恋人
寮の部屋。
寝室のベットの上で目覚めるとリリアが俺の布団の中に居た。
うん、なにがあった?
リリアは俺に抱きついて俺が動くと起こしてしまう! 大切な妹の眠りを邪魔するなんて、べ、別に妹の寝顔が真横にあって可愛いから起こさないとかそんな訳じゃないんだから!
微かな寝息が頬に当たる程に近付けられた顔はカーテンから射し込む光とサラサラの金髪で天使のようだ。
一生こうしていたい。
リリアが微かに口を開いて寝言を呟いた。
「お兄ちゃん大、好き」
やばいもう死んでもいいです俺に悔いはありません。
ふとあることに気づいてしまった。
それは昨日この部屋にはなかった物だ。
女性物の制服だ。これで俺も学校に行くんだな。
ごめん、社会的に死にます。
その横にある男性物で紺色のシンプルなブレザーで学校に行きます。
たぶん妹様が頑張って運んでくれたんだろう。
なんでこの部屋が分かった?
「おに、ちゃん」
妹様が俺の動揺を察してか目を開ける。
「お兄ちゃん! あのねあのね!」
俺が起きてるのを確認するとすぐさま興奮した様子でベットから起きて昨日の事を話してくれた。
「ふむふむ、
ミミリアが誰かは知らないが頑張った妹様の頭を撫でながら褒める。
「えへへ」
リリアの嬉しそうな顔は破壊力抜群だ。
「そしてね願いが一つだけ叶えられるって言われたからお兄ちゃんと学園で一緒に生活したり、一緒に勉強したりしたい! って言ったら叶えてくれることになって」
ふむふむ。
「ミント先生がね、それなら全力で叶えましょうって体調が悪そうなのに頑張ってくれたの」
これで色々入学の件は片付くな。
「待て、ここ男子寮だぞ」
「妹だから大丈夫ってミント先生が」
な、なるほど。
「じゃあ朝御飯の支度するね」
リリアは自分の制服を取り着替えだす。
だが俺は全力で着替えを阻止する!
「ま、まて! 妹だからって男の人の前で着替えたらダメだ。俺は嫌だが、そういうのは好き人が出来た時に必殺技として取っておくものなんだぞ」
「私、お兄ちゃんの事が大好きだからいいよね?」
リリアはパジャマのボタンを外していく。
リリアはまだ男の前で服を脱ぐ行いがどれだけの事かわかっていないようだ。
ここは将来の為に教えてやらないといけないよな。
「俺は嬉しいが家族的な愛じゃなくてだな! う~と、恋人の好きとかだ」
ボッと茹でダコのようになったリリアが部屋から出ていく。
『お兄ちゃん、その好きだよ』
扉の音でリリアの言葉は消える。
「わかってくれたか」
クレスは出ていくリリアを見ながらホッと息を吐く。
クレスはシスコンだがリリアを大切に扱って嫌われるような事はしないと決めている。
好きな人を想うのは当たり前の事だがリリアの頭の中はクレスの事で一杯なブラコンということは見ての通り分かってない。
俺はベッドから立ち上がると身体が異様に重いことを確認する。普段の動きが出来ていないような。
違和感なんか気にも止めずに着替え始める。
サービスショットいる? 少しだけだぞ。
俺はパジャマを脱ぐと、引き締まった身体の筋肉が邪魔だというように流れる汗が……変なことしてる場合じゃないな。
俺が着替えを終え、ネクタイをピンで止めているところで。
「お兄ちゃ~ん、ご飯出来たよ~」
リリアが勢いよく寝室の扉を開ける
制服を着たリリアは本当に可愛い。
紺のブレザーを緩やかに着こなし、赤のリボンもリリアの明るい金髪に栄える。赤と白のスカートから覗く、透き通るような白い脚線美を黒のニーハイソックスは際立たせている。
靴は男女共に茶色の革靴だ。ロンファーだっけか?
