希望
『
アリアスの声が聞こえた気がする。
「アリアス?」
ドンッ! と背中が地面に激突する。
「ぐはっ!」
えっ? なに?
『貴様は誰だ!』
「えっ? なに?」
薄暗い部屋の中? 洞窟か?
辺りを見回していたら黒フードの集団に睨まれていた。
「俺はクレスだ」
ここは無難に答える。
「どうやって転移して来たかは知ないが、ここからすぐに出ていけ! 詠唱の邪魔だ!」
「あぁ」
俺は邪魔みたいなので出ていこうと思う。
立ち上がろうとした時。
『ようやく見つけたぜ! 薄汚い獣共!』
洞窟の出入口から最狂が現れた。
「女神様から作って貰った結界が破られたのか!」
黒フードは驚いている。
「何が起こってるんだ?」
状況がつかめないな。
「な、なぜお前が!」
俺が声を出したことで最狂が俺を見る。
「久しぶりだな」
「お前は俺が殺したはず! なぜここにいる!」
「俺もなんで生きてるのか知らないし、ここにいる理由も知らない」
コイツを見過ごす理由も知らない。
『リミテッド・アビリティー』
何もない空間に右手を入れ、金色のオーラを放つ黒剣を取り出す。
「その剣は!」
黒フードが叫ぶ。
「死ね」
踏み込んだ瞬間に最狂との距離を詰めると黒剣が最狂を貫く。
「手応えがないな」
違和感に気づいた瞬間に最狂は消えて無くなる。
「剣の勇者様は貴方様ですか?」
最狂が言ってたのが本当なら、コイツら獣族か……懐かしい。
じゃあ隠す必要はないな。
「俺は剣の勇者だ」
「先程の御無礼、失礼しました。私はマクロードという者です」
「剣の勇者と知っても襲わないのか? 俺は獣族を……殺した人物だぞ」
マクロードは黒フードを取ると、ふっと笑う。
マクロードは黒のネコミミで執事とかしたら似合いそうな優男という感じの人物だった。
「女神様からクレス様が獣王様だと教えられました、私達がしている事はクレス様への恩返しなのです」
「俺を恨んでいいんだぞ」
「クレス様がいたから今の私達がいるのです。女神様から今がどれ程幸せだったのかを知りました、感謝しても恨む事など今はもう出来ません」
「昔の獣族達の想いが、まだ残っていたんだな」
マクロード達は力強く頷く。
「それでは……またクレス様の力が必要なのです」
「どういうことだ?」
「真上にある空間で女神様達が最強と戦っております、今からクレス様をそこに転移させます」
「呼ばれた理由が分かった気がする、やってくれ」
「はい!」
詠唱している獣族以外の獣族がクレスの周りに集まるとぶつぶつと詠唱を唱え出す。
魔法陣がクレスの真下に表れる。
『テレポート』
魔法陣が光輝き、その光がクレスを包む。
『行ってらっしゃいませ獣王様』
マクロードは静かに呟いた。
ラグナロクでは絶望が辺りを支配していた。
「
女神が呟く。
『グラビティ・バインド』
最狂は重力魔法を使う。
女神、ユウカ、フィリア、精霊神達は何かに縛られたように動くことが出来ない。
『どいつから殺そうか、そうそう、
フィリアに触れている虹色の剣を離すと最狂はドラゴンになったアリアスを見る。
「きゅ、きゅい」
緑の淡い光に包まれたアリアスが元気なく鳴く。
最狂はアリアスの方へ、ゆっくりと近づいていく。
『またチートが手に入る』
最狂はアリアスの近くに来ると虹色のオーラを纏った剣をゆっくりとした遅い速度で振り下ろす。
「アリアス様ぁぁぁ!」
ミミリアが叫ぶ。
「ヒヒ、いつ聞いても絶望の声は心地がいいなぁ」
眩い光が最狂の目の前に突然現れる。
「な、なんだ!」
振り下ろしていたはずの剣が弾き返される。
「お前は!」
『『『剣の勇者様!』』』
その場にいる全員が驚きの声を出し、希望の光が差す。
『今回は間に合ったか』
クレスはアリアスを見ると呟く。
『俺も混ぜてくれよ、最強の勇者さん』
金色のオーラを纏った黒剣を最狂に向けて言い放つのだった。
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