未来
「手加減できない? レベル999の闇の勇者の俺がお前なんかに負けるわけねぇだろ」
「ふ~ん、レベル999の闇の勇者ね」
ユウカはその場から消えると。
男の右腕を斬りつける。
「痛い、痛い! こんなのゲームの痛みじゃねぇ」
男は剣を捨てて右腕を左手で押さえながらうずくまる。
ユウカは男を見下ろしながら。
「なに痛がってるんだい? 闇の勇者なんだよね? 弱すぎるよ君」
「くっ! NPCが調子に乗るな!」
男は左手で剣を持ち、水色のオーラルを纏う。
『盾の生成』
男の身体を覆うように薄い膜が張られる。
「こ、これでお前の攻撃なんか効かない!」
ユウカは透明な白銀のオーラル纏う。
「いきなりオーラルを使う敵か!」
「オーラルは戦闘の基本だよね?」
「そのくらい知ってる! おい、お前らも見てないで戦え!」
男は振り向きながら後ろにいる数十人の男女に声をかける。
「僕は何人でもいいよかかってきて……君達には負ける気がしない」
ユウカは透明な剣を前に向ける。
「それじゃあ俺もやるグッ!」
一人の男が立ち上がる瞬間にユウカはその男に近づき剣を振る。
その衝撃で男は壁に激突して気絶する。
「今から魔力を使おうとした人、立ち上がろうとした人はああなるから」
ユウカは左手で気絶した男を指差しながら淡々と呟く。
「おい、お前ら! 全員でかかればこんな奴余裕だ!」
『そ、そうだよな』
水色のオーラルを纏った男の声に続々と立ち上がる者が増えていく。
「言ったよね?」
ユウカがその場から消えて立ち上がろうとした者が次々と壁に激突して行く。
「君達は何でここにいるのかな? 君達の能力とか色々気になるんだけど」
「う、うるせぇ~NPC!」
水色のオーラルを纏った男がユウカに斬りかかる。
ユウカはそれを余裕で避けて男を斬る。
男はユウカの剣を必死で受ける。
「ど、どうだ! 俺の『直感』でお前の攻撃なんか余裕で受けれるんだよ!」
「直感ね、ますます気になってきたよ!」
「直感はな、相手の攻撃を先読みするアシスト機能だ! NPCに理解できるか? さっきは油断しただけだ!」
「君は教えてくれないみたいだし他の人に聞くことにするよ」
ユウカは剣の振る速度を上げていく。
男は直感の戦闘アシスト機能で受けきっているが段々と受けが追い付かなくなり、纏っている盾に傷がついていく。
「くっ! くそぉぉぉぉ!」
防戦一方の男が急に反撃にでる。
「君、何もかもが遅いんだよね」
男が剣を振るがそこにはもうユウカはいない。
男の盾が割れてその場で倒れる。
ユウカは一瞬で盾を破壊する一撃を放ち、その衝撃で男は気絶する。
「君達は何者だい? そしてなんでここにいるのかな? 僕は元々戦う気はないから気を楽にしていいよ~」
「ユウカちゃんは最初からヤル気マンマンだったよね?」
フィリアとミミリアは出入口でユウカの様子を見ていて、リリアは待ちかねて出てきたようだ。
「うっ!」
「ダメだよ! そこの男の人も戦う気マンマンだったから止めたらダメなのかなと思ったけど……」
「リリアちゃん、僕は少しイライラしてたみたいだ、ごめんね~」
「私にじゃないよ、そこにいる人達に謝らないと」
「は~い 」
ユウカは数十名の男女に謝り、一人の女の子に訳を聞かせてもらう。
「ふむふむ、ゲームから来たと」
「ユウカちゃん、ゲームって何?」
リリアはユウカに疑問を聞いた。
「え~とね、僕達の世界に似たごっこ遊びをしていたら本当に来ちゃったって事だね」
「へ~」
『じゃあ次はお姉ちゃんが私の質問に答える番だね』
ユウカの質問に答えていた女の子が急に立ち上がる。
「ユウカちゃんはお姉ちゃんだったの?」
リリアはユウカがお姉ちゃんって事に驚いている。
「僕かい?」
「忘れてるの? 私は
「ミライちゃん?」
ミライは涙を流しながらユウカに抱きつく。
「今までどこいってたのバカお姉ちゃん!」
「成長しすぎだよ! お姉ちゃんでもわからない程の成長速度だよミライちゃん!」
ユウカは抱きついてきたミライの頭を撫でながら驚きに満ちた声を出す。
「だってお姉ちゃんがいなくなってもう私も十六歳になったんだよ! もう八年もいなくなってるんだよ!」
「妹なのに僕より歳をとってるね」
「えっ! お姉ちゃんは何歳なの?」
「十二歳だよ~」
「だから私より胸が……」
「ミライちゃん! 僕は怒ってるよ! こんなに胸辺りに脂肪をつけて! 僕の胸はもう成長しないんだ! 未来をしってるだけへこむんだよ」
ミライの脂肪を揉みながらユウカは崩れ落ちる。
「姉妹なのにこれほどの差ができる物なのかい!」
ユウカは崩れ落ちたまま呟いている、相当ショックを受けてるみたいだ。
「でもミライちゃんは剣の勇者を倒しに来たんだよね?」
リリアが急に殺気を放ち、ミライに近付く。
「そ、そうです……たぶん私達は剣の勇者を倒したら帰れると思うんですよ」
ミライはリリアの殺気にあてなられながら言葉を紡ぐ。
「クエストにクリアすると召喚の間に転移するか、自分の足で旅を続けるか選べるんですよ」
「でもそれはゲームっていう遊びの中だけだよね? 剣の勇者を倒すっていうことは人を殺すって事だよ?」
「でも剣の勇者は悪者みたいな内容でしたよ」
リリアの殺気が膨れ上がる。
ミライは殺気にあてられ尻もちをつく。
「ま、まってリリアちゃん、ミライちゃんだって剣の勇者の事は知らないんだから」
リリアをユウカが間に入って止める。
『お兄ちゃんは貴女達が束になっても勝てないもん』
リリアはボソっと呟いてフィリア達の所へ帰っていく。
「はい」
ユウカはミライに右手を出すと。
「ありがと」
ミライは手をとり立ち上がる。
「ところでこれからどうするの?」
「クエスト進行通りなら私達はフィーリオン剣士学園に入学かな? なんで急にこんなところに来たんだろ?」
『異世界召喚なんていつも突然さ』
遅れてやって来た教師達にこの事を話すと最初は嫌な顔をした後に魔力を測ると態度を変えてすぐ入学する事になった。
魔力が高い有望な若者が多くいたからだろう。
これでさらに名門に箔がつく。
クレスはというと。
『ここどこ?』
フィーリオンからメディアル王国に歩いて帰っていたクレス。
周囲は森に囲まれ、絶賛迷い中だった。
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