限界
お兄ちゃんが言っていた事を思い出して。
教えて貰った事をちゃんと出来るように!
私はユウカちゃんと目配せする。
一緒に攻撃に加わるという意思表示だ。
お兄ちゃんは最初が肝心って言ってた。
私、ちゃんと出来るもん!
リリアとユウカは瞬時にソラに攻撃を仕掛ける。
「精霊の召喚が安定する前に決めるよ!」
「うん!」
精霊の鎖に縛られている精霊は力を出すのに時間がかかる。
今リリア達は不利な状況だ。ここで精霊神の力を使われたら圧倒的な力の差が生まれる。
なにせ相手は歴代最強の二人なのだから。
今のフィリアとソラの力はユウカより少し低いがリリアやミミリアよりは強い。
この状況で精霊神が加わればリリア達の負けが確定するに等しい。
「俺狙いかな?」
ソラを狙う理由。
「君の精霊の力を最大限に引き出せる能力、精霊の恩恵だっけ? それを精霊神に使われたら厄介だからね!」
ソラの勇者の能力は精霊の恩恵。
精霊の恩恵と精霊神の力の組み合わせは非常に危険だ。
「我を忘れていないか?」
フィリアはリリア達のソラへの攻撃を阻もうとするが。
「もちろん覚えてるよ! ミミリアちゃん!」
ミミリアはリリアが飛び出した時、我に返り
「はい!」
ユウカの声と共にミミリアは瞬間移動してフィリアを止める。
そしてリリアとユウカの二人がかりでソラを斬りつける。
「ぐはっ!」
ソラは何度か攻撃を防ぐが、二人の猛攻にやられて吹き飛ばされる。
「行くよ、リリアちゃん!」
魔力を込めた魔法剣でユウカは無防備な光の精霊神の鎖を斬る。
それにリリアも続く。
赤い淀んだオーラの鎖が斬れて光の精霊神が力なく倒れる。
光の精霊神をユウカとリリアで受け止めて、安全な所まで運ぶ。
「あと一人だね!」
次にリリア達は、ミミリアの加勢に入る。
「三体一か?」
「これもしょうがないよ、君達は強すぎる」
フィリアの疑問にユウカが返す。
「もう少し加勢に来るのが早ければよかったがな」
フィリアは不敵に笑い。
フィリアの魔力が急激に高まり、その魔力はフィリアを起点に衝撃波となってリリア達が吹き飛ばされる。
闇の精霊の召喚が安定してしまったのだ。
「おい精霊の勇者! 早く力を貸せ! 貴様しか精霊神は使いこなせないんじゃ!」
ソラは足元をフラフラさせながフィリアの傍に行く。
「精霊神、俺に力を分けろ!」
ソラが命令するとソラに向けて闇の精霊神から魔力が送られる。するとさっきまでフラフラしていたソラの体調が戻っていき、最初に会った時より体調が良さそうだ。
「一体は逃げられたが、まぁしょうがないだろう。ダークネス相手に一体残ってた方がラッキーだった」
「僕を過大評価しすぎじゃないかい?」
吹き飛ばされたユウカ達はソラが回復している隙に体制を立て直している。
「一体だけでも最大限の力を発揮した精霊神なら勝ったも同然だな。ダークネス達を倒して光の精霊神を返して貰おうか!」
すると闇の精霊神が無詠唱で神級魔法を放つ。
『ダークインパクト』
闇の玉が圧縮していき、放たれる。
それをユウカ達はオーラルを最大限高めて防御する。
魔法の威力は絶大で光の精霊神を守るように立っていたユウカ達の周りの木は吹き飛び、サラ地になっている。
無詠唱の神級魔法は精霊神だけに許される絶対の攻撃。
こちらが同等の防御魔法を張る余裕すらない。
『ダークインパクト』
『ダークインパクト』
『ダークインパクト』
連続して放たれる無詠唱の神級魔法に何も出来ず耐えるだけ。
「ユウカちゃん、お姉ちゃん! 私に考えがあるの! 私を守って」
「早くしてね、一人抜けると結構キツいんだから」
「リリアを守る為に全力を尽くす!」
リリアの抜けた穴を埋めるように二人はオーラルの魔力を高める。
