救出
「ケガはないか? リリア」
リリアに振り向きながら言葉にするクレス。
「うん、魔力尽きちゃった」
リリアは力なく答える。
「少しでも動けるならミミリアやシロと一緒に固まってろ」
言い終わるとクレスは前を向く。
クレスはここまで事態が悪化するとは思ってなかった。
邪神が現れた時は驚いたが危険視するほどの者でもなかった。
モニターでは色んな戦闘の場面へ切り替わる。
嵐の中でホーリートレースをリミットブレイクで強化させた場面を見ていたクレスはソラが精霊の力を出しきれてないと分かっていた。
その場合は負ける事はないだろうと思っていたのだ。
だが来てみれば
これはヤバいと。
光速戦闘中のユウカ。
フィリアとユウカの剣劇は一方的にユウカが傷つきフィリアは無傷だ。
傷ついたユウカは神化の能力で瞬時に自己治癒するが完全に遊ばれている。
それほどに復活した邪神とは力が離れているのだ。
剣の勇者以外の勇者達が力を合わせても元の邪神の一割の力しか互角に戦えない。
邪神の復活に加え、精霊神の力も合わさればユウカの負けは決まったような物だ。
「クレス君!」
ユウカは視界に映ったクレスに気をとられる。
「闇の勇者よ、余所見はいけないぞ!」
そのスキをついてフィリアが黒い刀で斬りつける。
「ぐっ!」
ユウカがクレスのいる方向へ吹き飛ばされる。
「おっと、大丈夫か?」
クレスはユウカを受け止める。
「そう、だね、全然、大丈夫じゃない」
ユウカは途切れ途切れに言葉を話す。
「もう、僕は限界さ」
そう言うとユウカの
クレスはユウカ抱きかかえリリア達のいる所に下ろす。
クレスはすぐにフィリアに向かい直す。
神化が切れたユウカを見下しながらフィリアは。
「少しは退屈しのぎにはなったぞ闇の勇者よ、もはや我に勝てる程の力の者はいないな!」
「ほぅ随分と強くなったじゃないかフィリア」
クレスはフィリアに声をかける。
「貴様は誰じゃ? 先程小娘が出していた魔法に似てるな」
フィリアは疑問を口にする。
「おいおい、あんなに熱いバトルを繰り広げた仲なのに忘れたのか?」
フィリアは心底わからないといった顔をしている。
「ユウ・オキタ、剣の勇者って言ったらわかるか?」
フィリアは驚愕する。
「先程の小娘が出していた銀髪も剣の勇者だったようじゃな。これで同等な力を持っていた銀髪の謎が説けた。疑問に思っていたがあの時は少々剣の勇者が現れた事で……まぁ、よい」
「動揺してた、だろ?」
「わ、我が動揺してたなどあるはずなかろう!」
フィリアは必死で否定する。
「フィリア一つ言っとくが早くその
「剣の勇者よ、我を恐れているのか?」
「いやお前の為に言っている、もう遅いか」
クレスが言い終わるとフィリアの周囲に漂う闇が猛烈な勢いで増殖していく。
「な、なんじゃこれは!」
「魔力暴走が始まるぞ、自我もなくなる」
「なぜ剣の勇者がその事を知っているのじゃ!」
「その魔法は本来精霊魔法の究極なんだよ。俺が禁忌指定した魔法で今は存在事態知る者はいないはずなんだ」
クレスは真剣に話す。
「その魔法は普通の精霊でも可能だが、俺が使っている所をみた精霊使いが真似して使った事から禁忌指定にしたんだ。限定精霊化と精霊神の存在をこの世から消した……」
なぜ禁忌指定にしたかをクレスが語る。
この限定精霊化は信頼の魔法とも呼ばれる。精霊との絆が深ければ成功する魔法。
精霊を自分の体に入れる。
二つの心の共存には互いの精神面で絶大的な信頼度が重要になる。
常時魔力を纏った状態になり、精霊神の身体能力も手に入れ、強大な力を得る。
