第22話 魔導コンロ

『ちょっと、狩をしてくるね』

「あっ、うん気を付けて、いってらっしゃい!」

『はーい!』


 気まぐれな感じは本物の猫っぽい。

 レオはヒナノが作った物を食べると元気が出るのか、体を動かしたくなるようである。

 人間ならば食事を取れば眠くなりそうなものであるが、魔物のレオは違うようだ。

 ヒナノの魔力入り鉱石だからということが、影響しているのかもしれない。

 まあ、元気になるのならいいだろうとヒナノは思う。


 いつも通りヒナノは鉄の塊を握って能力向上に努める。

 たまにヒナノの頭の中でピロロンと鳴っているので、能力はレベルアップしているはず。

 我慢できずに見てしまい気持ちもあるが、後での楽しみということで確認はしばらくしてからにしたい、ヒナノは美味しい物を最後に食べるタイプなのである。

 

 レオが狩りにいっている間にヒナノは香る鉱石を取ってスライム魔石に収納していく。

 スライム魔石は何度もダイヤモンドで強化しているので収納容量も増えている、結構な量を入れられるはず。

 

 【鉱物使いSS】の能力【合成】は進化したようである。

 初めの頃合成した物は丸いスライム魔石の周りにダイヤが乗っかってしまい不格好な見た目だったのだが、中に吸収されるようになった。

 外形はスライム魔石の丸いままである。

 これによりダイヤで強化していってもごちゃごちゃした姿にならずスッキリした。

 指輪に取り付けているので、大きくならないのは助かる。


 複数回の強化により大きな物も収納できるようになったし、最大容量もどれぐらいなのか、もう分からない。

 どんどん違う種類の香る鉱石を取っていっても問題なく収納できる。


「結構種類があるのね」


 香る鉱石の種類は多いが、後で役に立ちそうなのでヒナノは丁寧に回収していく。

 花畑ならぬ石畑から【変形】と【移動】により地面から摘み取っていく感じ。

 鉄で練習していた効果なのか意外にスムーズにできるようになっている。


 

 

 火を起こす際に使っていた自作の杖であるが方法を変えようと思う。

 あれはあれで便利なのであるが、もっと簡単に料理ができるようにしたい。

 ヒナノの理想のイメージとしては現代のコンロである。

 携帯ガスコンロならぬ魔力を使ったコンロって感じだろうか。


 【ヘルハウンドの魔石(特異種)】がまだ残っているので火を扱えるから作製可能なはず。

 鉄そのままだと重すぎるので薄く伸ばした鉄を四角に組んで長方形の箱を作る。

 この時にまだ蓋は開けておく。


 フライパンなどを上に乗せる部分の五徳も別で作製しておく。

 ハッキリとした形は覚えていないので、ヒナノは思い出せる範囲でそれっぽい物を作ってみた。

 蓋の中心部には大きめの魔石を一つ配置、その周りに等間隔で円周上に小さめの魔石を置く、更に外周に同じように魔石を置く。


 これは火力調整ができるようにするための機構が作りたかったのでそうした。

 稼働するための魔力を調整すれば火の強弱が調整できるはず。

 正面側に魔力を調整できる出っ張り(ボタン)を三つ設置、それを鉄を細くした物で蓋の裏面から魔石に繋げた。

 一つは中心の大きな魔石に、もう一つは周りにある小さな円上の魔石を束ねるように、最後の一つは一番外円の魔石を束ね取り付けた。

 

 台座に蓋をして完成である。

 継続して魔力を供給する方法は今のところないが、自分で供給することはできる。

 真ん中の魔石に繋がっているボタンに魔力を込めればボッと蓋の上の魔石に火がつく。

 一回のチャージで5分ぐらいは火がついているので十分だろう。

 魔力を遮断するイメージをボタンに送れば火が消えるので安心である。


 火事の心配が少なくなったのではないだろうか。


 一つの魔石の火力は決まっているので、強火なら全部の魔石に魔力を供給して弱火なら一つだけにしてと、全体の火力の調整は魔石に魔力が込められているかで可能となった。


(魔導コンロってやつね)


 安定した火力調整ができるので料理に集中できるはず。

 大きさもスライム魔石の中に入るので持ち運びにも問題ない。

 改善点はあるが完成したのであった。



  

 遠くの方でドカン、ドコンと音が聞こえる。


(レオ君かな?)


 ヒナノが確認するとレオがいる方向であるのが分かった。


「レオ君、また魔物と戦っているのね」


 いつもはサクッと狩ってくるので、ここまで連続して音がすると言うことは相手は強敵なのだろうか?

 心配になりヒナノは念話で話しかける。


(レオ君、戦っているみたいだけど大丈夫?)

『うん、問題ないよ。負けることはないけど相手がしつこいだけだよ』

(そうなんだ。どんな相手なの?)


 しつこい魔物ってなんだろう、ヒナノは少し興味が出てきた。


『うん、獣人なんだけど何回か殴っても起き上がってくるんだよね』


 レオの凶悪なパンチを食らって起き上がってくるなんて、相当なタフさではないだろうか。

 

『なんか、私は絶対負けないですぅ! とか言ってるよ』

(えっ、意思疏通ができるんだ!?)


 魔物にはレオのように知能が高いものもいるらしい。

 今の相手もそういう魔物なのだろう。


 音がどんどん大きくなっているので、こちらに近付いているようである。

 二つの影がヒナノの視界に入った、レオと相手の魔物が戦いながらこちらに向かってきた。


 相手は獣人というだけあって、人型であり体型からすると女性であるようだ。

 女の子といった方がいいのだろうか、可愛らしい容姿。

 素人目で見ても戦っているというよりは、レオが一方的に攻撃を当てているように見える。

 相手の攻撃をかわして一撃を入れる、獣人の女の子はゴロゴロと地面を転がるが、直ぐに起き上がりレオに向かっていく、それの繰り返し、力量さは一目瞭然である。

 

「くううっ! 何なんですかこの猫はあああ!!」


 そう叫びながら獣人の女の子は諦めずレオに向かっていく。

 レオも言葉が通じる相手を殺してしまうのもどうなのだろうかと迷っているのかもしれない。

 手加減しているようにも見える。


 ヒナノは元気でタフな女の子に興味が沸いた。

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