第60話 金剛石とダンジョンコア
三体の強力な魔物は何とかココが倒した、特に大きな怪我がないようでヒナノは安心する。
『まあ、及第点じゃないかな』
「あ、ありがとうございますですぅ、師匠!」
パタパタとココの尻尾が揺れた。
合格点ではなく及第点ということで、レオの評価は厳しめであった。
でも訓練としては上手くいったようで、レオに褒められたココは嬉しそうである。
相手は強力な魔物三体に対してココは一人であり、苦戦が予想されたのだが、問題なく倒せたのは凄いことだろう。
途中から魔物の強さがアップされたように感じたのはヒナノも気になったが、ココも上手く対応していたようで、レオとの訓練の成果が出たということか。
ダンジョン側としたらダンジョンの機能を停止させてまで魔力を注ぎ込んだフロアボスを、実力試しの練習台にされたらたまったものでない。
そんなことをダンジョンコアが知れば、怒りを通り越して呆れてしまうはずである。
ボスを倒した戦利品は魔石であったのだが……。
「とんでもない大きさの魔石ね!?」
今までに見たこともないような大きさ。
ヒナノの体よりも大きな魔石、それが三個も。
大きな体の魔物だったとはいえ、どこに入っていたのか不思議なサイズである。
強力な魔力を宿しているのは間違いないだろう。
巨大な魔石をヒナノはスライム魔石に収納していく。
千切ってレオとココに分け与えようとも考えたが、金剛石がもう目の前に迫っている。
地面の下が目的の地であり、ヒナノは気持ちがはやる。
「レオ君、ココ、もう少しで金剛石が発見できるから今の魔石を食べるのは少し我慢してね」
『うん、りょーかい!』
「りょ、了解なのですぅ!」
聞き分けのいい二人であった。
まあ、大好きなダイヤが作れる金剛石がもうすぐ手に入るなら、二人は大抵のことは我慢できそうである。
邪魔する魔物がいれば薙ぎ倒して進む、そんな気概を持った二人はヒナノの意見に賛成した。
「じゃあ、穴をあけるわね」
何層をも繰り返してきた工程、ヒナノも慣れたものであった。
それにより鍛えられた能力は最後の地面を開く。
ついにヒナノ達は金剛石のある部屋に到着した。
その部屋は今までの場所より小さく、殺風景な印象。
奥に大きな透明な石があるぐらいで他には何もない、魔物もいない。
ヒナノは地面に手を置く。
「見つけたわ! これが金剛石ね!!」
『おお~!』
「や、やったですぅ!!」
念願の金剛石であった。
ヒナノの【知覚】にはこれが金剛石であると、地面が輝き教えてくれる。
さっそく収穫しようとしたその時。
『あ、あなた達、何をしているの?』
ヒナノ達は突然声をかけられた。
声の方を見ると奥にある石から声がしているようである。
「石がしゃべった?」
『当然じゃない。私はダンジョンコアなんだから!』
透明な石は言葉と同時に小さな光を点滅させている。
「ダンジョンコア? ええっと、私達はここにある金剛石を取りに来たのだけれど」
『ふん、適当なことを言って! どうせ私を捕えるために送り込まれたのでしょ!!』
「いや、そんなんじゃないんですけど」
『そうよ。可哀想な私はボロボロにされ人間に捕らえられるの。そう、これは運命だったのよおおお!!』
「いや、言ってる意味が分からないのだけれど」
ダンジョンコアと名乗った彼女? は暴走気味に言葉を並べる。
『死力を尽くして戦った私をもはや守ってくれるものはいない。残忍な侵入者達に酷い目にあわされてしまうだけ。ああ、可哀想なわたし!!』
「ええっと……」
『なんだこいつ』
「へ、変なのですぅ」
自分の世界に入っているダンジョンコアに戸惑うヒナノ達。
「ほら、私達変なことしないし、あなたをどうにかするとか考えていないから」
『はああ!? 散々私が送り込んだ罠や魔物を亡き者にしてきたじゃない!! それにダンジョン最下層にまで来てダンジョンコアを取らないなんて誰が信じるのよ!!』
どうやらヒナノの言葉は届かないようであった。
たしかに魔物や罠はクリアしてきたが、それは自分達を守るためであり好き好んでやった訳ではない。
すべては金剛石を獲得するためである。
「ほら、これ。これを取りにきたのよ」
ヒナノは地面を指差して言う。
『ん? その変な石を取りに来たってこと? 誰がそんなことを信じるのよ。そんな理由で危険なダンジョンに来るわけないじゃない』
透明な石のダンジョンコアは怒りに合わせて光の大きさが変わり点滅が激しくなる。
ヒナノのいうことを信じられないようであった。
そんなことを何回繰り返しただろうか。
『本当に、本当に酷い事しないの?』
「うんうん。しないしない!」
『うそっ……』
ダンジョンコアは信じられない様子。
『ねえヒナノ。もう、面倒だから僕がやろうか?』
レオは物騒なことを言うとキラッと爪を見せる、ブラックレオ登場である。
『ひぃ、ひいいい。やっぱり酷いことされるのね! い、いやあああ!!』
「ほら、レオ君怖がっちゃったじゃない」
収拾がつかなくなってきたので、ヒナノは提案する。
「ねえ。ダンジョンコアさん私とお友達になりましょうよ。そうすれば安心でしょ」
『へっ? 友達って何?』
どうやらダンジョンコアには友達と言う概念がないようである、まあ、当然と言えば当然であるが。
「そうね。お互い傷付け合うこともなく、高め合える存在って感じかしら」
そこら辺は人によって様々であろうが、ヒナノはそう説明した。
『じゃ、じゃあ私に危害を加えないってこと?』
「そうそう。勿論、あなたが私達に危害を加えることも駄目よ」
お互い対等な立場である。
『そうなんだ。素晴らしいことね。でも私はそろそろ消えてしまうかもしれないわ』
ヒナノ達を撃退するためにボスに魔力を注ぎ込み過ぎた代償は大きい。
ダンジョンは崩壊寸前、ダンジョンコアも最後の力を振り絞って話をしていた。
もはや限界は近い。
「大丈夫。私が何とかするわ!」
いつになく強気な発言をするヒナノであった。
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