第17話 ステータス

 神様に指定された城に向かいながらヒナノは能力の確認をすることにした。

 レオはヒナノの後ろを、ちょこちょことついてくる。

 こんな姿を見ていると普通の子猫であり、一撃で自分の何倍もある魔物を倒してしまうとは、とても思えない。

 石も食べたりできるので特殊な猫なのは間違いない。

 可愛くて頼りになる相棒ができてヒナノはラッキーだった。


 能力は、しばらく見ていなかったのでどうなっているのであろうか、確認する。


【鉱物使いSS】

 レベル D

 鑑定 C

 知覚 C

 移動 D

 変形 C

 変質 E

 合成 D

 分解 E

 付与 F

 光沢 E


「うん、いい感じ! 結構成長したよね」

『ん? どうしたの、ヒナノ?』


 レオにはステータスが見えないから仕方がないのであるが、突然変なことを言い出したヒナノを不思議がる。

 

「あっ、ごめんレオ君。実は私ここに来る時に自分のステータスが見えるようになったのよ。それを今確認してたの」

『へえ、ステータスなんて見えるんだ』


 ステータスでレオに意味が通じたので、この世界にもそういった概念があるようである。

 レオとは会話ではなく念話で話しているのでニュアンスが上手く伝わったのかもしれない。

 

「まあ、能力に関してのことしか分からないんだけどね。レオ君は自分のステータスが分かったりするの?」

『いや、分からないよ。特に必要なかったしね』

「そうなの?」


 分かれば便利だとは思うのだが、この世界ではステータス確認能力はあまり普及していないのかもしれない。


『敵と自分の力の差みたいなものは何となく分かるから生きていけるしね。今までもそれでやってきたし問題なかったよ』

「そうなんだ。細かい数字は必要なかったんだね」


 前世ではヒナノも分からなかったし、野生で生きていればそんなものかもしれない。

 食うか食われるかの中では、押すか引くかの駆け引きができれば十分なのだろう。


「興味は無かったの?」

『調べる手段もなかったからね、それほど興味は無かったかな。でもたしか人間の国にはステータスを調べる物があるとか聞いたことがあるような?』 

「そうなの! 興味深い話ね」


 やはり異世界である。

 調べられるということは、この世界では能力を測定することが可能ということ。

 つまりヒナノにも作れる可能性があるということではないだろうか。

 人間がいる国に行ったら是非とも見てみたい。


 能力の横についているアルファベットなのだが、ヒナノは理解できるようになったようである。

 今までは何も反応しなかったが、今は内容が頭に浮かんでくるようになった。

 これは鑑定のレベルが上がったからだと思われる、多分。


「色々と便利になっていくみたいね」


 今までできなかったことができるのは嬉しいことである。

 結果、アルファベットの意味はこんな感じであった。


【A:最上級 B:上級 C:中級 D:下級 E:初級 F:超初級】


 ヒナノの現在の能力は中級から超初級の間であり、レベルとしてはDになっているので下級である。


(私は下級鉱物使いと名乗ればいいのかな?)


 中級のCになっているものは【鑑定】と【知覚】、それと【変形】である。

 能力を上げたかったのとやり易かったということもあり、【鑑定】と【知覚】は常に意識して使うようにしていた。

 だからなのか一番成長した部分である。


(【変形】と【移動】も使っていたけど差が出たみたいね)


 一段階であるが、二つには差が出てしまった。

 能力が上昇するのに必要なのは使用回数だけではないようである。

 使用頻度が多いことは重要であるが、少なくても成長する度合いが違うので、能力の使用した際に入ってくる経験値みたいなものが異なり、それをカウントしているのかもしれない。

 

 例えば難しい作業をした方が得られる経験値が高いとか違いがあるだろう。

 そこら辺の説明はないのでヒナノはそう予想した。


 超初級であるFから全く上がっていないものは、経験値を稼げなかったのだろう。

 使っていなかったので仕方がない。

 意識的に使う方が伸びが違うのは、勉強や筋トレと同じようなものなのかしらとヒナノは思う。

 

 止まって考えているヒナノをレオが見上げていた。

 レオの容姿は明るいオレンジブラウンをベースに焦げ茶やブラウンの縞模様が入っている、猫で言うところの茶トラである。

 表情はまだ子猫のように幼く、尻尾はシマシマ。

 瞳はヘーゼルでグリーンからイエローのグラデーションが美しく可愛らしい。

 たまに背中に天使の羽のようなものが光っている時は、かなり神秘的な雰囲気になる。


 そんな子猫と会話でコミュニケーションが取れてしまうのだから、ヒナノは嬉しくてにやけてしまう。

 つい、おやつを与えてしまっても許して欲しい。

 

『能力って何か変わったの?』

「うん。少し能力が成長したみたいなのよ」


 嬉しそうに言うヒナノをみてレオは言う。


『ふーん。そうなんだ。自分の能力が分かるのって面白いんだね』


 そうなのである。

 少しずつではあるがゲームのように成長を実感できることは楽しい。

 欲を言えばアルファベットではなく数値で分かればいいなとは思う。

 でも、今どのレベルにいるのか分かるのは嬉しい。

 ヒナノとしては全ての項目を最上級にしたいので、これからの目標にもできる。


『成長すると何かいいことあるの?』

「そうね。魔力が美味しくなるとか?」

『いいねそれ! 試してみようよ』


 レオが凄い食いついてきた。


「ええ~、レオ君宝石が食べたいだけじゃない?」

『自分の能力を把握するために検証は大事でしょ。分からなかったら、いざという時に使えないよ』

「もっともらしいことを言っているけどレオ君魔力の石を食べたいんだよね?」

『まあまあ、必要なことなんだからやるべきでしょ。それで出来てしまった物は僕が食べるから安心して!』


 レオは満面の笑みを浮かべ瞳が怪しく光った、あまりのイケメンは表情にヒナノは眩しくて目を開けていられない。

 ちなみに僕と言っていることから分かる通りレオは雄である。

 僕っ娘ではない、本人がいっていたので間違いない。


 結局ヒナノはレオにせがまれた通り、いつものダイヤに魔力を込めて与えた。


『う、旨すぎるううううう!』


 と言っていたので能力の成長で鉱物が更に美味しくなるのは証明されたようである。

 周りに人がいれば子猫が「にゃ、にゃああああああ!」と言っているだけに聞こえるだろう。


「そ、そんなに違うんだね……」


 初めからダイヤの味は絶賛していたレオだが、更に美味しくなったようである。

 レオが全力でヒナノの成長をサポートすることを堅く誓った瞬間であった。

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