嫉妬するぞ
俺が美少年を警戒しながら席に戻るとミントが勢いよく語り出す。
「それでは皆さん! 魔力テストに向けて頑張りましょう」
魔力テスト?
「わからない人もいると思うので少し説明しますね」
ミントからの説明は魔力テストまでに魔法のコントロールと質を向上させますということらしい。
魔力テストは主に三つ、魔法の応用力、魔力量、魔力の質で決まる。
特待生は皆んなリリアは別格としても魔力量は凄まじいが質やコントロールがいまいちだという事らしい。
質は魔力のオーラをどれだけ研ぎ澄まされているかが強さを別ける。属性の色は残るがどれだけ透明な色の魔力を作れるかだな。質を上げると同じ魔力量の魔法でも違いが出てくる。質を上げるには魔力を圧縮するんじゃなくて薄める作業に近い。
薄めた魔力で本来の魔法と同等にする事を繰り返すのだ。
分かりやすく言うとジュースは原液の状態からほんの少し水を加えると変わらないだろ? そこに努力や才能の砂糖を加えてまた薄めるという感じだ。
だから段々と透明になっていく魔法を放つ時に色を戻した場合、違いが段違いになる。
完璧に薄めた状態のジュースに薄めた分の原液のジュースを入れると元の倍になるだろ。
質は薄める作業、圧縮は応用力になるのかな。
圧縮の向上は少しだけ圧縮して放つ、慣れてきたらまた圧縮との繰り返しだ。
自分の魔力のコントロールが出来ていないと魔法の不発や魔力の暴走に繋がったりする。
魔法の応用力は実際に人との訓練での上達が早いことから実技みたいな名目の試合をやる。使い方で攻撃魔法も防御になり、防御魔法も攻撃になる。
この二つを努力していれば魔力量の差でも覆すことができる。
魔力量は魔力測定器に手を翳すだけだ。生まれてから魔力量は変わらないしな。
魔力のない俺は確定で落第点。
そうだな、努力で俺も魔力の質を向上したらいいんだ……。
簡単に考えてくれ【10】の魔力の奴が倍の魔力を使えるようになったからって【20】だろ? それじゃ魔法は発動できない。
ふふふ、しかも俺は元勇者の時はそれなりに頑張ったんだぞ。なぜなら俺の魔力は最初から無色だからだ! 属性という概念すら俺は持ってなかったのだ。
ヤバイだろ? 普通にみんな属性もってるのに俺だけ無色だよ、質にステータスがあるなら俺はすでにレベルMAXです。
圧縮? なにそれ? 魔力ある奴の考えだろ。
魔力量? それを言うな泣けてくる。
「それでは皆さんオーラルを見せてください。皆さんが使える事は知っているので隠さなくてもいいですよ。オーラルはその人の魔法に注ぎ込んだ努力が分かりますから」
俺が物思いに耽ってるとミントの言葉を聞いて教室の全員がオーラルを全身に纏う。言わなくても分かるとは思うがもちろん俺以外の全員な。
さすが特待生で呼ばれた奴等だ。
オーラルを皆んな使ってやがる。
でも魔力のコントロールが雑だな。オーラルは基本は魔力を垂れ流しにする魔法だが、それを身に纏う事で効果を発揮する。ここでもコントロールが必須になってくる訳だ、どれだけ自分に魔力を纏わせられるか。
オーラルは基本を使う。
薄めた魔力で、使う魔力量を流しながら、身に纏わせる為にコントロールする。魔力関連の全てをコントロールしてないと蛇口を最大に捻った状態と変わらないだろ。
難しいらしいよ? 俺はわからないけど。
皆んな使ってるのに俺だけ出来ないとか泣きたい。
いや! 諦めたらダメだ!
指先に魔力を集中させる。
ポッ! っとマッチの火のように無色の魔力が姿を現し、すぐに消える。
今の俺の魔力量【20】
「お兄ちゃん凄いよ、完全な無色の魔力なんて私初めて見たよ」
妹様は半透明な白銀のオーラルを身に纏いながら俺に賞賛の言葉をくれる。
「ありがとう、リリア」
「う、うん私、お兄ちゃんをいつも見てるけど初めて見たよ、お兄ちゃんの魔力」
リリアの頬が朱に染まる。
でもねリリアの言葉は素直に嬉しいが人にはね、優しくされると辛いときもあるんだよ。
パンパンと手を叩きミントが。
「は~い止めてください、皆さんの努力はわかりました。魔力のコントロールを重視していくのでさっそく昨日皆さん行ったコロシアム覚えてますか? そこに行きますので準備してください」
皆んなは何やら椅子に魔力を注ぐと模擬剣が椅子の中から現れる。
えっ! なにそれ。
「はい、お兄ちゃん!」
いつの間にかリリアが俺の椅子から模擬剣を取り出してくれてたようだ。
「リリアありがとな」
「うん!」
今の魔力は【0】どれだけ魔力使うんだろう? 【20】注いで発動したらいいなこの椅子。
それよりミントの移動授業を聞いて美少年のやる気が気になるな! 良いところを見せる気か!
つうかこのクラスに美少女が多いのにリリアに注がれる視線が多いな。くそ! 俺がリリアを守らないと!
さっそく移動する。
コロシアムには数分でつき。
やけに広いな。
リリアは昨日ここで戦ったらしいがミミリアも天才だったんだろ? 天才の
この魔術の結界が相当強固なのか? そうは見えないな。リリアが一撃当てたら壊れそうなんだけど、魔力を纏わせた衝撃波でもリリアなら何発かで壊せるな。
見たかったな~、妹様の晴れ舞台。
教えてくれれば行ったのに!
観客席とか埋まるのか? リリアは。
『た~くさん人が居てね、わ~って盛り上がってたんだよ』
模擬戦の時の事を両手をいっぱいに広げながら話してくれた時にこんなんだ。
た~くさんがどれだけか分からない。
「リリア、多分ペアを組まされるから俺以外と組みなさい。でも男と組むと嫉妬しちゃうぞ」
「お兄ちゃんと組みたかったけどわかった~、あとお兄ちゃんが嫌なら男の子とは組まないね!」
友達は多い方がいいだろう。
リリアに男友達? 必要あるか?
「じゃあペアを組んでください」
俺の予想道理にミントがペア宣言をしたあと皆んなが一斉にリリアに群がる。
そんな中、リリアの所に行こうとしている金髪の美少年君を瞬時に胸ぐらを掴み捕まえる。
俺も友達一人は作らないとな。
「俺と組め!」
「えっ!」
俺はミントに向き直り宣言する。
「ミントせんせ~い、俺はコイツと組むから!」
「はい、アクア君を強くしてくださいね」
「もちろん! 俺に任せてください」
この会話を聞いてるのは俺、ミント、アクアだけだ。周りの皆はリリアとペアを組むことに夢中でバカにしたり文句を言う奴はいない。
俺の勢いに押されアクアは無理矢理ペアを組まされるのだった。
リリアに好き好きオーラを送ってるんだから兄には強く当たれないよな。
「俺はリリアの兄だぞ、拒否するか?」
「いえ、コチラから組みたかった程ですよ」
お前、リリアの方に行こうとしてただろうが! しかも目が泳いでるぞ。
ふふふ、リリアに手を出そうとしたらどうなるか思い知らせてやる。
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