記憶の石
『『『えっ? なんで?』』』
三人が混乱しているとアナウンスが流れ出す。
『これより優勝者には特典を与えます』
「特典?」
ユウカがアナウンスに食いつく。
『特典とは……今から記憶の石に込められた最強と言われた剣の勇者と戦っていただきます』
「記憶の石か、懐かしい物を持ってきたな。提供者はミリアード王国の奴か?」
観客席にいたクレスは疑問に思う。
記憶の石は約一週間ぐらい肌身離さずに持ち歩くと石の中に本人と同等な力、思想を宿した人形が出来上がる。
記憶の石を使うと一時間しか人形は顕現出来ないし再度使うには一週間の時間を必要とする。
「クレスよ、記憶の石なんか使ったことがあるのか?」
フィリアはクレスに話しかける。
「昔ちょっとな……って何でお前がここにいるんだよ! さっき別れたよな?」
「クレスの隣が空いていたからじゃ、問題ないであろう」
フィリアはクレスの持っている物に手を出す。
「問題ないが俺のポップコーンモドキを食うんじゃねぇ」
ポップコーンモドキをフィリアの手から遠ざけながら不満を垂らす。
「いいではないか少しぐらい」
美少女からの上目遣いを浴びるクレス。
「うっ! ほらよ」
美少女から頼まれると断れないらしいクレスはとことん甘い奴だ。
「わ~い」
フィリアは喜んでポップコーンモドキを食べている。
(コイツとことん幼女だな)
クレスはバトルフィールドに視線を落とした。
「優勝者特典ってなんだろう?」
「優勝者特典は優勝した学園の目指してる勇者や邪神と手合わせが出来るのですよ」
ユウカの疑問にミミリアが返す。
「その為に僕達は戦っていたのかい?」
「私も他の人もその為に戦っていたのですが、リリアとユウカ様は知らなかったみたいですね……もう一つの特典があります」
この中でミミリア以外は特典を知らなかったようだ。
「なにかな?」
「私達の願いを叶えられる範囲で何でも叶えてくれますよ」
「お~! いいじゃん!」
「ですが誰一人その願いを叶えて貰えた事がありません」
「え~なんで?」
「優勝した学園の目指してる最強を倒さないといけないからです」
「ま、まさか! 剣の勇者を倒せってこと?」
「そのまさかです。制限時間は一時間、一時間耐えれば勝ちになります」
「一時間でも無理じゃん!」
ユウカはガックリと肩を落とす。
「昔のお兄ちゃんと戦える」
リリアは反対に目をキラキラさせている。
「剣の勇者様と手合わせできるのは心が踊るな!」
ミミリアもヤル気満々だ。
「様ってさ、クレス君にはつけないの? 剣の勇者ってクレス君だよ」
「クレスはクレス、剣の勇者様は剣の勇者様です!」
「……ミミリアちゃんって頑固だよね」
ユウカはミミリアに聴かれないようにボソッと呟く。
『それでは記憶の石を発動させます』
アナウンスと共に記憶の石がバトルフィールドの中央に出現する。
小さな石が空中に浮いて光輝く、石は人の形になり、光が収まると。
そこには黒髪黒目の剣の勇者が立っていた。
「あの中狭いな~、ところでなんの用?」
呼び出された剣の勇者がリリア達に問い掛ける。
剣の勇者の疑問に答えるようにアナウンスが流れる。
『剣の勇者様にはそこの三人と手合わせをしていただきます』
「なるほどな、それで呼ばれたのか」
『両者共に構えてください』
剣の勇者の前に光が突然現れ、その中から剣が出現する。
その剣は全体的に黒く銀色の線で模様が入っている。
「グランゼルか懐かしいな」
剣の勇者は懐かしむようにその剣をとる。
「グランゼルか懐かしいな」
クレスはバトルフィールドに現れた剣を懐かしむように見る。
「クレスよ、あの剣は」
「そうだ、俺が普段身に付けていた剣だな。あれが壊れる度にアレクに直して貰うように頼んだな~、懐かしい。グランゼルは元の世界に帰る時にミリアード王国にやったからな。いや、貰ったものを返したって言う方がいいのかな?」
「ミリアード王国があの剣をこのラグナロクに提供しておるのか?」
「だろうな」
バトルフィールドに現れた黒剣グランゼル、その剣を剣の勇者が構えると嬉しそうに刀身が煌めく。
ミミリア、リリア、ユウカが詠唱に入る。
『漆黒の闇よ、形をなし我が手の中へ』
『天空の光よ、私に力を貸して』
『天空の光よ、僕に力を』
ミミリアの手には銀色の剣が。
リリアとユウカの手には透明な剣が。
「ほぅ、なかなか強いなお前ら」
剣の勇者はユウカ達の実力を感じとる。
「みんな! 全力で行くよ!」
ユウカの言葉に三人の魔力が膨れ上がる。
ミミリアの全身を透明な黒銀のオーラが包み、目の色が紫に変わる。
リリアの全身を透明な白銀のオーラが包み、目の色が金に変わる。
ユウカの全身を半透明な白銀と黒銀のオーラが交わるように覆い、右目が金色に、左目が紫色に変わる。
全員が
「準備は出来たようだな」
剣の勇者がグランゼルを三人に向ける。
『手加減してやるからかかってこいよ』
剣の勇者は剣の勇者らしい言葉を言い放つのだった。
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