第40話 それぞれの場所へ
完成した物はネックレス、中央の宝石はスターサファイアと言われる六条の白い光の筋が入ったサファイアの中でも特別な物。
サファイア自体の青色も華やかであるが、中央付近でクロスする光は美しく、輝く星のように神秘的な雰囲気を与えている。
この光の線は本来であれば針状の内包物の含有量と方向が揃っていないと浮かび上がらないのであるが、ヒナノは能力でそれを実現した。
宝石に関してはヒナノも満足する出来上がりあった。
元宝石営業の知識が役に立ったようである。
只、全体的なデザインとダイヤとのバランスはまだ調整が必要かもしれない。
ヒナノは元々は宝石を売っていただけなので、デザインに関しては入社時に研修で少しやった程度であり素人である。
こちらではのんびりできるので、今後腕を磨いていくのもいいかもしれない。
「見せてくれてありがとうヒナノ。本当に素敵なネックレスね。素晴らしいわ!」
リリアはヒナノにネックレスを返そうとする。
「それはリリアにあげるわ」
「ええっ! こんな高価な物を貰うなんて無理よ。市場に出せば一体幾らの価値になるのか想像もつかない代物なのよ!?」
価値が分かる人間ならば、当然断るだろう。
只で貰うには高価すぎる。
「ふふ、いいのリリアに貰って欲しいのよ。ほら、素敵な物は素敵な女性に付けて貰いたいじゃない」
「何それ! そんなことを言うなんてヒナノは商人に向いているんじゃないかしら」
褒めるヒナノ、満更でもないリリア。どうやら気持ちが傾いているようである。
「そ、そこまで言うのなら、いただこうかしら」
それ程は言っていないのだが、ヒナノとしてはこのネックレスが絶対に似合うであろうリリアが貰ってくれるなら嬉しい。
「ふふ、貰ってくれて嬉しいわ」
「ねえ、ヒナノつけてくださる?」
リリアは後ろ髪を片手で纏めて横にずらし、うなじを見せる。
周りの男性陣がゴクリと喉を鳴らし、顔をそむけてしまうのも仕方がないことだろう。
女性であるヒナノも思わず、ドキッとしてしまうほど魅力的だった。
ネックレスを首に回し後ろのフックで留める。
ここら辺の留め金も改良の余地があり、簡単で落ちずらい物を考えなければならない。
振り向いたリリアを見れば、宝石がリリアを美しく輝かせ宝石もまたリリアによって輝く。
お世辞抜きで、お客様お似合いですわとヒナノは言いたい。
「素敵よリリア!」
「「「おおっ~」」」
「「「ほぉ」」」
周りの男性陣の歓声とため息が漏れる、それ程までに宝石を纏ったリリアは美しい。
「大切にさせてもらうわね!」
護衛達、同じ商人仲間達の間でリリアの人気は更に上がったようである。
じつはそれはリリアだけに関してだけではなかった。
不思議な能力で荷馬車を直し、宝石を作り出し、魔物も倒してしまったヒナノに関しても美少女っぷりもあり、知らない間にファンが増えていたようである。
リリアの完成された美しさもいいが、ヒナノの未成熟な美しさも将来の期待もあり、男性陣の中には響いた者もいたようであった。
そんな風に思われているとは知らないヒナノであるが、リリアの輝くような笑顔が見れたので、ネックレスを作って良かったと思うのであった。
ゴブリンの脅威も無くなったので、約束通り食事をご馳走になることになった。
外での食事なのでそれほど豪華ではない。
しかし運ばれてきた食事は美味しかった。
別にヒナノが作った料理が不味いという訳ではない。
リリアが出した料理には調味料により味が付いているのであった。
「美味しい味付けね。調味料と香辛料があると違うわね!」
レオとココも美味しそうに食べている。
「ふふ、良かったわ。気に入ったのなら分けましょうか?」
「分けられる程の量を持っているの?」
移動中の彼女達が誰かに譲るほど多くの調味料や香辛料を持っているとは思えない。
ヒナノは不思議に思い聞いてみる。
「ええ、大丈夫よ。アイテムバッグに多めに持ってきているから」
アイテムバックに入れてある物は長距離移動を快適にするものを入れてあるようで、当然調味料や香辛料も多めに入れていたようである。
ヒナノは様々な種類の調味料や香辛料を分けて貰えることになった。
食事も落ち着いてきた頃リリアが言う。
「ねえヒナノ、これから私達は仕入れの為に行かなければならないの。もし一緒に来てくれるなら嬉しいのだけれど」
ヒナノとしてもリリアについていけば楽しいとは思うし、気持ちは嬉しい。
しかしヒナノ達は城に行くという目的がある。
それは強制ではない。
でも神様が進めてくれたということもあるので、ヒナノは行ってみたいと思っている。
見えない使命感みたいなものに駆られているようだ。
「ごめんリリア。一緒には行けないのよ」
「そうなのね。残念だわ。でもあの城は危険だから十分気を付けてね」
そう、ヒナノ達が目指している城には魔物が棲みついているらしい。
本来であれば魔物がいる城になど行って欲しくないリリアだったが、ヒナノを信じたい気持ちもある。
目的がそこであるならば、応援して送り出してあげるのが友情なのかもしれないとリリアは思ったのかもしれない。
「じゃあ、ヒナノにこれを渡しておくわ」
「これは?」
ヒナノがリリアに渡されたのは一枚の金色のプレート、家紋のようなものが彫られている。
「それはうちの商家の紋章よ。街に来て困ったことがあったら見せるといいわ。大抵のことは何とかなるはず。ネックレスのお礼よ」
「そうなんだ。ありがとうリリア!」
「どういたしまして。落ち着いたら私の家にも遊びに来てね」
「勿論、街に行ったら伺わせて貰うね」
こうしてヒナノ達とリリア達は別々の場所を目指すこととなった。
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