第61話 ダンジョンコアと部下復活
意思疎通ができるなら種族が違っても仲良くなれるはず、レオとココが良い例である。
そんな思いと彼女の不安を取り除くために、ヒナノはダンジョンコアに友達になる提案をした。
彼女も乗り気になり始めていたのだが、衰弱していたようである。
このままいけばダンジョンの崩壊とコアが消滅をしてしまうとのこと。
それを防ぐためにヒナノは自分なら何とかできると思ったようである。
そう、ダンジョンコアは鑑定できたのであった。
つまりヒナノの能力【鉱物使いSS】の対象であるということ意味する。
「だったら何とかできるはず!」
ヒナノの強気な発言は根拠があったからなのだ。
【名無しのダンジョンコア】:ダンジョンを作り出すことができる。衰弱中。
状態はあまり良くない、何故だか衰弱している。
ヒナノ達の所為であるのは間違いないのであるが、そこに触れても仕方がないのでヒナノは改善の為の作業に入る。
「この金剛石を少し貰うわね」
ダンジョンコアがダンジョンを作り出したのならここは彼女の私有地、そこにある金剛石も彼女の私有物、許可は必要だろう。
実際にはできないのであるが、ダンジョンコアが頷いた気がしたのでヒナノは金剛石に手を置く。
通常であればダイヤモンドを取り出す為には、キンバーライトと呼ばれるダイヤモンド原石を含む岩石を採掘して粉砕、不要な鉱物を取り除いたりと複雑な工程を繰り返す、とても手間がかかる作業が必要。
しかもその中でダイヤモンドとなる原石を回収できる確率は極めて少ない。
つまり大量の岩から少ししか採掘できない、まさに宝探しである。
しかしヒナノのやり方は違う、通常とは逆のやり方を行う。
手を置いた岩の表層に能力でダイヤモンドだけを集めるのである。
鉄鉱石の時も行った作業であるが、ダイヤモンドでも可能であった。
現代であれば末代まで困らない金を手にできる能力なのは間違いない。
この工程には【移動】【変形】【合成】【分解】【光沢】などが使われているのだろうか。
個々に能力を指定しなくてもヒナノがイメージするだけで、地下にあるダイヤモンドが地表に向かい移動し、集まってくる。
集まったダイヤモンドは一つの塊になっていく。
地面から浮かび上がったダイヤモンドの塊は異様であった。
カットはしていないので球体であるが、大きさが尋常でない。
『おっおお~! 凄いご馳走だね!!』
「す、凄いです! 美味しそうですぅ!!」
『あ、あなた、とんでもないことするのね!? 一体いくつの能力があるのよ! くらくらしてきたわ!!」
レオとココはいつもの反応、ダンジョンコアはヒナノが壁や地面に穴を開けられたりできるのは知っていたが、この能力は初めて見た、驚いたようである。
まあ、くらくらするのは、消滅しそうだからなのだが。
ヒナノは地面から取り出したダイヤモンドから、人差し指と親指で一口大のダイヤを摘まみ取る。
それに魔力を多目に込める、それを三個分作製、レオにココにそしてダンジョンコアの分であった。
「はい、どうぞ」
『ありがとう!』
「あ、ありがとうですぅ!」
いつもの光景である。
レオとココの詳しい悶絶ぶりは割愛するとして、美味しかったようである、しかも特別に、転げ回るほどに。
『し、信じられないよヒナノ! 前に食べたダイヤより格段に美味しいよ!!』
「や、やっぱりヒナノさんは神です女神様ですぅ! さ、最高ですぅううう!!」
レオとココは興奮しながら言う。
まあ、当たり前と言えば当たり前なのだが、以前までのダイヤは神様から支給されたサンプル用のダイヤモンドであった。
大きさも小さいし、それ程の品質ではなかった。
こちらの世界の宝石とくれべれば品質としては高かったので、リリアは高値で引き取ってくれたのだが。
しかし今回のダイヤモンドは違う。
【鉱物使いSS】の能力をフルに使いヒナノが一から作り上げた物。
圧倒的に品質は向上、価値とすればサンプルとは比べ物にならないものが出来上がった。
『しかもレベルが上がったみたいだよ! 今までも個別には能力が上がっていたけれど全体が一気に上がるなんて信じられない!?』
「ち、力がみなぎるですぅ!!」
これ以上二人が強くなってどうするのだろうとも思うが、まあいいだろう。
レベルアップするという効果にはヒナノも満足である、言うことはない。
「はい、あなたもどうぞ!」
『へっ? どうぞと言われても私食べられないし』
「えっ、そうかな? いけると思うんだけど」
ヒナノは自信ありげにダンジョンコアにダイヤを差し出す。
ダンジョンコアは宝石のような鉱物であり口があるわけではない、レオやココのように食べることはできない。
「じゃあ、私がやってみるね」
ヒナノは無邪気に言う、他意はない。
ダンジョンコアの表面にダイヤモンドを押し当て、押し込んでいく。
『い、痛い痛い、止めて無理矢理そんなもの押し込まないで!!』
「大丈夫よ、痛いのは最初だけだから!」
構わずぐいぐいと押していくヒナノ、嫌がるダンジョンコア。
『ちょっ、ちょっと待ってえええ!!』
抵抗するダンジョンコア、しかしヒナノは力を緩めない。
ついにヒナノは最後まで押し込んだ。
『い、いやああああ!!』
しばらくの沈黙、無理やり押し込みすぎただろうか、ヒナノ達はダンジョンコアの様子をうかがう。
『あ、あれ? 何だか体が回復したかも!!』
どうやら狙い通りダンジョンコアは回復したようである。
全回復とまではいかないが、振動が止まりダンジョンの崩壊は免れたようであった。
――マ、マスターこれはどういうことなのですか!?
部下も復活したようで、現状を飲み込めないようであった。
『彼女達が救ってくれたのよ』
――おっと! 侵入者Xじゃないですか! 排除、排除です!!
ダンジョンを食い破った憎むべき対象、部下の反応は正しいだろう。
『もういいのよ。彼女達とは和解したわ。争う必要がなくなったの』
ダンジョンコアも初めは疑心暗鬼だったが、無償で回復したのが大きかったのかヒナノの言うことを信じたようである。
部下はどうかと言うと。
――不正侵入者様方、何かございましたら、このわたくしに何なりとお申し付けください!
若干のトゲはあるが、部下の変わり身は異常に早かったのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます