第30話 レオとココの日常
ヒナノが何かを作っている間、レオとココは二人で出掛けている。
ヒナノが食べられそうな物を探したり、魔物を倒して魔石や肉を取ったりと、最近はそんなことが多くなった。
「師匠はヒナノさんが食べられる物が分かるのですか?」
人間とは余り関わりを持ってこなかったであろうレオが、何故人間が食べれる物が分かるのかココは不思議に思ったようである。
『まあ、何となくだけどね』
レオとしても確信がある訳ではないようだが、不思議とヒナノが食べても大丈夫だという感覚はある。
何か超常的な力が働いているのかもしれないとレオは思っている。
ヒナノと会ったこともそうだが、ヒナノの利益になるように何か操作されている感覚がある、しかしそれが嫌という訳ではない。
むしろ楽しいとさえ思っている。
『ココはどうなの? 分からないの?』
「それがですね、何故だか分かる感じなんです。不思議なのですぅ」
『そうか。そういうことなのかもな』
「へっ?」
どういうことなのか見当もつかないココ。
レオより人間に近い獣人のココは人間と味覚などが似ているかもしれないが、それだけでは説明がつかない。
やはり超常的な力が働いているのだろうと、レオは結論付けた。
『いいんだよ、分からなくて。ほらでかいのが来たぞ!』
「本当です! おっきいですぅ!!」
レオ達に向かって魔物が近寄ってくる。
以前にレオが単独で倒した同種、蛸のような容姿に羽がついている魔物、怪物といった方がいいのかグロテスクな姿だ。
だが、魔石の味は最高だった、絶対に狩りたい。
「足いっぱいです、気持ち悪いですぅ!!」
うねうねと動く様は不気味であり、ココが言うのも無理はない。
『ほら、あいつ食べれる奴だぞ! 倒してこいよ!』
「ふぇ! 師匠は手伝ってくれないのですぅ?」
『うん。手伝ったら修行にならないだろ?」
レオはココの気持ちを無視して、あっさりと拒否する。
「ううっ、わ、分かりましたですぅ!」
修行と言われてしまえば弟子としては何も言えない、ココは一人で魔物に向かっていく。
レオもココも武器は持たず手ぶらであり、どうやって相手を倒すのかと言えば、肉体を武器とした格闘術であった。
レオの場合は、ちょこんと手を出せば相手が倒れてしまうので、あっという間に勝負がついてしまう。
ココを鍛える為には手を出さないようにするしかない。
「くっ、はっ!」
敵の攻撃を躱して攻撃を当てるが相手は怯まない。
柔らかい体はココの攻撃を吸収してしまう、相性の悪さは明白である。
『反対側! 来てるぞ!』
ココの死角から魔物の足の一本が鞭のようにココの腹部を払う。
「ぐあぁあ!?」
凄まじいスピードで飛ばされていくココ。
土煙を上げながらゴロゴロと転がって岩にぶつかると音がした。
ドゴオオオン!
岩と肉体がぶつかった音のはずなのに不自然である。
スタッとココは直ぐに起き上がり叫ぶ。
「師匠の一撃より全然軽いですぅううう!!」
そう言うとココは魔物に向かって走りだす。
『どうなっているんだ、あいつの体は?』
レオとの対戦でも見せたように、ココの体の強さは異常なレベルである。
ヒナノだったら体が千切れているかもしれない一撃だった。
レオが不思議に思っても仕方がないことであろう。
防御力の高さで、お互いの攻撃が致命傷にならない長期戦の様相。
ただ時間だけが過ぎていく。
『そんなに手こずっていたら飯抜きだぞ!』
「ええっ!?」
別にココのご飯をレオが作るわけではないのだが、思った以上にこの言葉は響いたようでココが魔物を押し始める。
魔物の頭部であろう部分にココの拳がめり込むと、魔物はよろめく。
「チャ、チャンスですぅ!!」
後はやりたい放題だった。
ココはラッシュをかけ、魔物をタコ殴り、蹴りまくり。
「うおおおっですぅ!!」
そのまま押し切り倒してしまった。
気持ちは大事なようである。
「やったですぅ!!」
嬉しそうに勝利のポーズをするココ。
肉が残ったので食べられる魔物である。
後は魔石を抜かなければならない。
レオは魔物に近づき爪を振う。
4本の爪痕が刻まれ魔石が露わになる。
魔石にレオの小さな手が触れると消える、首輪のスライム魔石に吸い込まれた。
更に血が付いていない部分に触れて肉体部分も回収する。
「ふぇ〜、鮮やかですぅ!」
解体、魔石抜き、回収までを短時間に行ったレオにココは感心する。
『これぐらい直ぐできるようになるよ。後は魔石を水で洗わないとな』
血だらけだとヒナノが驚くので仕方ない、毎回洗うように心がけている真面目なレオ。
更に木の実、果実、きのこ、山菜なども収穫していく。
たくさん実ってはいるのだが、ヒナノ達が食べられる分だけでいいので、少ししか取らないようにしている。
足りなければまた取りに来ればいいので欲張らない。
その代わりといってはなんだが、必ず獲るものもある。
『そっちにいったぞ! 逃がすなよ!!』
「は、早いですぅ!!」
希少で特殊なスライムはヒナノの御所望なので発見できたら狩るようにしている。
『ほら、逃げられるよ!!』
「は、はいですぅ!!」
二人で追い込み何とか倒す。
『よしっ!』
「や、やったです! 早かったけど防御力はなかったみたいですぅ」
倒すとその場に魔石だけが残る、食べられないタイプの魔物である。
「き、金ぴかな魔石ですぅ」
『うん。これでヒナノも喜ぶな』
そんな感じで色々な物を収穫して帰ってみると、最近のヒナノは大体まだ作業をしている。
何かを一生懸命作っているようなので、大人しく見ているレオとココ。
ようやく一区切りがつくと、ヒナノは魔石を千切って食べさせてくれる。
「はい、どうぞ」
決まって初めに出されるのは魔力少なめの素材に近い味、うん悪くない、美味しい。
そしてヒナノの魔力がたっぷりの魔石。
「くうううぅう! やばいです! 何度食べても感動ですぅうう!!」
『くおおおっ! 衝撃的だああああ!!』
感動に打ち震えるレオとココ、それを見てニヤつくヒナノ。
ヒナノと出会えて良かったと思えるレオとココなのであった。
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