ケガはないか?










『戦闘を中断してください』


 アナウンスの音が届く中。




「中断だってよ! 休憩しようよ」


「ここで止めれるはずないだろ!」


 ユウカの言葉に、ソラは反論する。


「だよね~」




『『こっちも休憩なんか知らないがな』』


 クレスとユウ・オキタが同時にユウカ達の前へ出る。


『『神級魔法か』』


 最強の二人が剣を振ると。


 連続して放たれている神級魔法は黒剣の衝撃波だけで消えていく。


「剣の勇者は化物じゃ! 精霊の勇者よ、全力で具現化の魔法を消せ!」


「たしかに神級魔法を衝撃波だけで相殺させるなんて化物だ! ……ごめん、これで全力」


「な、なにを言っている! 剣の勇者と共闘していた時の精霊神の力を出せば互角以上にやりあえるはずじゃ!」


 衝撃波を相殺しながら一歩一歩近づいてくる化物達。


 それに恐怖しながらフィリアは持ってる知識を精霊の勇者に与える。


「剣の勇者は魔法を使えないが似たような事をしていた記憶がある。我にその力を使わなかったが、もしその力を我との戦いの時に使われていたら一瞬で終わっていた程じゃ」


「魔法と似たような事?」


「剣の勇者は使うことを躊躇っていた程の物じゃ。あれを使えば!」


 フィリアは闇の精霊神に近づく。


「我の記憶では精霊が心から信頼している者しか出来ない失われた魔法。おい精霊の勇者よ、精霊の閉ざされた心を無理矢理こじ開けるのじゃ!」


「あぁどうせやらなければ負けは確定だしな!」


 ソラが闇の精霊神に両手を向け、精霊の恩恵を発動させる。



『ぐわぁぁぁぁぁぁ!』


 すると精霊の声に似つかわしくない悲痛な叫びが。


「もう少しじゃ!」


 パリィ!


 ソラのチートのスキルに逆らえる訳もなく、闇の精霊神の心が壊れる。



「そんな酷い」


 リリアの言葉に化物達が反応する。


 そして黒剣を振る速度を上げる。


 だがいくら化物達でも神級魔法の嵐を無視して突っ込む事が出来ない。



「はぁ、はぁ、これで準備は整ったな」


 ソラが息を切らしながら言う。


 精霊神を無理矢理従わせるのに相当無理をしたんだろう。


 フィリアは闇の精霊神に手を伸ばす。


『我の元に来い』


 フィリアの言葉と共に闇の精霊神が粒子になり、フィリアの中に入っていく。


 神級魔法の発動が終わり、辺りが静まりかえる。





限定精霊化オーラル・フォーゼ


 フィリアの魔力がはね上がる。


「な、なんだ、この力は!」


 ミミリア達が驚愕する。


 フィリアの周りには半透明な闇が渦巻き、元の邪神の姿に戻っている。


 誰もが見惚れるようなスタイルの美女に。


「完全復活のようじゃな、いやそれ以上か」


「それはセコいんじゃないかな」


 邪神の姿に戻っているフィリアにユウカが呟く。


「これで我に勝てる奴はいないことになる。最初から限定精霊化をしてれば良かったな」



『助けられなかった』


 リリアの瞳から涙が溢れる。


「大切な友達の涙っていうのは結構堪えるね」


「リリアにこんな顔させたと知られたらクレスに叱られる」


 それを見たユウカとミミリアが立ち上がる。


「私、お兄ちゃんに助けるって約束したもん! まだ諦めるのは早いよね!」


 二人の言葉を聞き、リリアも涙を拭い立ち上がる。


 ミミリア、ユウカ、リリアの三人はとっくに魔力はない。



『『俺達も忘れるなよ!』』


 二人の化物が邪神のフィリアに迫る。


「こんなのに恐れを抱いていたとは我も情けないな」


 邪神なフィリアは両手に黒い刀を出現させて化物達を斬りつけ吹き飛ばす。


『『ぐはっ!』』


 化物達は光の粒子になり消えていく。



「剣の勇者様が!」


「お兄ちゃん!」


 ミミリアとリリアが驚きの声を上げる。


 ユウカは分かっているのだろう。


「二人とも僕に残りの魔力を注いでくれないかい?」


 ユウカが何をしようとしてるか分からないが、リリアとミミリアは頷く。


「なにをしようと無駄じゃ」


 白銀の魔力と黒銀の魔力、二色の魔力がユウカに注がれる。


「僕のオーラルは特殊でね」


「知っているぞ、どんな属性魔法でも使える能力だ」


 ソラが指差して答える。


「そうだね、どんな属性魔法でも使えるよ。でもねそれは闇のオーラルの能力。君達にはまだ見せてなかったよね、これは僕の時代の魔王を倒した時に使った能力なんだ」


「まさか!」


「気づいたようだね、二個属性を持つのが珍しいこの世界で僕は全属性持ってるんだよ。まぁ珍しい中にも一つだけ得意属性っていうのがあってね、二個属性を持っていても得意属性しか精霊化オーラルフォーゼできないんだよ、オーラルを纏うだけならまだしも」


 属性を二個や三個持っている人は戦闘の幅が広くなるし、能力もその分増えるがオーラルの能力までだ、精霊化までは辿り着けない。


「普通ならね」


 ユウカの魔力が高まる。


「まず光」


 透明な白銀のオーラルを纏う。


 そして両目が金色になる。


 精霊化だ。


「僕の光の精霊化の能力は調和。光のオーラルの能力は魔力光まりょくこう


 魔力光は魔力の質を最大まで高める。


 調和は他の属性も纏えるようになる。


「そして、火、水、風、土、闇を同時纏う、全てを精霊化」


 ユウカは透明な虹色のオーラルを纏う。


 左の瞳が金からカラフルに彩られていく。


 右の瞳は金色で左の瞳が虹色に染まる。


「この状態の時は光の能力と虹の能力が使える。虹の能力は魔力を最大まで瞬時に自動回復、精霊化してるから二つ目の能力は万全な状態までの自己治癒能力」


「その能力はあまりにも強いのう、時間制限があるんじゃないか?」


「よくわかったね。これは僕の切り札で三分が限界さ! この状態に名前をつけるなら」


 ユウカを機転に虹色のオーラが周りを飲み込む程、巨大になる。





神化しんか


 全ての属性のオーラルを纏ってる状態のユウカの身体能力も相応に高くなっている。


 ユウカが踏み込みと瞬時にフィリアとの間合いを詰める。


「なかなかやるな」


「全力だからね!」


 二人の戦闘は音、時間を置き去りにした光速戦闘だ。



「なにこれ、まったく見えない」


 リリアの言葉はミミリアやソラも思っただろう。


 そして時間が流れる。


 爆発的な衝撃波が辺りを飲み込む。


 そこにいるだけで死がよぎる程の魔力を帯びた衝撃波だ。


 ソラにはフィリアが防御魔法を張っているのか、闇の膜で包まれている。


 ミミリアやリリアは抗うすべはない、魔力がなく体力も尽きて動けない状態だからだ。



『リリア、剣を離せ』



 その暖かな声にリリアは逆らうことなく持っていた透明な剣を離すと。


 魔力を帯びた衝撃波がリリア達の前で消える。



 音も無くただ静かに。


 リリアは何が起こったのかと辺りを見渡すと。


『ケガはないか? リリア』


 目の前に透明な剣を持つ最強が立っていた。


 


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