第24話 ココ仲間になる
「わ、私、強くなりたいんですぅ!!」
真剣な彼女の訴えに困惑するレオの表情も可愛いなと思うヒナノ。
『僕は別に弟子とか取ってないし!』
「そんなこと言わないでお願いします。私強くなりたいんですぅ」
邪険にするレオ、懇願する獣人の女の子。
そんなことを数回繰り返す二人、平行線な話に埒が明かないからか、解決策をレオはヒナノに委ねる。
『ぼ、僕はヒナノの従魔だ。お前にもヒナノを主人と認め絶対服従するなら考えなくもないよ』
「なりますなります! 師匠の主様、是非私を奴隷にしてくださいですぅ!」
間髪入れずココは答える。
「ど、奴隷!?」
何を勘違いしたのか獣人の女の子はヒナノの奴隷を希望し始めた。
「お願いしますですぅ!」
必死の形相でヒナノを拝むココ。
結局は彼女の真剣さに負けたヒナノは契約することにした。
奴隷とかではなくレオとしたのと同じ主従契約である。
あれならばそれほど強制力の無い契約だと思ったのでヒナノはそうした、そうしないと彼女が諦めそうもなかったから。
「ありがとうございますですぅ!」
「うん、よろしくね」
彼女の名前はココというらしい、彼女に似合った可愛い名前である。
その後ココがヒナノのことを何と呼ぶかで、ひと悶着あった。
師匠の主様、ご主人様、女神様、ヒナノ様……。
何だか仰々しいのでヒナノでいいと言ったが、結局はヒナノさんということで落ち着いたようである。
実はヒナノは彼女を見たときにピンときていた、是非仲間にしたいと。
獣人である彼女の容姿は普通の人間とは違う。
ヒナノが好きなふわふわな耳としっぽがあるのである。
触ってみたいと思ってしまったのであった。
耳は少し垂れた感じで短め、尻尾は毛がふわふわしており、どちらも灰色と銀色が混じった色合いをしていて彼女の可愛さを引き立てている。
レオとは違った愛らしさがあり、是非とも愛でたい対象であった。
更に仲間にしたもう一つの理由がある。
「ヒ、ヒナノさん、何だかいい匂いがしますですぅ!?」
そう、これである。
初めてレオに出会った時にも同じことを言われた。
ならばとヒナノはアイテムボックスから例の物を取り出す。
「これの匂いなんじゃないかな、ココ?」
「そ、そうですそれです! いい匂いですぅ!」
「やっぱり。食べてもいいわよ」
「へっ、いいのですか!?」
ヒナノの魔力が少し入ったダイヤをいい匂いと思う、そう彼女はレオと同じ【石食い】の可能性がある。
もしそうならば【石食い】と【鉱物使い】は引き合う存在なのかもしれない。
ココは受け取ったダイヤをゆっくりと口に含み味わう。
驚きと笑みが混ざったような顔をする。
「な、何ですかこれ凄く美味しいですぅ!?」
「そうでしょ、そうでしょ!」
やはりであった、ダイヤを噛み砕いて食べる様はまさに【石食い】。
ココも歯は丈夫なようである。
しかしまだ本気じゃないわよと、ヒナノはそんなことを心の中で思う。
ゴクッっと隣にいたレオの喉の音が聞こえた気がした。
ヒナノは新たなダイヤに魔力を込める。
「なっ、す、凄い! 凄いですぅ!!」
レオもココもヒナノの手元、魔力を込められたダイヤに釘付けである。
「はい、どうぞ」
ヒナノがダイヤを差し出すと貴重品を預かるような慎重な動作で受けとるココ。
恐る恐る口に運ぶ。
「なああああっ! お、美味しいですううううううぅ!?」
ヒナノが期待した反応、いやそれ以上である。
(うんうん、間違いない。彼女も【石食い】ね)
勿論、この後レオにも魔力入りダイヤを与えた。
二人とも美味しさに悶絶したのは言うまでもない。
「神! ヒナノさんはやっぱり女神様ですぅ。綺麗で優しくて、更にこんなに美味しい物が作れるなんて、そうとしか考えられませんですぅ」
ダイヤを与えてからのココはヒナノのことを神と崇めている。
褒められ過ぎて歯がゆいぐらいだ。
ヒナノとしては本当の神に会ったことがあるので違うと言いたいのだが、まあ敬って貰えるのは悪い気分はしない。
その分、美味しい鉱物を食べさせてあげたい、そんな気持ちである。
『ふっ、甘いなバカ弟子。ヒナノの実力はそんなものじゃないぞ。これで驚いていたら先が思いやられる』
「そ、そうなんですか。レオ師匠! ヒ、ヒナノさん凄いですぅ!!」
何故かレオが誇らしげだった。
ココのヒナノ崇拝振りも更に上がったようである。
まあ、たしかにレオは色々な鉱石や魔石の味を知っているので、そんな言葉が出たのだろう。
「あっ、でもレオ君はココを弟子にしたのね」
『まあ、契約をしてヒナノを主と認めたからね。約束は守らないと。それに見込みが無いようだったら破門にすればいいし』
意外にシビアな子猫レオ、野生で生きているとこれが普通なのだろうか。
この世界は強い者しか生き残れないと言わんばかりだ。
「いやです、いやです! 私、諦めません絶対二人についていきますぅ!」
ココも簡単には引き下がりそうもない、意志は固そうである。
修行もできて、美味しい鉱石を食べられるとなったら最高の環境だろう。
ココは意地でもこの状況を手放す気はないようであった。
『ふん、いずれ後悔するかもな』
「しないですぅ! 頑張りますですぅ!」
前向きなココ、楽しそうな仲間ができたことにヒナノは嬉しくなった。
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