限定精霊化は精霊になる魔法だ。
これを真似した魔法が精霊化。
人はオーラルから精霊化にまでなると二つの特殊な能力を得るが、限定精霊化は一つの能力しか持てない。だが精霊自身が持つ能力なので魔力を使わず発動が出来る。
勇者が持つ固有スキルと変わらない。
これは成功例の話し。
信頼度を無視したやり方がある。クレスはこれを広めたくなくて禁忌指定にしたのだ。
無理矢理に限定精霊化をした場合。
精霊の心と自分の心のバランスが崩れ、心の依代を無くし精霊は自分の身体を暴れ回る。
使いすぎると精霊の心は自分の心を奪い取るのだ。
そして自我を失い、限定精霊化をした状態で暴れ狂う。術者が死ぬまで。
「我はこのままでは自分の手で魔族を殺してしまうかも知れないのか!」
クレスの説明を聞いたフィリアに焦りが生まれる。
「自分が守ろうとしている者を自分で傷つけるって、どういう気分だ?」
悪役の言葉をクレスはフィリアに向ける。
「昔から変わらぬな剣の勇者よ、我よりも悪役が似合ってるぞ」
「助けて欲しいか? 無理矢理に限定精霊化した場合は気絶させたら解ける。だが自我を失えばもう戻らん」
「我を助けるのじゃ! 剣の勇者よ!」
「おいおい、今の俺はクレス・フィールドだ。そして人に物を頼むときは礼儀を、な?」
「……クレス、頼む、助けて欲しいのじゃ」
「フィリア知ってるだろ? 俺は魔族側に邪悪の勇者なんて呼ばれて心が痛んでたんだよな~。そんなんじゃ心が動かないよ~」
クレスはわざとらしく首をやれやれと振る。
「ぐぬぬ、クレス様どうか助けて下さい」
「そこまで邪神様に頼まれたらしょうがない。昔みたいに人族を殺してもないようだしな助けてやる」
「ほんとじゃな!」
「だが今の俺ではお前を倒せる程の力がない、なんせ昔のお前よりも強いしな。しかもお前はもう体の感覚がないんじゃないか?」
クレスの言葉を聞いてフィリアが手を動かそうとするが動かない。
「う、動かん」
「俺が攻撃するとお前の身体は動く。これはなお前と同等以上で戦わないと気絶させるのは無理ということだ」
これは魔力暴走まえの自己防衛に移っている。
攻撃すると攻撃される。本人の意思とは関係なく身体が動くようになるのだ。
「じゃあ結局、我は助からないのか」
フィリアはこの力に頼った事を後悔し、顔を伏せる。
邪神はこれから起きるであろう未来に涙を流す。
自分の手で愛した魔族を殺す未来を。
自分より強い者はいない、自分を止められる者はいない。
『なに泣いてんだよフィリア』
剣の勇者の声が響き渡り、邪神が顔を上げる。
「おいシロ、もう起きれるだろ? 力を貸してくれ」
後ろで寝ていた光の精霊神が剣の勇者の呼び掛けにより起き上がる。
『はい、
綺麗な鈴のような声が光の精霊から漏れる。
「久しぶりだが、やるぞ!」
剣の勇者は目を閉じる。
『主様の為ならどのような事でも』
辺りが暖かな光に包まれる。
そして光の精霊が空中で溶けて、その粒子が剣の勇者の中に入っていく。
剣の勇者が目を開けると。
『
両目に金色を宿し、白銀のオーラルを纏う。
『リミテッド・アビリティー』
剣の勇者は右手を何もない空間に潜り込ませ、金のオーラを纏う黒剣を取り出す。
金の瞳を持ち、白銀のオーラを纏う。左手には透明な剣を右手には黒剣を。
『俺は助けると約束した、絶対に助けてやる』
今、最強の剣の勇者は本気を出すのだった。
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