防御は二人に任せ、リリアは二人の後ろに守られながら詠唱に移る。
「なにをやっても一緒だ! 無尽蔵に放たれる神級魔法の嵐に……」
「それはどうかな?」
ユウカとミミリアが膝をつき、ユウカはリリアがやることをわかっているんだろう。
リリアは祈るように手を組むと。
『私の最強を具現化せよ』
二つの虹色の光がリリアの両隣に現れる。
『ホーリートレース』
リリアは全ての魔力を注いだのか
すると金色のオーラを纏う黒剣を持つ、黒髪黒目のユウ・オキタがリリアの右隣に現れる。
そして金色のオーラを纏う黒剣を持つ、銀髪蒼目のクレス・フィールドがリリアの左隣に現れる。
どちらも虹色のオーラルを纏い、圧倒的な存在感を放っている。
『『こんな雑魚共に俺の力を使うのか? 勿体ないな』』
二つの最強が現れる。
元邪神のフィリアには分かる。リリアの両隣の化物を見たフィリアは身体中から汗が止まらない。
「な、なぜ剣の勇者がここに!」
「元邪神様? あれはホーリートレースだぞ? 剣の勇者だからってそんなに怯える程の物か? こっちには精霊神がいるんだぞ」
ソラはフィリアの動揺を察して問題ないことを話す。
「あれはタダのホーリートレースじゃない! 精霊の勇者よ、分からんのか!」
「フィリアちゃんは気づいたようだね?」
ユウカは笑みを深めながら。
「リリアちゃんの精霊化の能力は『リミットブレイク』魔法の限界を超えて放てる能力だね」
リミットブレイクは限界を超える。魔法により効果は違うが、ホーリートレースなら一割の力から四割の力になるぐらいの違いだ。リミットブレイクのデメリットは元の魔法の魔力消費量から十倍の魔力を使う。
圧縮とは違い、例をいえば初級魔法が中級魔法にクラスチェンジする能力で神級魔法なら未知の領域に達する能力だ。
「リミットブレイクだと! またチートかよ!」
ソラが叫んだ瞬間に。
プチッ!
モニターが暗くなる。
あれ? めっちゃ良いところじゃん! なにしてんのテレビ局!
『戦闘を中断してください』
あー休憩ね。
息を飲む熱いアニメを見てるような感じだったから、つい元の世界にいた頃に戻ってたよ。
「クレスく~ん、ちょっと良いですか?」
ミントが俺を見つけて呼び掛ける。
「なんですか?」
「彼女達にお弁当を届けてきて欲しいんだけど」
少し申し訳なさそうにミントがデカイ弁当箱を四つ持ってくる。
「えっ? 俺が!?」
「はい、お願いします」
弁当を受け取ったが、あの神級魔法の嵐の中に飛び込めと行っているのか?
俺はジト目でミントを睨む。
「本当は他に持っていく生徒が決まっていたんですけど、あの神級魔法の嵐の中に行くと知ったら気絶してしまいまして」
リリア達なら切り抜けられるだろうし結果は分からないが。
別に俺が助けに行ってやる! みたいな事にはならない。勝つか負けるかの戦闘はリリアの良い経験になるしな。
「……」
ジト目で睨む。
「え~と正直に話しますと、あの中に飛び込んで重症になるのは確定している、先生方が一番重症を負っても大丈夫な人間に行かせよとの事でクレス君に決まりました」
「ほぅ、明日フィーリオンが潰れてるかもな」
俺を捨て駒にする気の教師達に吐き気がする。
「そ、そんな~」
「冗談だよ、ミントも俺なら心配ないと引き受けたんだろうし行ってやる」
「ほ、ほんとですか! クレス様ありがとうございます」
ミントは頬を朱に染めて感謝を伝える。
そしてミントに見送られながらバトルフィールドの時空間に俺は入るのだった。
(神級魔法の嵐の中か~、行きたくね~)
俺の心の叫びは誰も知らない。
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