第28話 飛べました
「ココは普段は何を食べていたの?」
レオよりも人間に近い種族であるココの食事はヒナノとしては気になった。
何かヒナノでも食べられるようなヒントになる食材があれば、収穫してきてもらいたいと思っている。
「そうですね。魔物の肉とか魚を焼いたり、木の実も食べていましたですぅ」
「意外に普通なのね。水は川から汲んで飲んでいたの?」
「そうですそうです。後はでっかい実の汁を飲んだり獣の乳を飲んでたですぅ」
とっても野生児だなと思うがココらしい。
美味しそうに飲んでいる光景が浮かぶようでありココに似合っている。
話しているとフリフリ振られる尻尾が微笑ましく可愛らしいなとヒナノは思う。
「ふふ、じゃあ、自然にあるものを食べたり飲んだりしていたのね」
「そうです。料理は苦手なのですぅ」
「そっか」
たしかに、そんな感じはする。
知り合ってそんなに経ってはいないけれど何となく分かった。
まあ、食事はある物で済ませるタイプであり栄養補給ができればいいと考えているのかもしれない。
ココの親は娘を修行に出すぐらいだから、自然での生活の仕方を教えていても良さそうなのだが、それを自分で覚えていくのも修行の内なのだろう。
ヒナノもそれほど料理をしてきた訳ではない。
仕事が忙しくなり始めてからは自炊の数も減り、外食やコンビニ飯などで過ごしてきた。
運動もほぼしなかったので、体型は随分とふくよかになってしまったのは反省である。
現在は神様にスリムな美少女に変身させて貰ったので、このまま体型はキープしたい。
それでも簡単な料理はできるし、異世界にきて自由な時間ができたので色々なことに挑戦していきたいとヒナノは思っている。
ココの話を聞く限り、前の世界であった物と似たような食材や同じ食材はあるようだ。
時間停止機能があるスライム魔石(金)があるので食材の痛みは心配しなくても良くなったから、集めて貰うのもいいかもしれない。
「そういえばこっちの世界に来てから体が軽くなったのよね」
実際に体型が変わったのでそれは間違いない、しかしそれだけでは説明できない部分がある。
歩いても疲れにくくなったし力も以前よりある気がする。
最近さらにそれが顕著になった気がしている。
そういう体に神様がしてくれたのだろうと思っていたが、レオが回答をくれた。
『僕達との契約のせいだと思うよ』
「えっ契約の?」
そういえば前にそんなことを聞いたなとヒナノは思い出す。
ヒナノはレオとココと契約している、それはそれほど強制力はないものであり何時でも破棄できるものそんな認識だった。
ただ主人となるヒナノにはメリットがあったようである。
従魔としてヒナノを守ってくれて、意識が繋げられるのでお互いの位置が分かることはヒナノも知っていた。
『そうそう。主であるヒナノは身体的な能力が向上するんだよ』
「そうなんだ。知らなかったわ」
レオの可愛さに一目惚れしてしまい、細かい内容を確認しないで契約してしまった。
ココの時もそうであった、それによる恩恵やリスクを考えてはいなかったのは事実。
違う世界にきて知らないものや状況ばかりだったので深くは考えなかった。
まあ、二人と契約できて良かったしメリットが大きいので問題はないだろう。
「身体能力が上がるならいいわね」
ヒナノはピョンピョンとその場で軽くジャンプしてみる。
「んっ? うんっ?」
少ししか力を入れていないのに随分と高く飛び上がっている気がする。
何だか感覚がおかしい。
「あれっ?」
やっぱり間違いではない、自分が意図するよりかなり高い。
これが契約による力なのだろうか。
ヒナノは楽しくなり思いきってジャンプしてみる。
「えいっ!」
ふわっと浮いた体は自分の身長を優に超えた。
「うわっ!?」
前世での垂直跳び競技だったら世界一だろう、それぐらいの跳躍力である。
地面に降りてくるまでに時間がある、ヒナノにはそう感じた。
「ええっ! 怖いんですけど!」
これが契約の力なのだろうか、ヒナノは驚きを隠せない。
着地の衝撃も簡単に吸収できている。
身体能力の向上が半端なく、以前のヒナノとは別人である。
『二人分の契約があるから、人間でもそれぐらいは普通だよ』
「そうなんだ。凄いわね!?」
ヒナノは楽しくなり跳躍を楽しんでいると、レオとココも参加してきた。
「わあっ!?」
彼らは圧倒的なジャンプ力であった、ヒナノの遥か頭上を飛び越え高い木をも越えた。
二人ともがである、どんな身体能力よとヒナノは思う。
獣人であるココは魔物に分類されるのでこれだけの能力があるのか、タフさも考えると人間とは違う体の構造なのだろう。
さらに凄かったのはレオであった。
体が小さいにも関わらずココよりも高く飛んでしまう、流石である。
「す、凄いです師匠!?」
「うんうん、凄いよレオ君!?」
『うん、でも僕も以前より高く飛べるようになっているみたいだよ』
「あっ、私もですぅ。変なのですぅ」
以前から跳躍力はあった二人であったようだが、前とは違うようである。
『これって、ヒナノの作った鉱物を食べているからだろうね』
「やっぱり、ヒナノさんの石は世界一ですぅ!?」
料理を誉められるならまだしも、作った鉱物を誉められるのも不思議な感じである、まあ嬉しいけど。
契約と鉱物によるパワーアップでお互いが向上しているは、いい関係なのではないだろうか?
ココも今までよりも飛べることが楽しいのかジャンプを繰り返す。
「ふっ!」
くるくると回転をしながら綺麗に着地する様は、ココの運動神経の良さを表している。
「いいわね! 私にも教えてよ!?」
ヒナノも回転系の技には憧れていたが、動画で人のやっているものを見ているぐらいで自分ではやらなかった。
運動能力も上がっていて時間がある今ならチャンスである、やらない手はない。
ヒナノはココにコツを聞いてみた。
「ピョンとしてフワッとなったらクルッとですぅ!」
『いや、ブワッとなってからクルクルだろ!』
二人の言っていることはヒナノにはよく分からなかった。
とりあえずやってみるしかない。
失敗したときに下が石だったら痛いので土がある場所に移動。
言葉では分からなかったので、実際にココに見せて貰う。
身体能力は上がっているが回転系の技はコツがいるようであった。
ただ、ヒナノには【鉱物使いSS】という能力がある。
失敗したと思ったら……。
(柔らかくなれ!?)
と心で念じれば地面は柔らかくなりクッションの役割を果たす。
下は土なので鉄より一瞬で柔らかくなる、ヒナノがこの場所を選んだ理由でもあった。
変な体勢で落ちても優しく受け止めてくれる、まあ泥だらけになるのではあるが。
時間は掛かったが、ヒナノは何とかコツを掴み前宙とバク宙ができるようになった。
「今度は風呂を作るわ」
『風呂?』
「お風呂ですぅ?」
汚れた体を洗いたいし温まりたい、レオとココにも綺麗に気持ちよくなって貰いたい、そんな気持ちからヒナノは宣言する。
前世ではできなかった日常、のんびりとした時間が流れているのであった。
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