悪夢再び
クレスはニヤリと笑う。
「お前は初めて会った時の邪神と同じ目をしてる」
クレスは黒剣を空中に放ると黒剣はキラキラと消えていく。
「うぅあぁぁぁぁぁ!」
最狂が苦痛の声をあげる。
「ッ! シロ!」
クレスは叫ぶ。
緑の玉がクレスから抜けて白銀の玉がクレスに入ると。
緑のオーラルと瞳から金の瞳と白銀のオーラルに変わる。
『妖精のイタズラ』
クレスは最狂に触れてシロの能力を発動する。
その瞬間に最狂は倒れ、ドロドロとした虹色のオーラが抜け、そのオーラが人の形を作る。
『何故殺さなかった』
「俺も最初から分かった訳じゃない、ソイツが死を恐れてたからと言えばいいのか?」
倒れた最狂を見ながらクレスは虹色のオーラルを纏う人物に語りかける。
「「「邪神!」」」
クレスと精霊神以外が驚きの声を出す、その虹色のオーラを纏う人物はフィリアと同じ姿をしていた。
『そうか、強奪を持っている下僕が邪神を倒していたら死を恐れるのは可笑しいな』
邪神を倒していれば復活の能力も使える。
「どうやってソイツの身体を乗っ取った?」
『簡単じゃ、弱味を握ればよい』
「弱味?」
邪神がニヤニヤと笑う。
『下僕が起きたら聞けばいい、今はその時ではない』
邪神は虹色の粒子になると。
『あとな、契約は無しだと伝えておいてくれ』
ハハハと狂った笑いを残しながら消えていく。
「なに終わった感を出してるんだ?」
クレスがニヤリと笑う。
『妖精のイタズラ』
邪神と最狂の時間が逆流する。
「ハハハ……何これ?」
邪神は最狂の中に入った状態に戻っている。
『リミテッド・アビリティー』
クレスは黒剣を召喚する。
「起きたら聞けばいいと言ったな? 契約と言うのはなんだ?」
「ちょっ! えっ! 我は時空間の裂け目から外に出たはず……」
「せっかく正体を現したのにそう簡単に逃げられると思ってるのか?」
「我と戦うのか? 見逃してやるというのに!」
「違うんだよな、お前が見逃すかを決めるんじゃない、見逃すか見逃さないかは」
クレスはやれやれと首を振る。
『俺が決めるんだ』
クレスの殺気に邪神はビクッと肩を揺らす。
「見逃してやると言うのにしょうがない奴じゃな」
倒れている邪神は立ち上がろうと右腕を地面につけると。
クレスの黒剣が邪神の右腕を斬る。
邪神は右腕が消えバタリと地面に倒れる。
『妖精のイタズラ』
吹き飛んだ腕が邪神の元に戻る。
「誰が立ち上がっていいと言ったんだ? 今のお前の決定権は全て俺にある」
「こんな事が!」
「さぁ、話して貰おうか」
クレスが近づくと。
「こ、こいつの命がどうなってもいいのか?」
邪神は自分を指差しながらクレスを脅す。
「お前は下僕を殺さなかったということは人質としては充分な価値があるということじゃ」
「ソイツの命? 興味ないな」
「そうじゃろ、興味ないと……えっ?」
「やってみろよ、殺すんだろ?」
「助けないのか?」
「助けないな、さっさとやれよ」
クレスはそのまま邪神の行動を見ている。
「喋る気はあるか?」
「我はどうせ死なないからスキを見て逃げればいいだけじゃ」
「さっさと話せ!」
フィリアが邪神に叫ぶ。
「ふん、なんと言われても喋る気はない!」
「その言葉を待ってたんだよ」
「なに?」
フィリアは顔を伏せ耳を両手で塞ぐ、あの悪夢を思い出さないために。
『じゃあ喋る気になったら教えろよ』
クレスは一歩、また一歩と邪神に近付く。
黒剣がキラリと淡い緑色に輝く。
それから数十分間、邪神の声にならない悲鳴と、狂ったような剣の勇者の笑い声が響いた。
「ま、まて、もう、言うから、言う、からぁぁ」
それから数十分間、邪神の声にならない悲鳴と、狂ったような剣の勇者の笑い声が響いた。
「ほ、本当に、やめて、下さい、お願い、します」
それから数十分間、邪神の声にならない悲鳴と、狂ったような剣の勇者の笑い声が響いた。
「はは、ははは、ハハハハハハ!」
「お兄ちゃん!」
リリアの声を聞き、剣の乱舞が止む。
「……話す気になったか?」
後ろの視線が痛すぎてクレスは後ろを振り向けない。
リリア達はジト目でクレスを見ていた。
「さっぎがらぞう言っでる、のじゃ」
もう邪神は鼻水や涙が洪水のように流れている。
一時の間で邪神は落ち着きを取り戻すと喋り出す。
「我が下僕と契約を交わしたのは下僕の大事な人を守る為じゃな」
「んっ?」
「魔族がやる契約はな、時に理不尽をもねじ曲げる、その契約での下僕の代価は……」
邪神が語る違う世界の結末を。
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