしないと、優しい人達ばっかりだと、信じていたんじゃないのか!」
剣を握る拳に力が入る。
「頭がお花畑の発想だろ、笑っちゃうよな……だけどな、お前みたいなクズがそれを邪魔していい理想じゃねぇんだよ!」
王子の持つ小瓶を斬る。
「こ、こんな事で僕は王子なんだぞ」
その小瓶から闇の魔法が漏れ出てくると王子を覆うように広がっていく。
「嗅がせるだけで強力な闇魔法だ、それを直に浴びれば普通に死ぬより苦しいだろうな」
王子は膝をつき苦しみ出す。
「た、助けてくれ! 何でもする、欲しい物は何でも手にいれる!」
「じゃあ蛇王竜の鱗でも持ってきてくれよ」
「そ、それは! ぐわぁぁぁぁ!」
王子は苦痛の声を上げながら黒い塵になり消えていった。
「王、お前の罪も重いぞ」
トウマは一言、言い残すとその場を後にする。
「わかっておる、リリア・フィールドはこの国の剣聖、その命は王よりも重い。バカ息子は大変な事をしてしまったようじゃな」
「クソ! どうやって助ける、フィオスの闇魔法だと……たしか制限時間は一週間だったはず」
一週間を過ぎると王子のように全身に闇魔法が浸透して黒い塵になる。
「リリアが倒れて何日が経過してるんだ? 魔法無効化のチートなんか持ってねぇよ……アイツなら!」
トウマは一筋の願いを込めてメディアル王国を出て、邪神がいた廃墟になった城に行く。
「邪神! 頼みがあるんだ」
邪神の城についたトウマは叫ぶ。
『我になんのようじゃ? また殺しに来たという訳じゃないのだろう』
闇が渦巻き半透明で姿を現す邪神。
「頼む、フィオスの魔法を消したいんだ」
『また懐かしい名前を出してきたな、フィオスか、だが何処にもフィオスの魔法の気配はないが?』
「俺じゃない……」
邪神は嘲笑う。
『そうか、好きな娘にフィオスの魔法がかかったのか』
「そうだ」
トウマは歯軋りをしながら邪神の声に返答する。
『ならば契約じゃ、その娘の周りの人族をお前の手で殺せ!』
「なっ!」
『出来ぬのならそれまでじゃ』
リリアの大切な者をトウマの手で殺せという邪神。
「他にはないのか」
『ないな、どうせ血が必要なのじゃ』
愛する人の為ならトウマは手段を選べない。
「わか、った、リリアを助ける為なら」
リリアが望まないのはわかっている、嫌われてでもリリアを助けたいとトウマは願う。
『契約じゃ、代価はフィオスの魔法を消す』
「契約だ、代価は人族の血」
トウマの中に邪神が入る。
『面白くなりそうじゃな』
邪神は楽しそうに笑った。
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