リビングに向かうと綺麗に並べられた食器の上に味噌汁やお米、漬物等が添えられている。元の世界、日本では質素なご飯だが、これはリリアに言ったら実際に作ってくれた。今では俺の大好物メニューの一つで日本食を再現してくれたものだ。
リリアが作る物はなんでもうまい。元の世界でも文句言う奴なんかいないだろうな。
えっ? 文句言った奴? 消すに決まってるだろ?
リリアは小さい頃からお兄ちゃんと一緒に暮らす~と言って小さい頃から家事全般をこなせるようにお母様に教えて貰っていたのだ。
「リリアは、いいお嫁さんになるな」
「えへへ」
その男が羨ましすぎる! 一緒に暮らしたいって言ったらうざいって言われるかな。
あれ? なんだろう、味噌汁、今日は少しショッパイな。
ご飯も終わり、とうとう二人で家を出る。
通りすぎていく男子は誰もがリリアに振り向き。
女子との合流ポイントを通過し学園に向かう。
「あの子、みてみて」
「あ~昨日の可愛くて凄く強い子だよね」
俺は妹が褒められて嬉しいのでついドヤ顔をしていまう。
「ね~隣の子、釣り合ってなくない」
「わかる~」
女子達の至る所からそんな感じの言葉が聞こえてくる。
まぁ分かるよ俺だってこんな可愛い彼女いたら釣り合ってないなって思うもん。
リリアから殺意? みたいなものを感じたので、手を繋ぐ。
リリアの頬が朱に染まり不穏な気配が感じなくなる。
リリアの機嫌が悪いときはいつもしないようなスキンシップをすると機嫌がよくなるのだ。
学園の校舎に入るとすぐに特待生の教室についた。リリアは昨日行ったみたいなので迷うことはなかった。
教室に入ると十六の席と机があり、どうみても急遽作ったような席がある。
席と机には隅にシールみたいなもので、クレス・フィールドと名前が貼られている。
席にはマットが敷かれているだけ。
他の席は明らかに豪華なソファーを一人用の椅子にしたような出来で名前は刺繍で縫い合わせられている。
机は俺とあまり代わりがない。魔力を通せば教科書が浮き出て授業の内容を代わりに記録してくれるらしいのだ。
魔力無い奴? この学校にそんな奴が入れる分けないだろ? 俺だよ!
授業が始まり、ミントが教室の中に入ってくる。
「今日からこの教室に無理矢理入って……志望して配属されました、ミント・フレーバーです。どうぞ宜しくお願いします」
ミントがやけに俺に目を合わせてくるが関係はないと信じたい。無理矢理とか言ってた気がするが。
「え~と、クレスさ……クレス君、昨日で皆んな自己紹介は済んでるみたいなので前に来て自己紹介をしてください」
さすがにクレス様はないか。
紹介は昨日済ませてしまったという事なので俺一人で教壇の前に立つ。
「クレス・フィールドです。妹のリリアから特別に学園に入る許可を頂いたということなのでそのチャンスを逃さない為に来ました」
入学なんて望んだことじゃない。本当はリリアと居たいだけだがな。
教室中から笑いが漏れる。
『あれだろ、魔力なくて校門で落ちてた奴』
『妹の情けって奴か、兄なのに情けない』
『チャンス? 身の程を弁えてほしいよ』
『特待生クラスに何にもしないで入るとか都合良すぎでしょ』
『魔力なくて入るなんて剣の勇者の真似事でもやりに来たのかしら』
チラホラと耳に入ってくる言葉は。
えっ? なに? 性格悪すぎじゃないかこのクラス。
リリアには周りの声が聴こえていない。皆の前で自己紹介していた俺を真剣な顔で見ていた。他の人なんか眼中にも入ってないって顔だな。
教壇に立って気づいたが女子十人で俺を含め男子六人か、ん? あの金髪美少年、リリアの方をずっと見てるぞ!
残念だったな俺に目をつけられたからにはお前の恋は終わりだ。
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